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茅ヶ岳でカーボン製トレッキングポールをチェック グリップウェル/ラピッド・カーボン[有限会社ヤマプランニング]

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2016年04月25日

今月のPICK UP グリップウェル/ラピッド・カーボン [有限会社ヤマプランニング]

価格:1万9000円+税(2本セット)
重量:232g(1本、ゴムキャップ除く)
カラー:ブルー、レッド
長さ調整範囲:100~120cm

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折りたたみ式トレッキングポールの弱点を克服

新緑の時期を迎えた春の山。今年は雪融けも早く、すでに心地よい気温のなかを気楽に歩けるようになりつつある。そこで今回はほぼ完全に雪が消えた、奥秩父の南の外れにある茅ヶ岳へと向かった。

お供に持参したのは、グリップウェルの新型トレッキングポール「ラピッド・カーボン」。最近ますます増えつつある「Z型」に折り畳めるタイプだ。

販売時はキャリングケースに2本まとめて入れられている。その1本1本にはあらかじめ面ファスナーのテープがつけられているため、ケースからポールを取り出しても細く束ねられたままだ。細かな工夫だが、とても便利である。

とはいえ、少し気になるのは、束ねると先端付近のリング(バスケット)が邪魔になること。3本きれいには並ばないのである。

欲をいえば、他社のように先端のリングにポールの口径が収まる窪みがあるとよい。そうすれば3本を完全に平行にして束ねられ、よりコンパクトになって使い勝手がいいだろう。せっかくここまで短く小さくなるのだから、あともう1歩の工夫がほしいと思う。

それにしても、このラピッド・カーボンの収納サイズはわずか37cm。ただまっすぐ伸縮して長さを調整するオーソドックスなものに比べ、半分ほどの長さだ。

それが使用時には100cmから最長で120cmにもなる。つまり調整範囲は20cm。収納サイズ37cmとは思えないほど長くなるばかりか、調整範囲の幅も充分だ。

ラピッド・カーボンはその名の通り、金属ではなくカーボンを使ったモデルである。Z型に折り畳めるタイプは構造上、トレッキングポールを完全に分解できないため、どうしても内部に雨水などの濡れが残り、なかなか乾燥させられない。すると、アルミやジュラルミン製は接続部分に白っぽい錆が生じはじめ、調整時にすべりが悪くて使いにくくなる。そして最後には完全に固着して使い物にならなくなるのだ。その点、カーボン製には錆びの心配がないのがすばらしい。表面の光沢はあくまでも塗装によるものであって、金属だからではない。

カーボン製とはいえ、シャフトの連結部分にはジュラルミンが用いられている。しかしそれは一端のみで、もう一端は本来のカーボンだ。金属同士が触れ合うわけではなく、露出している部分は簡単に濡れをふき取ることができるので、錆びによる固着はありえない。

それぞれのシャフトはワイヤーでつながっており、手元近くのシャフトにはレバーロックがつけられている。下3本のシャフトをストレートにつないだ後、上部の重なった2本のシャフトをスライドさせ、このレバーで固定して全体の長さを調節するのだ。手間はかからず、非常にスピーディである。しかもこのレバーロックは回転させることで締め付け具合を変えられ、ロックに緩みを感じた場合はすぐに調整でき、なかなか便利だ。そういえば、モデル名に入れられた「ラピッド(速い)」という言葉は、このシャフトの連結&調整のすばやさからとったものである。

先端部分はオーソドックスな形状だ。

金属の石突きはゴムのキャップ(プロテクター)で守られ、その上に過度に地面へ突き刺さらないようにリングがつけられている。このリングは他社のモデルに比べ、かなり小型だ。小型だからこそ、先に述べたポールをはめるくぼみを省略しているのだろう。雪の上で使う場合はこの部分を大型の別売りスノーリングに変更できる。

山中を歩いていると、なにかと外れて失くしやすいのがゴムのキャップだ。僕はある山行のとき、のんびりと地面をチェックしながら歩いたところ、数時間で20数個も拾ったことがある。拾わなければ時間とともに土にまみれ、いずれただの山中のゴミとなる。だが紛失を恐れて外して使用するのは、やめたほうがいい。鋭い石突きが地面を深く刺し、植物を傷つけたり、登山道を傷めたりするからだ。キャップを付けていると滑りやすいという人もいるが、僕の経験上、よほどぬかるんだ場所でなければほとんどスリップはない。たとえたまに滑ろうとも、常に地面に過度な負担を与えるよりはマシだ。自然環境を考えれば、キャップを外すのは雪の上程度にしておくべきだろう。

ともあれ、脱落防止のために最近は各社とも工夫を凝らしつつあり、このモデルでもゴムキャップの内側に金属のリングを入れている。そこに差し入れた石突きがはまることで、キャップが外れにくくなり、山中での紛失を防いでいるのだ。

