鳥の歌声が聞こえてくる季節、春。山でバードウォッチングをはじめよう!

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登山中に聞こえてくる軽やかな鳥の歌声。「きれいな声! どんな鳥が鳴いているんだろう?」「今鳴いている鳥の名前を知りたい」そう思ったことのある人も多いのではないでしょうか。鳥を見ながらの山行は、登山にプラスアルファの楽しさをもたらしてくれます。この記事では、小社で図鑑や自然関連図書をつくっている自然図書出版部の編集スタッフにバードウォッチングの始め方を教えてもらいます。

 

輝くような青い羽をもつオオルリ / 黄色と黒のコントラストが美しいキビタキ

 

まずは鳥の姿をみつけることからはじめよう

鳥は一般的に警戒心が強く、人が近寄るとすぐに逃げてしまうし、鳴き声は聞こえても姿の見えづらい茂みの中で鳴いていることが多いです。鳴き声で何の鳥かが分かればよいですが、これは上級コース。登山に例えれば、夏山を経験せずにいきなり冬山に登るようなものです。鳥の鳴き声を覚える方法は、自分の目で一種類ずつ姿を確認して姿と鳴き声を頭の中で結び付けていくしかないと言われます。これからバードウォッチングを始めようという方には、まずは鳥の姿を見ることからスタートすることをお勧めします。

「声は聞こえど姿は見えず」の鳥の姿を見るにはどうしたらよいでしょうか。声は鳥をみつける頼りになります。声の大きさや聞こえてくる方向から、鳥がどの方角にいるのか、近くにいるのか遠くにいるのかがおおよそ分かります。 鳥の声が聞こえたら、足を止めて、声が聞こえてくる方向に注意をむけます。鳥がじっと止まっている時にその姿を見つけるのは難しいので、鳥が動いた時がチャンスです。この時に大切なのは、自分自身はなるべく動かないようにすること。警戒心の強い鳥は人の動きに敏感で、すぐに逃げてしまうからです。視野を広くもって、動くものに注意を向けると鳥の姿を見つけることができるでしょう。

鳥を見るには双眼鏡が欠かせません。双眼鏡を使うコツは、肉眼で鳥を視線にとらえたまま、双眼鏡を目元にもってくることです。はじめはホームセンターで売っているような安価なモデルでも問題ありませんので、ぜひ携帯してください。

 

登山中に鳥の識別をしたい方には、文庫版の『くらべてわかる 野鳥』がお勧め

登山技術が急には身につかないのと同じように、鳥の識別もすぐにできるようになるわけではありません。鳥に詳しい人も何回も鳥を見て、調べたり人に聞いたりして少しずつ覚えていったのです。しかし幸いにも、鳥は植物、昆虫、きのこなど生き物の中では、実は名前が覚えやすい部類になります。

例えば、植物は日本に約7000種あると言われていますが、鳥は約600種です。レアな鳥を除けば300種程度、さらに海や水辺の鳥を除けば150種程度になります。さらに、羽の模様などに特徴が多いので、図鑑でも調べやすいです。

 

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『くらべてわかる 野鳥 文庫版』は文庫サイズに日本で見られる主な鳥を掲載していて、軽くコンパクトで持ち運びしやすく、登山のお供にオススメです。似ている鳥との違いを写真から引出し線で示しているので、解説文を読まなくても識別は一目瞭然です。

 

姿を見るだけではもったいない鳥の面白い私生活

彼らが何をしているのかに注目するとバードウォッチングがもっと楽しくなります。鳥の行動として特に目立つのは“さえずり”でしょう。石塚徹著『歌う鳥のキモチ』は、鳥がどんなキモチで歌って(さえずって)いるのかに焦点をあて、鳥たちの私生活に迫った本になっています。

 

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『歌う鳥のキモチ』の特典動画

 

歌っているのはオス。それはメスを口説くため

そもそも鳥が歌うのは何のためでしょうか? 『歌う鳥のキモチ』を参考に説明していきます。

実は歌っている鳥のほとんどはオスで、メスはあまり歌いません。“さえずり=歌”は、“繁殖にかかわる比較的複雑な声”のこと。オスの鳥が歌うのはメスを口説くためだったのです。

渡り鳥という言葉がある通り、多くの鳥は季節に応じて住処を移動します。春になると南の国から日本に渡ってきて繁殖し、秋に南の国に帰ってくる鳥を夏鳥、秋に北の国から日本に渡ってきて越冬して、春になると北の国に帰って繁殖する鳥を冬鳥と呼びます。ということは、日本で鳥の歌声が多く聞けるのは、繁殖期と呼ばれる春~夏の短い期間になります。

今は春。南の国でバカンス?をした夏鳥たちが日本にやってきて盛んに歌い始めるシーズン。バードウオッチングをはじめるにはよい季節といえるでしょう。

 

渓流で甲高く複雑なさえずりをするミソサザイ / 街中でも山の中でもよく見られるシジュウカラ

 

歌は鳥たちの私生活をのぞく糸口

オスたちは、声高に歌って花嫁を募集します。その様子を観察していると、実際に花嫁候補がひょっこり姿を現すことがあります。うまくつがいになる(結婚する)場合もあれば、フラれて再び盛んに歌い出す場合もあるとのこと。鳥の種類が識別できなくても、そんな鳥の私生活を覗くだけで面白いです。

見事結婚してつがいになったオスは独身時代のように目立つところで歌うことはなくなり、メスと行動を共にして、ときどき地上で妻に向けてささやくように歌うようになります。小声で歌っているオスを見かけたら、近くに結婚相手のメスを見つけられるかもしれません。そうしてつがいになったメスは巣をつくり、卵を産み、抱卵に入ります。

さて、『歌う鳥のキモチ』の著者の石塚さんが、あるとき、抱卵に入ったメスの旦那が縄張りから遠く離れた別の森で独身のように大声で歌っているのを見かけました。読者のみなさんは、いったい彼は何をしていたのだと思いますか?

___しばらく観察していてわかったことなのですが、どうも浮気をしようとしていたようなのです。

鳥の歌というのは、鳥にとってのコミュニケーションツール。独身オスがメスを誘うためのものだったり、縄張りに侵入したほかのオスを追い払うためだったり、天敵が近寄ってきたときの警戒の合図だったりと、歌に注目することで、鳥のキモチや社会に迫ることができます。鳥の歌が活発になるこれからの季節、山へ行った時は、ぜひ、そんな鳥のことも気にしてみてください。

プロフィール

自然図書出版部

山と溪谷社で図鑑や自然関連図書、アプリなどをつくっている編集部。部員たちが旬の生き物情報や編集者の日常、編集裏話をつぶやくTwitterが密かに人気。
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