【緊急提言】奥多摩・三頭山で雪が多くて下山不能。山岳ガイドに教わる“春の雪の心配について”
春分の日の21日は、低気圧の影響で全国的に真冬の寒さに逆戻り。関東や東海の平野部では季節外れの雪、関東北部の山沿いと甲信中心には大雪警戒が発令されました。そんな中飛び込んできたニュースが、「東京都奥多摩町の三頭山とヌカザス山の付近で、登山客の男女13人が下山できないと、119番があった」というものでした。
朝日新聞:東京・奥多摩で登山客13人「下山できない」 2018年3月22日01時54分
そこで今回は雪山の経験が豊富な山岳ガイド 山田哲哉氏に、春の雪の心配について伺いました。
質問:今朝(2018年3月22日)のテレビ番組を見てビックリ。奥多摩の三頭山(1527m)に登った13名が雪のため下山ができなくなって救助を求めてきたというニュースでした。たしかに昨日は寒く、都心でも雨やミゾレ、雪が降っていましたが、桜も咲きだした頃に、山とはいえ東京の一角で「雪で下山できない」にはビックリしました。こんなこと、よくあるんですか? 奥多摩大好きな私は、いつ頃まで「雪の心配」をしたら良いんでしょう?
奥多摩などの山では、一年で一番雪が深くなるのは3月
一般的な感覚では3月末に「雪のため下山できない」は意外と感じるかもしれません。でも実際は、奥多摩、丹沢、大菩薩などの表日本の山々では、一年で一番雪が深くなるのが3月です。12月、1月に日本海側、東北北部で、連日の大雪が続く頃、太平洋側では乾いた晴天が続きます。2月末から3月にかけて、太平洋側(南岸)を低気圧が通過するときに東京など太平洋側では氷雨や雪が降ります。
昨日の様に東京でも冷たい雨が降った時は、奥多摩などの山では、まず「雪」と考えてください。もし、雪山の経験がない、雪に備えた準備をしてこなかった場合は、一日を通しての降雪が予報された日は、アッサリ引き返す決断が必要でしょう。
春でも雪の心配がある時は、スパッツや軽アイゼン、ワカンの携帯を!
では、雪の心配、道の凍結などの心配は、いつ頃まででしょうか? 奥多摩でも入口の1000m以下の山ならば4月下旬まで、雲取山などの2000m近い山では、ゴールデンウィークには北側斜面には積雪があるのが普通です。奥多摩の山から北側斜面や谷筋からも雪が消えるのは5月中旬以降とお考えください。
雪の心配がある時は、スパッツや軽アイゼンの準備を「使わないかな?」と思っても必ず準備すること、2000m近い山の場合はワカンも携帯してほしいです。我が家の近くの井の頭公園では、すでに桜が咲きだしています。桜の花見をしながら、それでも山に向かう時は「アイゼン」。考えにくいことですが、この時期の山では絶対に忘れてほしく無いことです。
プロフィール
山田 哲哉
1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。
著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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