信頼できる「山仲間」を作るには? 山岳会への入会は?
質問:登山を始めてから、ずっと一人で登り続けてきましたが、単独行の限界や危険性を感じています。今よりも更に距離のある縦走登山、雪山やバリエーションルートにも憧れがあって、最近ではクライミングにも興味があるのですが、一人ではできないことが多くあります。本格的な登山をするには、どうしても信頼できる「山仲間」が必要だと痛感しています。信頼できる「山仲間」は、どう作ったら良いでしょうか。山岳会に入会することも考えています。
山仲間を作る選択枠が沢山あった昔
僕が登山を始めた頃は、山仲間を作る方法がたくさんありました。会社や地域には色々なレベルの山岳会があり、中学・高校には必ずと言ってよいほど山岳サークルがありました。大学に入れば、ハイキングをするクラブからヒマラヤ登山を目指すような本格的な山岳部まで、多くの登山サークルが存在しました。「山仲間を作り、登山技術を身につけよう」と考えた時、自分の志向やレベルに合わせた選択肢が沢山あったのです。
現在は、登山者の高齢化の中で、山岳会の衰退は確実に進んでいます。自分の時間を割いて、新しい仲間やパートナーを育てる“古いタイプのヤマヤ”が少なくなったのも、山岳会が減っている原因のひとつでしょう。昔は、全く登山経験のない人が新しく仲間になると、登山用具店に一緒に出掛け、登山靴やザックなどの基本装備の購入に付き合い、山の歩き方、地図の見方、天候の判断、雪上やクライミング技術など、一人前のヤマヤになるまで指導したものでした。
山岳会に入るなら、会に貢献する気持ちを持って!
もちろん今でも山岳会の中には、意識的に“一歩上を目指す”グループはあって、丁寧に探せば、あなたにあった会が見つかるはずです。ただ、山岳会は“無償で山に連れて行ってくれる組織”ではなく、自分も“登山活動を盛り上げ、山岳会に貢献する気持ち”が必要です。
残念なことですが、毎週のように何パーティーもグループを組んで登山をしていた山岳会がパタッと活動を弱めたり、単なる飲み会グループになってしまったりするのをしばしば見かけます。それは、主体的に参加し、山岳会をリードする後継者がいなくなってしまい、活動が続けられなくなってしまったのでしょう。
信頼できる山仲間がほしければ、信頼される努力をしよう!
今、よく見かける「山の仲間作り」は、SNSを利用したものです。これも、ある一定のレベルなら有効でしょうが、協働行動である登山パーティーを作り上げるには、僕は無理があると思っています。奥秩父のある山小屋に泊まった時、その夜に、SNSで集まった7人のグループがストーブを囲んで「本名はなんて言うの?」「どこに住んでるの?」とか、話をしているのを聞きました。「この人たち、登山届とか計画書とか、どうしてるんだろう?」とあきれた事がありましたが、小屋の主人に聞いたら、「今、そんなの当たり前だよ」と笑われてしまいました。
特に雪山では、ラッセルなどを交代しながら先へ進めるので仲間の存在はありがたい
山の仲間作りは、飲み屋で知り合いを作るのとは訳が違います。時には、疲れ果てて荷物を分け合ったり、ホワイトアウトの雪原で一緒にルートを捜したり、ロープでお互いの安全を確保したり、生死が関わってくることもあります。 信頼できる山仲間を作るためには、きっかけは何にしても、自分も多少の犠牲を払う覚悟が必要でしょう。自分が事故を起こした時に助けに来てほしければ、仲間が遭難した時には会社を辞めてでも救助に行く!くらいの気持ちがほしいものです。
プロフィール
山田 哲哉
1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。
著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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