ゴールデンウィークに、北アルプスで吹雪となった理由を考える。気象予報士から教わる山の天気(1)

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登山愛好者として身につけておきたい知識、技術を教えてもらう「大人のワンゲル部」。今回は、気象予報士の資格をもつ登山ガイド上村博道さんに山の天気について教えてもらう。

皆さん、こんにちは。登山ガイドの上村博道です。私は、登山ガイドをしながら、気象予報士として山の天気と登山計画のかかわりを研究したり、安全登山の指導を行ったりしています。本コーナーでは、楽しくわかりやすく山の天気について解説していきますので、少しでも天候・天気の仕組みについて理解して、自身の登山に役立ててください。

 

GW真っ只中の5月4日、北アルプスで吹雪

2年越しの槍ヶ岳 写真/ミーグルさんの登山記録より

ゴールデンウィーク真っ只中の5月4日、北アルプスでは吹雪になりました。この時期に北アルプスの標高が高いエリアで降雪があることは、珍しいことではありませんが、なぜ吹雪となったのか? その理由を考えてみましょう。

北半球では、低気圧の風向きは反時計回り、高気圧は時計回り

まずは、基礎知識をおさらいすると、日本は北半球にあるため、北へ行くほど気温が低く、南へ行くほど気温が高くなります。また、北半球では、低気圧の風向きは反時計回り、高気圧は時計回りとなります。

では、下記の天気図を見てください。

低気圧が日本列島を西から東へ通過するとき、低気圧の前面(東から南側)は、反時計回りの風向きなので、南から北へと風が流れます。いわゆる南風です。南の温かい空気が吹き込みますので、気温が上昇します。逆に、低気圧の後ろ側(北から西側)は、反時計回りの風向きなので、北から南へ吹く、北風が流れ込みます。当然、気温の低い空気が流れ込みますので、気温が下がります。

ここで注目したいのは、低気圧の西側にある高気圧です。

高気圧は、時計回りなので、高気圧の前側(東側)は、北から南への風が吹いています。ということは、低気圧の後ろ側(西側)と高気圧の前側(東側)では、どちらも北から南への風が吹いています。

低気圧が去り、高気圧が張り出してきている時、天気は好転していきます。しかし、完全に晴れて穏やかになる前に、とても冷たい北寄りの風が流れ込むのです。※強さは、時と場合による。

上図は、北アルプスが吹雪になった、平成30年5月4日6時の地上天気図です。北アルプスの頭上に低気圧と高気圧の境界線があることがわかります。特に山では、標高が高くなるほど気温が低下して、風が強くなる傾向がありますので、その影響を大きく受けます。そのため、北アルプスでは吹雪となったのでしょう。

 

天気の変わり目は、特に注意して!

天気の変わり目は、天気が急変することがあります。高気圧が張り出してくるので天気が良くなるだろうと思っても、油断ならないということを覚えておくと良いでしょう。

プロフィール

上村博道

気象予報士の資格をもつ登山ガイド。安全登山の指導を行っている。 国内では北海道・積雪期日高山脈全山縦走、積雪期知床半島縦走など積雪期の長期山行を行う。海外では、エベレスト8848m、デナリ 6194m、アコンカグア6960mに登頂。
⇒BLOG:ヒロい自然の中で・・・

太田昭彦部長の「大人のワンゲル部」―リーダーとしての力を身につけよう―

登山初心者や、すでに山登りをしているが登山についての基本的な知識を学ぶ機会のない方を対象に、自分の力で安心して山登りが出来るようになって欲しいとの願いを込めて、登山の知識や技術を学ぶ“大人のワンゲル部”を創部しました。メンバーは部長に太田昭彦。コーチに上村博道&絵美という経験豊富な登山ガイドです。この機会にあなたも知識を身に付け、ぜひ自立した登山者の仲間入りをして頂ければ幸いです。(部長・太田昭彦)

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