ミズバショウの次はこれ! 初夏の尾瀬、白い“ふわふわ”、ワタスゲに会いに行こう!
本州最大規模の高層湿原、燧ヶ岳と至仏山などの名峰など、尾瀬は登山者にとっても魅力的な場所として親しまれている。そんな魅力を、もっと深く知るために、尾瀬の自然環境の保全・調査研究に取り組んでいる尾瀬保護財団が、知られていない魅力を紹介する。
ミズバショウの次は、ふわふわのワタスゲ
尾瀬と言えばミズバショウを連想する人が多いと思います。しかし、ミズバショウの後にも、それ以上の絶景が待っていることを、どれだけの人が知っているでしょうか。ミズバショウで華やいだ尾瀬が静かになる6月中旬頃から見られる尾瀬の絶景を、今回は紹介します。
尾瀬の湿原と言えば、尾瀬ヶ原と大江湿原がとくに有名です。尾瀬ヶ原は鳩待峠登山口(群馬県片品村)から1時間ほど歩くと広がる場所で、木道が整備されていて、滞在時間に応じてコースを設定できます。春のミズバショウから秋の紅葉まで、四季折々美しい景色を見せてくれる場所です。
大江湿原は沼山峠(福島県檜枝岐村)から歩いて1時間程にある尾瀬沼の畔にある湿原で、多様な高山植物を見ることができます。7月中旬~下旬にニッコウキスゲの群落が見られることで人気の場所です。
それぞれの湿原ともに、6月中旬~下旬頃はワタスゲが見頃となります。見頃の時期は雪の多さや気候などによって多少前後しますが、ミズバショウの季節が終わる時期から始まります。例年、梅雨の時期にも重なるために登山者は少なめの時期ですが、梅雨晴れを狙って、“ふわふわ”のワタスゲを楽しむのが良いでしょう。
とくに大江湿原は、この時期はレンゲツツジの開花とも重なり、紅いレンゲツツジと白いワタスゲの共演となります。静かな尾瀬を独り占めするのはどうでしょうか?
ワタスゲの「花」を知っていますか?
多くの人がイメージするワタスゲは、ふわふわと風に揺れている姿だと思いますが、このふわふわは果穂と呼ばれるもので花ではありません。どんな花が咲くか知っていますか? 実はワタスゲの花は雪解け直後から湿原に顔を出していますが、その姿は地味であまり目立たちません。
目立たない理由は、ワタスゲは花粉を風に運ばせる「風媒花」として進化し、花粉の運搬を昆虫に頼る必要がないためと言われています。
種子ができると、タンポポのように風に乗ってどこかに運ばれ分布を広げていきます。また、自家受粉を防ぐために、雄しべと雌しべの成熟のタイミングをずらしているなど、調べてみると色々面白い特徴を持った植物です。
「何れ菖蒲か杜若」、同じ時期に見られる花々にも注目
初夏の尾瀬は、梅雨時期とも重なりますが、種数も増えてきて花が好きな人にはオススメの季節です。ワタスゲ以外にも、湿原ではカキツバタやヒオウギアヤメの青が目立ちます。
見分け方を聞かれることがよくありますが、写真を並べると非常に分かりやすい。環境の違いで、見られる場所が異なるのも面白い植物です。
尾瀬は、ミズバショウやニッコウキスゲのイメージが強いのですが、その他にも様々な高山植物・景色を楽しむことができます。ぜひ四季折々の尾瀬を楽しみに足を運んでみてください。
プロフィール
公益財団法人 尾瀬保護財団
群馬県前橋市に事務所を置く公益財団法人。環境保全や調査研究に取り組むとともに、尾瀬ボランティアなどと連携した入山者への啓発、利用者への自然解説など、尾瀬の保護と適正な利用を図るための活動を続けています。
はるかなる尾瀬――、尾瀬の風景・春夏秋冬
本州最大の湿原が広がり、童謡にも歌われる尾瀬。そこにある自然は、どの季節でも魅力が詰まっている。そんな尾瀬の表情を、現地で環境保全や調査研究に取り組んでいる尾瀬保護財団が発信する