このエントリーをはてなブックマークに追加

梅雨時期は特にヤマビルの被害の多い時期。知っておこう! 山でのヒル対策、撃退法。

太田昭彦部長の「大人のワンゲル部」―リーダーとしての力を身につけよう―
基礎知識 2018年06月29日

登山愛好者として身につけておきたい知識、技術を教えてもらう「大人のワンゲル部」。今回は、登山ガイドの上村博道さんに、山でのヒルの対策を教えてもらう。特に梅雨時期は、ヤマビルが活発に活動する時期。ぜひ参考にして、ヤマビルの被害を減らしてほしい。

 

生息域を拡大してきたヤマビル

ヤマビルに遭遇したことがある人はどれくらいいるでしょうか? 体長は1.5~8cmほどで、ミミズやゴカイの仲間です。動きは意外にも俊敏で、のこぎり歯のような歯を持っていて、この鋭い歯で皮膚を切り裂き、鹿などの動物や人間の血を吸います。このとき、歯と歯のあいだから、「ヒルジン」という痛みをなくし、血が固まるのを防ぐ物質を出していて、気付かれなければ1時間以上も血を吸うことができるそうです。

関東では、丹沢の山域に多く生息しているヤマビルですが、僕が登山を始めた20年程前は、梅雨の時期でも塔ノ岳から南側の表丹沢エリアで、ヤマビルを見たことがありませんでした。かつてヤマビルは、丹沢の中でも東丹沢の限られたエリアにしかいなかったのですが、主たる吸血源となっている鹿の増加と移動にともなって、鹿にくっついて運ばれ、生息域を拡大したと言われています。

ヒルの種類は、日本だけでも約60種。その中で、よく登山で被害にあうのは「ヤマビル」

ヤマビルは肌に付いて血を吸うだけではなく、衣服は血まみれになり、吸われた跡はかゆくなります。個人差はありますが、 出血が長時間続く場合もあります。また、クネクネした軟体で無慈悲に向かってきて、血を吸うと膨れ上がります。その様子は気持ち悪く、山で出遭う不快な生き物のひとつです。

 

気温が20度近くになると活動しはじめ、25~30度になると活発に

今年(2018年)、私が丹沢で初めてヤマビルを確認したのは、3月19日でした。3月にしては気温が高く、昼頃の最高気温が20度くらいありました。今までヤマビルを観察してきた経験では、気温が20度近くになると活動しはじめ、25~30度になると活発になる傾向があるようで、特に雨が多く湿度が高い、梅雨の時期が最盛期です。

関東では、妙義山周辺や房総半島もヤマビルの生息地になっています。この春は気温が高かった影響で、妙義山では例年より早いGW頃から被害を聞きました。房総半島は標高が低くて暖かいせいか、秋になってもヤマビルが出てきます。

 

ヤマビル対策にはストッキングが一番!

私は、ヤマビル対策を色々試してきましたが、その中で一番効果的なのは、長ズボンの下にストッキングを履くことです。さすがにつま先から覆われているストッキングは、ヤマビルでもお手上げのようで、ズボンの中に侵入しても、ストッキングの細かい網目が防壁になって、ほぼ肌が喰われません。男性が履くと、アブノーマルな感じがしますが、外見からではわからないし、蒸し暑い樹林帯では、タイツよりも蒸れません。ただし、薄手のタイプや、ほつれているものはNGです。

つま先まで覆われているパンストは安心!ですが誤解をまねかないように注意

 

身体にくっついているヤマビルは液体で落とせ!

