丸山に日向山…秩父の帰りは「ずりあげうどん」で決まり

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ずりあげうどん

秩父の家庭の味「ずりあげうどん」

「西野さぁん、ずりあげうどん、食ったことありますか?」

秩父在住の仕事仲間、さかもっさんに教えてもらったのは、もう15年くらい前だろうか。

ずりあげうどんは埼玉県秩父地方の家庭料理。いや、料理というよりうどんの食べ方…というべきか。茹で汁とともに供されるうどんをお椀にとり、醤油やねぎなどの薬味と加えて食べる。秩父では、おかあさんが作ったうどんを、このように家族で食べるのが一般的なのだという。

釜にうどんを入れ、茹で上がったらそのままずりずりと引き上げながら麺をすするから「ずりあげうどん」。あらかじめ麺を用意してさえおけば、忙しい農業の合間でもすぐ作って食べられるずりあげうどんは、この地方に根付いた食文化なのだ。

「村の若いもんの飲み会でも、やりますよ。締めにずりあげうどん食べないと終わんないよね」

薬味の種類が豊富なのも、家庭の味であるゆえんだろう。おうちにあるもので、美味しく。醤油やねぎ、七味唐辛子、ごま油、かつおぶし、揚げ玉、マヨネーズ。…え? マヨネーズ?
「いやぁ、合うんっすよ。みんなやってますって」笑いながら言うさかもっさん。いやいや、そんなばかな。

 

道の駅果樹公園あしがくぼ

果樹公園あしがくぼに立ち寄るなら、速攻下山が鉄則

おいしいずりあげうどんが味わえる店があると、さかもっさんが教えてくれたのが、西武秩父線芦ヶ久保駅に隣接する道の駅「果樹公園あしがくぼ」。食堂とは別棟の、交流施設食堂処で、地元のおかあさんが丹精込めて作ったうどんをずりあげうどんでいただける。

注文をし、できあがったらカウンターに取りに行くシステム。受け渡しのときに、一応食べ方の説明をしてもらえるし、テーブルにも説明書きが置かれているので、ずりあげうどん初心者でも安心だ。説明をうけたら、カウンターに並んだ薬味を好きなようにお椀に入れていく。地元産のだし醤油、ねぎ、わかめ、揚げ玉、かつおぶし、ごま油、マヨネーズ。…そう、マヨネーズもちゃんとあるのだ。しかも常連ぽい人がうれしそうにマヨネーズをお椀に入れていた。うへぇ。

あつあつの茹で汁からうどんを引き上げ、薬味の入ったお椀に入れて、ずるずるっとすする。茹でたてのうどん。こしがあって、茹で加減もちょうどいい。いやあ、うどんがちゃんとおいしいのはいいな。お椀に少しだけ茹で汁を足して味を調節。一心不乱に食べてしまう。

あっという間に食べ終えて、ため息。ああ、並盛りではなく大盛りにしておけばよかった…と後悔するのがいつものパターン。

教えてもらって以来のお気に入りの店なのだが、ずりあげうどんが味わえる交流施設食堂処は、11時から14時までの営業(土日・祝日は15時まで)。下山メシにずりあげうどんと思うなら、早朝出発、速攻下山が鉄則だ。

 

今日のお店
道の駅果樹公園あしがくぼ
住所:埼玉県秩父郡横瀬町大字芦ヶ久保1915-6
電話番号:0494-21-0299
https://ameblo.jp/ashigakubo/

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

下山メシのよろこび

登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。

編集部おすすめ記事