北アルプスって、ほかの山域となにが違う? 登山者憧れの北アルプスを形成した「岩」の秘密に迫る

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名山の数々、素晴らしい景観、広大なスケール――、さまざまな魅力で登山者を誘ってきた北アルプス。日本の登山の源流であるこの地の真の姿を、さまざまな角度から探ってみて見えてきたものとは?

伊藤洋平(山と溪谷編集部)=文・写真

 

前剱付近から剱沢を振り返る。左が別山、右が剱御前

 

穂高岳や槍ヶ岳、剱岳など、北アルプスには登山者を虜にする山々がそろっている。これらの山々がアイドル的人気を誇るのは、秀麗な山容、峻険な稜線、百花繚乱の花園、夏季も解けない大雪渓など、ほかの山域には見られない特徴を有しているからにほかならない。

とはいえ、ほかのエリアに比べて、具体的に何が特別なのだろうか。北アルプスを中心に日本の山々の成り立ちや、地形、気象、植生、動植物などを研究する専門家に話を聞くと、驚きの回答を得られた。今回注目したのは、北アルプスの象徴でもある「岩」についてで、山の成り立ちに詳しい信州大名誉教授の原山智(はらやま・さとる)先生に教えていただいた。

「北アルプスは、隆起と侵食作用によって、峻険で長大な岩稜が形成されました」と話すのは原山さん。

北アルプスは140万年から80万年前の火山活動などによって激しく隆起し、標高3000m前後の稜線が続く山脈に成長したと考えられている。

北穂高岳山頂から望む大キレットと槍ヶ岳。ナイフの刃のように痩せた岩稜が続く

 

北アルプスの森林限界は標高2500m前後で、森林限界を超えた上部の世界では、風や雪などによる侵食作用が常に働いている。こうした侵食作用によって山は崩壊を続け、険しい地形をつくりあげたそうだ。

また、6万年前と2万年前の寒冷期には山岳氷河が発達し、氷による侵食で山は激しく削られ、現在のような尖峰や険しい岩稜が形成されたという。確かに、奥穂高岳や北穂高岳のベース基地として人気の涸沢などのカール地形は、氷河によって形成された代表的な地形だ。

9月中旬、屏風ノ耳から一望する穂高連峰と涸沢カール

 

「北アルプスには、花崗岩や流紋岩などのマグマ起源の岩石も多く、色白で明るい印象を与えます。こうしたマグマ性岩石を深く削りこんだ氷河が、北アルプスを彫りの深いアルペン的山容へと仕上げていったのです」と原山先生は続ける。

つまり、北アルプスは活発な隆起によって森林限界を超える標高3000m前後の長大な山脈となったこと、加えて、世界的にも稀な豪雪地帯であったために、氷による侵食が激しく作用してほかのエリアにはない独特の山容を築いたのである。

別山尾根から剱岳に向かう

 

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プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

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発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。

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