身体に這ってくるヒルに対しては、メントール系のボディローションを使って撃退する方法がお気に入りです。市販されているヤマビル忌避剤が一般的な撃退法かと思いますが、ボディローションの方が普段の生活でも使用でき、身体についても気にならないので重宝しています。ヒルのいる山域に行くときは、小さな容器にローションを移し、ポケットに入れておきます。身体についているヒルを見つけたら、ローションをヒルにかけると、ポロッと落ちます。

同じ方法は食塩水でもできます。値段が手ごろなのはいいのですが、塩水はかなり濃くしないと効果は低いです。また、塩水がつくと革製品は傷んだり、金属部のあるギアは腐食することもありますので、帰宅後は、それらを水で洗うなどの手入れが必要なのは面倒です。

どちらにしても、皮膚に食いついたヒルは、無理やり引きちぎると口が残って、化膿する原因となるので、必ずメントール系のローションか、食塩水などの液体をかけて落としてください。

残酷ではありますが、一番手っ取り早いのが、ヒルをみつけたら切れ味の鋭いハサミで切ってしまうこともひとつの撃退法です。プラナリアように分裂して増えることはないので、ヤマビル減少にも少しは貢献できます。数が少ない場所なら塩を盛ってもいいですが、巣窟レベルになると、塩を盛る間に次々とヤマビルにたかられてしまいます。

 

ヤマビルの生態を把握し、被害を減らそう

ヤマビルの生息域を把握することも対策のひとつです。丹沢エリアといっても、東丹沢には多くいても、主稜線から西側の分布は限られています。ヤマビルはどこにでもいる訳ではないのです。事前に麓にあるビジターセンターなどから情報を仕入れておきましょう。季節や天気の違いでも、状況はかわりますので、山行のたびに状況を聞くと間違いありません。また、ヤマビルは、乾燥が苦手なので、なるべく腐葉土が少ない登山道の真ん中を歩くことを心掛けるとヤマビルとの遭遇率を下げることができます。

ヤマビルの被害を減らすためには、ヤマビルのことを良く知ることが大切です。

ヤマビルは、落ち葉の下など湿気の多いところを好む。登山道から外れたときは要注意
日本の山
教えてくれた人

上村博道

気象予報士の資格をもつ登山ガイド。安全登山の指導を行っている。 国内では北海道・積雪期日高山脈全山縦走、積雪期知床半島縦走など積雪期の長期山行を行う。海外では、エベレスト8848m、デナリ 6194m、アコンカグア6960mに登頂。
⇒BLOG:ヒロい自然の中で・・・

同じテーマの記事
ヤマビル対策、いろいろ試してみてわかったこと。休憩中のザックにも張り付いてくるので注意!
一部の山域では、ヤマビルに襲われることがある。その姿、動き、性質はグロテスクで、実に気持ちが悪い。そんなヤマビルから身を守るために、登山ガイドたちは知恵を絞り、さまざまな方法を実践してみた。
【閲覧注意!?】血を吸うヤマビルの身体変化に驚愕! ヤマビル対策研究で見た吸血の一部始終
近年、登山者を悩ませるのが「ヤマビル」だ。登山ガイドの上村博道氏は、このヤマビル対策のために身体を犠牲にしてその生態を追った。なかなか見られない光景となったのだった・・・。
降水確率0%でも雨に降られ、100%でも雨が降らない。知っておきたい降水確率の話
登山の予定が決まったら必ずチェックする天気予報。なかでも降水確率は、当日の持ち物を決めるだけではなく、山に行けるか、また、コースや時間の調整が必要かどうか、山行計画を大きく左右する要素となる。今回は、意外と知られていない“降水確率”の定義について話を伺った。
美しい紅葉に出会うために―。“紅葉の見ごろ”を9月の気温から予測してみよう!
登山愛好者として身につけておきたい知識、技術を教えてもらう「大人のワンゲル部」。今回は、気象予報士の資格をもつ登山ガイドの上村博道さんに“紅葉の見ごろ”を簡単な計算式で予想していた(!)話を伺った。ぜひ参考にして、美しい紅葉に出会う登山をしてほしい。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

