例年より残雪は少なめでも引き続き雪に対する注意を。 島崎三歩の「山岳通信」 第110号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2018年5月15日に配信された第110号では、ゴールデンウィーク中に多発した山岳遭難状況について説明している。

 

5月15日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第110号では、4月27日~5月5日に起きた15件の山岳遭難事例について説明している。なお昨年のゴールデンウィーク時発生状況と比較すると(4月28日~5月6日の9日間)、件数では8件減(うちBCが4件減、山菜採りが2件減)、遭難者数は14人減(BCが7人減、山菜採りが2人減)となった。以下に抜粋・掲載する。

 

  • 4月27日、長野県飯綱町内の山林で、73歳の女性が山菜採り中に同行者とはぐれ、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより発見、救助された。

遭難場所の状況(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月9日付)

 

  • 4月29日、北アルプス蝶ヶ岳で、70歳の男性が蝶ヶ岳から常念岳に向けて縦走中に滑落して軽傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 4月29日、長野県高森町の吉田山で、64歳の女性が山頂へ向けて登山中に発病し、体調不良を訴え歩行困難となる山岳遭難が発生。山梨県防災ヘリにより救助され、病院に収容された。

  • 4月29日、北アルプス鹿島槍ヶ岳で、57歳の男性と25歳の男性が鹿島槍ヶ岳天狗ノ鼻付近を登山中に滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動し、25歳の男性は無事救助されたが、57歳の男性は収容先の病院で死亡が確認された。

  • 4月29日、南アルプス加加森山付近で、55歳の男性が池口岳から加加森山に向けて縦走中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。翌30日に県警ヘリにより発見、救助された。

  • 4月30日、北アルプス蝶ヶ岳で、41歳の女性が蝶ヶ岳から三股登山口に向けて下山中に雪上で足を滑らせ滑落・負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助され、病院に収容された。

  • 5月1日、北アルプス北穂高岳で、33歳の女性が北穂高岳から涸沢に向けて下山中、雪の塊に足を引っかけて骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 5月1日、北アルプス北穂高岳で、55歳の男性が北穂高岳から涸沢に向けて下山中、バランスを崩し滑落して骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 5月1日、中央アルプス木曽駒ヶ岳で、70歳の男性が木曽駒ヶ岳から中岳に向けてスキーで滑走中、雪解けの段差に落下して骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

木曽駒ヶ岳の遭難場所の状況(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月9日付)

 

  • 5月2日、南アルプス塩見岳で、49歳の男性が塩見岳から下山中に道に迷い行方不明となる山岳遭難が発生。県警ヘリなどで捜索していた中、遭難者は自力で下山した。

  • 5月3日、中央アルプス空木岳で、63歳の男性が空木岳から下山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。駒ヶ根署員と遭対協隊員により発見され、合流して避難小屋に収容した。翌4日に県警ヘリにより救助され、病院に収容された。

  • 5月4日、北アルプス明神岳で、52歳の女性が明神岳東稜を登山中にバランスを崩して滑落・負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。翌5日に県警ヘリにより救助され、病院に収容された。

北アルプス明神岳での救助の様子(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月9日付)

 

  • 5月5日、北アルプス白馬岳周辺で、81歳の男性が行方不明になっていることが確認された。男性は4月28日から5月2日までの予定で単独で栂池から入山したものの、下山予定日を過ぎても連絡がなく行方不明となっている。地上及び県警ヘリで捜索をしている。

  • 5月5日、北アルプス槍ヶ岳で、72歳の女性が槍沢を下山中に強風でバランスを崩して滑落・負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。県警山岳救助隊、北アルプス南部地区遭対協隊員により救助され山小屋に収容された。翌6日に県警山岳救助隊とともに下山し、病院に収容された。

  • 5月5日、北アルプス白馬乗鞍岳で、73歳の男性が白馬乗鞍岳から蓮華温泉へスキー滑走中に白馬乗鞍岳天狗原周辺でバランスを崩して転倒・負傷、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助され病院に収容された。

 

山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

大型連休中は県内で15件の山岳遭難が発生しました。遭難の傾向として登山中、あるいは山スキー中に残雪によりスリップや転倒をして負傷する事案が多数発生しています。
今年は例年よりも残雪が少ないとはいえ、今後しばらくは標高の高い山域では谷筋などに雪が残ります。そのような山域では雪渓上に登山コースが設定されている場合が多く、通過にはアイゼン、ピッケルなどの装備が必要です。
また雪渓の解け具合によって、コースが変更になったり、通行止めになったりする場合もあります。事前に付近の山小屋などにコース状況を確認するなど、慎重な判断を心がけましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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