意外とかさばる食料、軽量化する場合の選択とは? テント泊登山の軽量化の秘訣を山岳マラソンに学ぶ

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1泊2日のテント泊登山で、日帰り登山と同様に軽快に歩きたい! 軽量化/コンパクト化を目指すための食料計画とは? 山岳マラソン直伝のテクニックで、どこまで軽量化できるか、この夏こそ挑戦してみよう!

 

前回は、テント泊登山の装備の中でも、最もかさばる=軽量化が期待できる「テント、シュラフ(寝袋)、テントマット」の軽量化の考え方について説明した。

★前回記事:マット、寝袋は工夫次第で大幅に軽量化が出来る箇所

第3回となる今回は、意外と重量に影響する食料およびコンロ・食器類について説明する。テント登山の楽しみの1つである食事だが、その中で楽しみながらできる軽量化/コンパクト化について説明する。引き続き、ICI石井スポーツ登山学校の東秀訓さんに、直伝の軽量化テクニックを教えてもらった。

 

お湯を入れるだけの山ごはんを選択するなら

最後に「食」について説明しましょう。1泊2日のテント泊登山での食事をする場合、昼食は行動食で済ますと仮定すると2食分を料理する必要があります。お湯だけで調理を済ますことができる、軽めの装備で選んだ場合、一般的にはこんな感じではないでしょうか?

アルファ米×4とフリーズドライフード×4、これで2回の食事分(2人分)。ちなみにアルファ米は1食100g

 

アルファ米とフリーズドライフードを2食分。これにコーヒーやスープなども持っていく・・・、という構成が一般的だと思います。

これをさらに軽量/コンパクトにするということで、「ウルトラランチ」を選択してみました。ウルトラランチは最初から味もついていて、お湯を入れると2分でできあがるので、持ち運びも調理も簡単です。これだけでは味気ないかもしれないので、スープくらいは付けても良いと思います。

ウルトラランチ「ビバークレーション」に、フリーズドライのスープが4つ分。ちなみに重量は1食が80g

 

こうして比べると、だいたい半分ぐらいの大きさにコンパクト化できました。重量についても、少し下げることができるでしょう。

どちらの食料を用意するにせよ、お湯が必要ということで、コンロ・鍋・食器などの装備は絶対に必要になります。「お湯だけを沸かせれば良い」ということで軽量化を目指すなら、バスバーナーではなく、アルコールバーナーという選択もできるようになります。

そこでアルコールバーナーを使うと――、だいたいこれぐらいの差になります。

左がアルファ米+ガスコンロ+コッヘル、右がウルトラランチ+アルコールコンロ+食器、だいぶコンパクトになっているのが確認できる

 

コンパクトさという意味では、ガスコンロの場合はコッヘルにすっぽり収納できるメリットがあるので、大きなメリットはないかもしれませんが、アルコールバーナーにすると、燃料はかなり軽く出来るメリットがあります。

こうして、シュラフ、マット類、食料、コンロ・鍋・食器類、テントは今回は普通のダブルウォールタイプを選択したと仮定してパッキングすると・・・、こんな感じになりました。

右のザックには、シュラフ、マット類、防寒具、着替え、テント(ダブルウォール)、食料、コンロ・鍋・食器類がすべて入った状態。30Lのザックと比べると、その違いが一目りょう然

 

ほかにも燃料や行動食や水、雨具などが加わりますが、25Lのザックでも、まだまだ余裕があります。実際、山岳マラソンに出場を想定すると2人1組での出場となるので、テントやコンロなどは2人で1つになるので、もう少し余裕が出てくるでしょう。もちろん登山の場合でも、パーティで行動して共同装備とすれば同じように軽量・コンパクトに出来るでしょう。

 *   *   *   * 

あと増やすとすれば、濡れたときのことを考えて着替えを1枚は入れておくことになりますが、ここから大幅に増えることはないので、これで1泊2日テント泊は可能という形になりました。

一般的な山岳装備で、普通に装備してしまうと、どんなに頑張っても、やはり30~35Lのザックを用意しなければならないと思いますが、工夫すればここまでは減らせる可能性があることを示しました。ザック自体も小さくなって重さも減っているので、これでだいたい6割くらいの重さとなっています。

振り返って確認すると、実際に何が小さく/軽くなったのかと言えば、マット、シュラフなど、かさばりやすいものです。これらに対しての工夫が軽量/コンパクト化に繋がっています。

ポイントは、かさばるものを、どこまでかさばらないようにするか、ここを念頭に入れると効果が大きく出てくると思います。

 

装備の工夫は軽量化だけではなく、非常用装備にも!

