新しい尾瀬に出会う、贅沢な“尾瀬時間”のススメ! 夏の尾瀬は朝と夜が特に素晴らしい

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本州最大規模の高層湿原、燧ヶ岳と至仏山などの名峰など、尾瀬は登山者にとっても魅力的な場所として親しまれている。そんな魅力を、もっと深く知るために、尾瀬の自然環境の保全・調査研究に取り組んでいる尾瀬保護財団が、尾瀬の贅沢な過ごし方を紹介する。

 

尾瀬沼のシンボル・尾瀬塚(通称「三本カラマツ」)

 

ミズバショウやニッコウキスゲなど可憐な花々が人気の尾瀬では、「行くならお花の一番良い時に行きたい!」と考える人が多く、特にこの2つのお花が見頃を迎える時期の登山者数は、シーズン中でも1、2位を争っている状況です。そのため、花の見頃である1~2週間に登山者が集中する傾向があります。

かつてのような混雑はありませんが、ゆっくり尾瀬を楽しむなら、ニッコウキスゲが終わった、これからの季節がオススメです。そこで今回は、自分だけの贅沢な時間を過ごす「尾瀬歩き」をご紹介します。

尾瀬沼畔で一番大きな湿原「大江湿原」

 

尾瀬の歩き方は、至仏山や燧ヶ岳、会津駒ヶ岳、田代山、帝釈山といった名峰の登山だけではありません。至仏山と燧ヶ岳、遠くに会津駒ヶ岳を望みながら広大な湿原を歩く「尾瀬ヶ原」。そして、湖畔の景色を間近に楽しみながら歩く「尾瀬沼」など、選択肢がたくさんあります。

そんな中で紹介したいのは「尾瀬沼」と尾瀬沼畔に広がる「大江湿原」を中心とする地域です。尾瀬沼は、尾瀬ヶ原に比べて訪れる人が比較的少なく、ゆっくりと流れる時間を味わうのにオススメの場所です。

尾瀬沼への行き方は大きく2つあります。1つ目は、福島県檜枝岐村から入山するコースです。御池登山口からシャトルバスに乗り、終点沼山峠から40分程歩くと大江湿原に到着します。湿原歩きを楽しんでいると、少しずつ奥に尾瀬沼が見えてきます。

2つ目は、群馬県片品村から入山するコースです。大清水登山口からシャトルバスに乗り、終点一ノ瀬から1時間半程歩くと尾瀬沼に到着します。途中、三平峠(1,760m)という峠を越える道は、古くから「会津沼田街道」と呼ばれ、上州と会津の交易に利用された歴史ある街道ですので、ぜひ歩いてほしい道です。

 

宿泊した人だけが味わえる、夜の“尾瀬時間”

尾瀬沼畔の山小屋やテント場を利用することで、刻一刻と移り変わる景色、日帰りでは決して味わえない贅沢な“尾瀬時間”を楽しむことができます。

静かな大江湿原を楽しもう。花はイワショウブ(上)、コオニユリ(下)

 

日中は、尾瀬沼を一周してもいいし、日本百名山で東北以北最高峰の燧ヶ岳に挑戦してもいいでしょう。早めに到着して、山小屋やビジターセンター、ビュースポットでのんびりする――。帰りのバスを気にしなくていい、そんな贅沢な時間を使ってみてください。

 

尾瀬沼の夕焼けと満点の星空

 

夕食後、燧ヶ岳の奥に静かに太陽が沈みます。カメラを持った人たちが駆け足でビュースポットに集まる時間です。刻一刻と移り変わる空の色、ベンチに座りながらいつまでも見ていられる景色です。

さらに時間が許すなら星空観察もオススメです。東南の方向に低く火星が赤く光り、東には夏の大三角(アルタイル、デネブ、ベガ)そして西には春の大三角。そして、天の川を眺めたり、流れ星に願いを込める、そんな過ごし方ができるのも空気の澄んだ場所ならではの楽しみです。

朝靄の彼方に見える尾瀬沼越しの燧ヶ岳

 

早朝、朝日が昇って太陽に湿原が温められる前の時間は、立ちこめるもやが幻想的な瞬間を作り出します。日が昇るにつれてもやが晴れ、条件がよいと尾瀬沼が鏡のように静まります。水面に映った逆さの燧ヶ岳は、朝のひとときに特別な時間を与えてくれることでしょう。

尾瀬はお花のイメージが強いかもしれませんが、そうした植物鑑賞と合わせて、自分に合った過ごし方を見つけて欲しいと思います。日中は足元に咲く花々を鑑賞しながら、朝夕は刻一刻と移り変わる景色に目を向ける――。そんな時間の変化を楽しむことを目的に足を運んでみてはいかがでしょうか。

今回ご紹介した景色は、宿泊した人だけが味わえる贅沢な“尾瀬時間”です。きっと、今まで知らなかった新しい尾瀬に出会えることでしょう。

 

プロフィール

公益財団法人 尾瀬保護財団

群馬県前橋市に事務所を置く公益財団法人。環境保全や調査研究に取り組むとともに、尾瀬ボランティアなどと連携した入山者への啓発、利用者への自然解説など、尾瀬の保護と適正な利用を図るための活動を続けています。

⇒公益財団法人尾瀬保護財団

はるかなる尾瀬――、尾瀬の風景・春夏秋冬

本州最大の湿原が広がり、童謡にも歌われる尾瀬。そこにある自然は、どの季節でも魅力が詰まっている。そんな尾瀬の表情を、現地で環境保全や調査研究に取り組んでいる尾瀬保護財団が発信する

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