8月は高尾山へ。ビアガーデンだけじゃない、経験者ならではの真夏の高尾山の楽しみ方

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低山フォトグラファーの渡邊明博さんに、季節に合わせた低山の魅力を聞く連載。第6回で紹介するのは、首都圏の「低山」のド定番ともいえる高尾山。山上にビアガーデンがあることは有名ですが、真夏だからこそ、経験者ならではの楽しみ方をご紹介します!

 

夏の高尾山を楽しもう♪

8月になると無性に行きたくなるのが高尾山です。夏山シーズン到来で、アルプスとか標高の高い所に行きたくなるのが人の常。でも、山上のビアガーデンを組み合わせれば、低山のド定番、標高599mの高尾山の魅力もたっぷりと味わえます。

おすすめのコースは、小仏から景信山に登り、城山を経て、高尾山に至るルート取り。お昼は茶店のある城山がよいでしょう。名物はかき氷とナメコ汁です。

景信山山頂は展望が開け見晴らしが良い。茶店の席の数で人気がわかる

 

またこのコースのもう一つのよいところは富士山です。景信山、城山、高尾山と、どのピークでも富士山が望めます。春よりも夏場のほうが意外と空気が澄んでいて、霞んでいても富士山の見える確率は高いのです。ぜひ天気の良さそうな日を狙って歩いてみてください。

 

山上のビアガーデン「高尾山ビアマウント」へ

「高尾山ビアマウント」からの夜景。都市部に近い山、ならではの光景

そして、汗だくになって最後に寄りたいのが「高尾山ビアマウント」。食べ放題・飲み放題の料金設定もお手頃で、大都会の摩天楼の夜景を見ながらの山行打ち上げは最高の贅沢。

日程を合わせれば、高尾の山の上から、八王子の花火も観えるかも知れません。低山とはいえ、花火を上から見ることができますし、山上から花火を見るなんて、秋、冬、春の高尾山では味わえないものです。

八王子の打ち上げ花火が上から見えることも

注意しなくてはならないのは、週末のビアマウント、時間帯によっては長蛇の列で入場待ちになるかも知れないことです。もちろんアルコールを飲んだ場合は、下山はケーブルカーを利用してください。

酔いを冷ましたいといって40分かけて1号路を下ることもできますが、登山道は暗くなっていますし、アルコールを摂取していれば、転倒事故、ケガのリスクは高まります。また夜間の救助となれば、多大な迷惑となるので避けましょう。ご自分の酔いの程度を判断してください。

なお、ビアマウントに寄らない場合は、高尾山山頂から稲荷山コースか6号路の琵琶滝コースを下れば、直射日光を避けて下山できます。季節の花の変化も、動物の足跡も期待できる夏の高尾山をぜひ楽しんでいただきたいです。

 

熟達者向け! 高尾山ナイトハイク

※以下の内容は、ベテラン、熟達者に向けた内容ですので、初心者の方には向きません。

一層厳かな雰囲気になる夜の高尾山薬王院

ヘッドランプを付けて夕方から夜の高尾山を歩く、というのも、夏の高尾山の楽しみ方といえます。 午後から登り、高尾山山頂で、落日の富士山を見た後は、星空を鑑賞。

パワースポットでもある高尾山薬王院の厳かな雰囲気を味わうのも妙味がありますし、境内南側からは横浜方面の美しい夜景が見られます。 これも日程を合わせれば、東京スカイツリーの真上に満月、なんて景色にも出会えるでしょう。

東京スカイツリーの真上に満月。日を合わせればこんな光景も高尾山から見える

高尾山にはムササビも生息しているので、ムササビ観察も可能です。ムササビは、日没後30分くらいの間に、巣穴から出て採食行動を取ります。暗い登山道を歩いていて「ぐるるる…」という鳴き声が聞こえたら、ムササビが近くにいるかもしれませんし、頭上を飛翔しているかもしれません。 ただし、ムササビにヘッドライトの光は強すぎます。ライトやカメラのフラッシュを向けないように気をつけましょう。

花火や夜景も撮影できる、そんなバラエティーに富んだ高尾山のナイトハイクに挑戦してはいかがでしょうか。

 

昔からあった「カモシカ山行」。ナイトハイクの注意事項

なお、昔から「カモシカ山行」と呼ばれる、夜間登山のトレーニング方法はあったので、高尾山から、足を伸ばして陣馬山への稜線を夜間に歩いている登山者は意外と多いのです。特に城山や景信山からの夜景は見事といえます。

「カモシカ山行」は登山の訓練のひとつで、山岳会などで行われてきた(写真は景信山からの夜景)

ただし、日中の登山以上に、ナイトハイクは危険がいっぱいです。日中行動しないタヌキ、イノシシ、アナグマなどの動物も盛んに活動しています。万が一、事故に遭っても、夜間の救助は日中とは雲泥の差があります。単独でナイトハイクというのは避けて、必ず複数人で計画してください。 どこの山でも同じですが、登山者として節度ある行動が求められます。

真夏の低山で見られる花のひとつヤマユリ。高尾山周辺でもよく見られる
※真夏の低山歩き、水分補給、塩分補給をしっかり行い、熱中症など体調不良に陥らないよう最善の注意を払いましょう。
 
『高尾山と中央線沿線の山』

高尾山と中央線沿線の山々の徹底コースガイド決定版! 南に丹沢山塊、北に奥多摩というメジャーエリアに挟まれた中央線沿線の山々は、日本百名山のような有名山岳こそ含まれないものの、首都圏の登山者から四季を通じて親しまれている。鉄道駅から直接登ることができる身近さから、根強い人気がある。著者が140日以上に渡って実踏調査したコース案内と、写真集のような美しい山岳写真でまとめられたガイドブック。富士山展望の山も多数収録。

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プロフィール

渡邉 明博

1957年、東京都生まれ。中学時代に写真を始め、1976年から商業カメラマンとして写真を仕事とする傍ら、「山上から富士山を撮る」をテーマに山岳写真家としても確立。「低山フォトグラファー」として中央線沿線の低山にくまなく通い四季折々の風景を撮影。のべ150日に渡る実踏取材を元に『高尾山と中央線沿線の山』(山と溪谷社)を2016年に上梓。白籏史朗賞日本山岳写真コンテスト入選ほか受賞歴多数。山岳写真ASA会長。(写真=水谷和政)

低山フォトグラファーの気ままな山歩き

冬場はもちろん、真夏であっても、低山には見どころがたくさんあります。 ガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者で、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さんに、季節季節のおすすめ低山情報を聞きました。

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