最後に軽量化とは少し話が外れてしまうかもしれませんが、「装備の工夫」ということで、登山者向けにぜひ教えておきたいテクニックを紹介したいと思います。それが低体温症対策の工夫で、ソフトボトルの水筒を湯たんぽに使うことです。

登山用のソフトボトルは非常に丈夫で強度があり、熱湯を注いでも大丈夫です。ただし、この狭い口にお湯を注ぐのは難しいので、これペットボトルの口部分をカットして、フタ部分を改造してあるのですが、ボトルに装着して注げるようになっています。

ペットボトルを改造してジョウゴとして活用できるように改造。これとソフトボトルを組み合わせれば非常時に湯たんぽとして活用できるそうだ

 

例えば、低体温症の可能性になったときなどに、テルモスのお湯をこの中に入れて湯たんぽにして、前に紹介したアルミの張ってあるエマージェンシーシートで身体を包んであげると、湯たんぽによる熱源とシートの保温効果で身体が暖められやすくなります。

低体温症では、末端の冷えた温度の血液が流れ込んで、さらに症状が進行してしまうことがありますが、こうした工夫で、低体温症のファーストエイドにも使えるようになります。実際、私はこの方法で、遭難救助に役立てたこともあります。

ちょっと話がずれましたが、既存の装備をちょっとした工夫で役立てることができるので、軽量化/コンパクト化を含めて、さまざまな工夫をしてもらいたいと思います。

最後に、コンパクト化/軽量化のポイントを改めてまとめると

  • 事前の情報収集で、気象状況を読むこと
  • かさばるものを、かさばらないようにすること
  • 工夫すること

この3点を心がければ、1泊2日のテント泊用の装備を、ふだんの日帰り登山装備並に減らすことができます。ぜひ、今までの装備の6割にすることを目指して、軽量化/コンパクト化を目指してみてください。

 

第2回 石井マウンテンマラソン、好天の中で開催!

2018年5月26日(土)~27日(日)、第2回 石井マウンテンマラソンは静岡県東伊豆町で開催された。2日間とも好天に恵まれ、多くの参加者がマウンテンマラソンの魅力を堪能した。

⇒第2回石井マウンテンマラソンのレポート、リザルトはこちら

 

プロフィール

東 秀訓

高校の教員時代に国民体育大会山岳競技に出場。当時の踏査競技(オリエンテーリング形式に近い)で2回入賞の経験がある。
競技生活とともに生徒とヒマラヤへ遠征。その他ヒマラヤ6000mの数座登頂・アルパインスタイル初登攀や8000mの登頂、アルプスEDルートの登攀、モンブラン、マッターホルン、ドリューの秀峰に登る。
現在ICI登山学校事務局勤務と共に、長野県山岳総合センターアドバイザーを務める。
石井マウンテンマラソンには、サポートとして活躍しながらも、選手としても出場する。

石井山専新宿東口ビックロ店

首都圏最大級の山・アウトドアの大型専門店。「安全」をテーマに、ユーザーのライフスタイルに合わせたさまざまな商品を提案している。店内では、登山学校の講習やワークショップなども開催中。

住所: 東京都新宿区新宿3-29-1 ビックロ 新宿東口店内 8F
TEL: 03-5312-9550
営業時間: 11:00~20:00
アクセス: 新宿三丁目駅A5直結、新宿駅・西武新宿線西武新宿駅下車徒歩5分

 ⇒ホームページ

登山道具の買い方・選び方、ショップのスタッフに聞きました!

数ある登山道具の中から、自分にピッタリの用具を選ぶには? 登山用具を知り尽くした、ICI石井スポーツ、好日山荘、さかいやスポーツ、かもしかスポーツなどのスタッフが、用具チョイスとツボを説明します。

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