と、ここまで歩行前にチェックし、やっと深田公園入り口から登山道を歩き始める。

正しいトレッキングポールの使い方を復習。

新緑の時期とはいえ、4月上旬。一目見るだけではまだまだ冬山の趣だ。だが視線を少し移動させると新芽が目に飛び込んでくる。

いや~、春ですね。これらが鬱蒼と茂りだすと、この登山道は次第に薄暗くなっていくのだろう。

現在は落石多発のために立ち入り禁止になっている女岩を越えると、道は急坂となっていく。

それまでは傾斜が緩やかな登山道をたんたんと歩いていただけだが、このあたりから僕のトレッキングポールの使い方も激しくなっていく。ときどき先端が岩に強く当たるとトレッキングポールの継ぎ目から音が立つが、とくに大きいものではない。適切な連結が保たれるように設計されていることがよくわかった。

すれ違う人もさまざまなトレッキングポールを使用している。だが多くの人が正しい握り方をしておらず、十分に機能を発揮させられているとはいいがたい。正しい握り方は、下の写真のようにストラップへ「下から手を入れ、そのまま握る」というものだ。

こうすると地面に突いたときにストラップに体重が乗り、グリップを強く握らなくても体のバランスがとれる。しかしストラップに「上から手を通す」と、強く握らなければ体重を支えきれず、強い衝撃が加わるとグリップから手が離れやすい。転倒の恐れが高まるばかりか、少なくても疲れやすくなることは間違いない。だいぶ話はそれたが、これまでそのように握っていなかった方は、ついでにここで覚えてほしい。

ラピッド・カーボンのストラップは長さの調整にも長けている。グリップ部分で3枚に重なったように見えるストラップのいちばん下の部分を軽く下向きに引くだけで、口径が絞れるのだ。反対に緩める場合はいちばん上の部分を少し上向きに引けばいい。

あまりにもわずかな力で調整できるので使用中に緩まないかと不安になるほどだが、正しく手を入れてストラップを使用すれば下向きに力が加わり、ストッパーが効いて一切緩みは生まれない。非常によくできた構造なのである。

バランスよし、強度よし。なにしろ軽い。

山頂に近付くと「深田久弥先生終焉之地」という石碑が現れた。まさにこの場所で、『日本百名山』を表した深田久弥氏が登山中に脳卒中で亡くなったのである。僕も山を愛するものとして、通過前に手を合わせた。

ちなみに、茅ヶ岳自体は日本200名山のひとつである。

石碑を過ぎると、すぐに茅ヶ岳頂上だ。

周囲にいた登山者にお願いして、記念写真的なカットを一枚。

それにしても、茅ヶ岳は絶好の展望地である。

右の写真は、南西に立ち並ぶ南アルプスの鳳凰三山から甲斐駒ケ岳への稜線。左は金ヶ岳越しに見える八ヶ岳で、北西の方向だ。

右は奥秩父の金峰山を中心にした稜線。北東に当たる。

左は南東の方向の富士山。かなり霞んでいるが、おわかりになるだろうか。

たっぷりと風景を楽しみ、今度は登りに使った谷間の道ではなく、尾根上のルートを使って下山していく。

陽射しが当たる尾根の道は解放感が高く、春らしさを満喫させてくれる。

このころになると、ラピッド・カーボンの使い勝手はおおむね把握できていた。さすが軽量なカーボンとあって、1本232g。あまり重みを感じず、前方に振り出すときにも力がいらない。手が小さい女性のなかには少々太いと感じる人がいるかもしれないが、僕にはグリップの太さもちょうどよく、まったく違和感はなかった。とくに歩行中の欠点は見当たらないのである。

しかし、どれほど強靭なのかはよくわからない。そこでわざわざ岩の間に挟み込み、徐々に力を加えてみる。要するに、テコの原理で圧力をかけたのだ。だが硬いカーボンとあって、ほとんどしなりは見られない。

だが、硬いだけに曲がる前に突然折れるのがカーボンというもの。ある程度の力で試してはみたが、怖くなって途中でやめる。あまりに力を入れすぎて、本当に折れたらもったいないではないか。ともあれ、少しくらいおかしな方向に圧力がかかっても、簡単には破損しない強度はあるようだ。

下山を完了し、もう一度、細かな部分を確認する。今になって気になるのは、手を通すストラップの素材。正確に言えば、ストラップの左右をかがるように縫っている糸の性質だ。

これが非常に極細なため、トレッキングポールを束ねるテープやウェアの袖口の面ファスナーに引っかかってしまうのである。そして、なかなかはがれず、はがれたときはかなり毛羽立ってしまう。これだけのことだが、かなりストレスを感じる。ここは引っ掛かりが少ない別の素材に変更してくれると、ありがたい。

リングに窪みがないこと、ストラップの糸が引っかかりやすいこと。問題点はとても小さく、荒を探したような気分だ。つまり、ラピッド・カーボンに問題はほとんどないのである。
しかし今後の要望のようなものはないわけではない。例えば、この上位機種として、地面に接したときの衝撃を緩和するアンチショック機能を備えたモデルも作ってほしいということ。価格は上がるだろうが、より快適に使えるようになるはずだ。

3本に折って短くしたラピッド・カーボンをバックパックに収納し、登山口を後にする。

透明感のある緑、そして赤みを帯びた木々の新芽は、これからどんどん大きく広がっていくだろう。僕はすでに夏が待ち遠しい。

登山グッズ 記録・ルポ
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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