ヒマラヤの高峰を見渡す ネパール アンナプルナ・ベース・キャンプ:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(2)

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旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第2回目は、この旅最初のトレッキングとなるネパールの山。昔ながらの農村風景から始まり、8000m級のヒマラヤの高峰を360度の視界で眺めることができるアンナプルナ・ベース・キャンプを目指したトレッキングの様子 をお伝えする。

 

集落をつなぐ生活路を歩く

2016年4月18日(世界一周6日目)

バスは砂埃を巻き上げながらいくつかの峠を越え、乗客を何度も入れ替えながら、ナヤプルという小さな集落に到着した。ここは僕らの「世界のトレイルを巡る旅」の、最初のトレッキングのスタート地点だ。

4月13日に日本を出発してから6日目、タイを経由してネパールに入り、首都カトマンズから約200キロ西にあるポカラという町でトレッキングの最終準備を整えた僕らは、さらに約2時間ローカルバスに揺られて、ようやく登山口のある集落にたどり着いた。僕らはここから全行程10日間のトレッキングで、標高4130mのアンナプルナ・ベース・キャンプを目指した。

アンナプルナは、ネパール・ヒマラヤのほぼ中央に位置する大きな山群。サンスクリット語で「豊穣の女神」という意味で、その名の通り麓には緑豊かで素朴な山村の風景が広がっている。

初日はティケドゥンガという集落までは、のどかな田園風景を眺めながら川沿いの道を歩いた。たくさんの羊や馬、牛とすれ違い、登下校中の子供たちとは「ナマステ!」と元気に挨拶を交わす。ここは登山道というよりも、集落と集落をつなぐ生活路だ。人々が暮らす道を歩くという体験は、自然と文化を一度に感じることができるネパールトレッキングの魅力の一つだ。

夕方、宿に到着した直後から激しい雷雨となった。ネパールのトレッキングシーズンは10月から4月の乾季。雨が少なく空気が澄み渡り、綺麗な景色が眺められるそうだが、4月の中旬ともなると徐々に雨季の気候に近づいてきているのかもしれない。

タルチョがたなびく鉄橋を越え、いよいよトレッキングがスタート

 

集落と集落をつなぐ生活道を歩いていく

 

「ナマステ!」と声をかけると笑顔を返してくれた

 

道中たくさんのロバや馬、牛や羊とすれ違う

 

腹が減ったらダルバート

2016年4月22日(世界一周10日目)

急な石段を登り、山の斜面に作られた段々畑を眺め、石楠花(シャクナゲ)が群生する森を抜けていく。いくつもの山と谷、集落を越え、すれ違う人たちと笑顔で挨拶を交わしながら、徐々に高度を上げていく。

朝も昼も夜も、食事は集落にあるゲストハウス・食堂でとる。お腹が空いた時はダルバートが僕らの味方。ダルバートとは、豆のスープ、おかず、ライスなどがワンプレートに載ったネパールの定食のようなもので、食べたいだけお代わりができるのが特徴だ。

現地のガイド・ポーターは昼食・夕食はだいたいダルバートを食べているようで、かなりの量をモリモリ食べている。同じ行程で登っていて何度も会うため仲良くなったネパール人ガイドが、ダルバートの皿に雪山のように盛られた白いライスを指さして、「これ、アンナプルナ」といってむしゃむしゃ食べたガイドギャグ(?)は、ダイニング全体で大ウケだった。

山の斜面に広がる段々畑が美しい

 

宿泊や食事はこのようなゲストハウスを利用する

 

ネパールのワンプレート定食「ダルバート」

 

ガイドやポーターと楽しむ晩ごはんの風景

 

360度白銀の円形劇場へ

2016年4月24日(世界一周12日目)

昨晩降り始めた雪でトレイルは一気に冬山の様相となった。

これまでは緑生い茂る蒸し暑い夏山の雰囲気だったが、標高3300mあたりから森林限界を超え、荒涼としたトレイルに変わった。そして毎日夕方に決まってやってきたスコールは、昨日遂に冷たい雪に変わったのだ。

今日はいよいよ最終目的地アンナプルナ・ベース・キャンプを目指す日。標高は既に3700mを超え、青い空からは遮るものなく太陽が降り注ぐ。薄い空気に呼吸を整えながら、白銀のトレイルをゆっくりと登る。歩き始めて約2時間、遂にアンナプルナ・ベース・キャンプ(4310m)に到着した。

標高世界第10位のアンナプルナⅠ峰(8091m)を始め、鋭く切り立った高峰が360度取り囲む、圧倒的な景色が広がる。自分の目で見るヒマラヤの山々は、改めて大きくそそり立つようで、畏怖を感じずにはいられない。

「来てよかったね」。 僕らは何度も言い合った。

緑生い茂る森から、やがて荒涼としたトレイルへと風景が変化していく

 

アンナプルナ・ベース・キャンプを目指す日、朝起きると一面銀世界に変わっていた

 

7~8000m級の高峰が360度取り囲む円形劇場

 

雪に覆われたアンナプルナ・ベース・キャンプ

 

◆しっかりとした準備さえ行えば誰でも目指すことができるトレッキングエリア

7~8000m峰が見渡せるベースキャンプを目指す、と聞くとちょっとハードルが高いと感じるかもしれませんが、歩くに当たり危険な箇所はほぼ無く、宿と食事がルート上の集落で手配できることもあって、しっかりとした準備さえ行えば、誰でも楽しめるトレッキングエリアだと思います。心配であれば、ガイドやポーターを手配することで、精神的・体力的負担をカバーすることもできます。

アンナプルナ・トレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備については、トレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

http://trailtravelers.net/annapurna-summary/

プーン・ヒルから眺めたダウラギリ

 

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
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トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

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