明後日

(日本気象協会提供:2019年9月15日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW パタゴニア キャプリーン・ミッドウェイトを刷新
パタゴニア キャプリーン・ミッドウェイトを刷新 独自の立体構造で優れた吸汗速乾性と伸縮性を備えた「キャプリーン・ミッドウェイト」。アンバサダー3人の評価にも注目!
NEW 生きるための道具選び。シチズン「プロマスター」
生きるための道具選び。シチズン「プロマスター」 すべての道具の選択基準が「生きるために役立つ」ということ。K2登頂をめざした写真家石川直樹氏が本格志向の道具選びを語る
NEW モンベル「ストームクルーザー」の秘密に迫る
モンベル「ストームクルーザー」の秘密に迫る 定番レインウェア「ストームクルーザー」。日本の登山者に向けた雨具はどのように生まれ、どう進化したのか? その秘密に迫る
NEW 丈夫で伸縮性の高い、ハイブリッドなパンツを試す
丈夫で伸縮性の高い、ハイブリッドなパンツを試す 高橋庄太郎さんの連載「山MONO語り」。今月はホグロフスの「ラグドフレックスパンツ」を、岩場もある恵庭岳でチェック!
NEW 飛騨から登る北アルプス フォトコン優秀作品発表
飛騨から登る北アルプス フォトコン優秀作品発表 2部門に556点を投稿いただいたフォトコンテスト。審査員2名が選んだ優秀作品4点ほか、受賞作品が決定!
NEW 秋山PICK UP ITEM! シリオ
秋山PICK UP ITEM! シリオ 『秋山JOY』連動企画!ストレスフリーの軽量トレッキングシューズ、シリオの「P.F.46-3」を紹介
NEW カリマー「クーガー」モニターレポート公開!
カリマー「クーガー」モニターレポート公開! レポート第1弾は、まりりんさん。日帰りと二度のテント泊縦走で背負って感じた「身体に吸い付くような一体感」の理由とは?
NEW 山と自然を感じる2日間!丹沢 山モリ!フェス
山と自然を感じる2日間!丹沢 山モリ!フェス 10月5~6日に開催される、山とアウトドアのイベント「山モリ! フェス」。スタンプラリー、ワークショップ、自然観察ツアー...
毎日が絶景! 小岩井大輔の富士山頂日記
毎日が絶景! 小岩井大輔の富士山頂日記 富士山頂でしか見られない絶景が、ほぼ毎日! 写真家・小岩井大輔の富士山頂日記は今年もCool!
ロープウェイで登れる百名山
ロープウェイで登れる百名山 ロープウェイやリフトなどを使って、一気に標高を稼げる百名山はいくつあるかご存知?
王道の北アルプス縦走コースを歩こう
王道の北アルプス縦走コースを歩こう 森林限界を越えた稜線に、果てしなく続く縦走路。稜線歩きの醍醐味を思う存分楽しめる、北アルプスの縦走コースを紹介。
憧れの3000m峰に惜しい山に注目
憧れの3000m峰に惜しい山に注目 夏はやっぱり3000m峰に挑戦! と言いたいところだが、惜しい山にも3000m以上の魅力がたっぷりです。
名峰・那須岳登山へ! 個性豊かでダイナミック
名峰・那須岳登山へ! 個性豊かでダイナミック 活火山の茶臼岳、峻険な朝日岳、最高峰の三本槍岳ほか、花畑の稜線や温泉など魅力満載の那須連峰。ほかにも湿原・お花畑・温泉と...
ツラく、キツく、長い急登の登山道を制す
ツラく、キツく、長い急登の登山道を制す 長い急登を汗水流し、気合と根性を振り絞って、延々と登った先にある素晴らしい景色と充実感を味わいたいなら、ココに決まり!
南・中央アルプスの王道の縦走コースを歩こう!
南・中央アルプスの王道の縦走コースを歩こう! 北アルプスに比べると、登山者を受け入れる体制は整っていないのが南・中央アルプス。だからこそ魅力がタップリなのです!
夏山に向けて登山ボディになろう!
夏山に向けて登山ボディになろう! 夏山シーズン目前、今からでも間に合います。身体のリセット・メンテナンスの面から登山のトレーニングを指南。登山のための身体...