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「日本一遠い百名山」、北海道・幌尻岳。チロロ川沿いのルートから遙かなる山頂へ――

今がいい山、棚からひとつかみ
ガイド・記録 2018年08月14日

登山適期は夏~秋のみとなる北海道・幌尻岳。「日本一遠い百名山」とも言われる山は、幌尻山荘から登るのが一般的だが、条件が整えば難関のチロロ川ルートから登るのも興味深い。

 

幌尻岳の稜線から見た七つ沼カールと戸蔦別岳(写真=谷水 亨)

 

日本百名山全山登頂を成し遂げた人たちに「最もたいへんだった山」について聞くと、多くの人が北海道・幌尻岳を挙げる。

難易度の高さに加え、短い登山適期、幌尻山荘の予約の難しさ、長い林道歩きや渡渉の繰り返し、そして何よりアクセスの難しさもある。さまざまな面から総合的に判断すると、「日本一遠い百名山」や「百名山最難関」という言葉は説得力がある。

幌尻岳に登るのに、最も一般的なのは西側・額平川から幌尻山荘経由のルートだが、ほかにも南東側のチロロ川からのコースや、北側からの新冠川コースなどの難易度の高いコースもある。今回は、登山ガイドの谷水亨氏が2016年に行ったチロロ川からのコースのレポートを紹介する。

なお、本コースは健脚向きのコースで整備も充分ではない。体力に自信のない人、初心者、初級者には向かないことを留意しておきたい。

北戸蔦別岳登山口(チロロ川二岐沢ゲート)から、北戸蔦別岳~戸蔦別岳~幌尻岳へと進む

 

前回の撤退を教訓に万全の体調と準備で向かう

8月6日~7日、幌尻岳をチロロ林道側から登りたいという同行者と、2度目の挑戦を楽しんできました。遡ること2年前、初めてこのルートにのぞんだときは悪天候と体調不良で北戸蔦別岳で引き返しました。

そのときの様子も、週刊ヤマケイで紹介しているので、振り返ってみると――

9月19日、千呂露川沿いの林道を車を走らせ、登山口に着くと、3,5kmの林道を取水ダムまで歩きます。ここから千呂露川1.4kmの間に十数回渡渉(飛石)し、標高1000mまで登り詰めます。さらに樹林帯の急勾配を800m登ってヌカビラ岳の稜線に出ますが、途中から雨とミゾレに打たれ体が冷えていきました。

千呂露川(チロロ)源流部の「二つ沢」の滝を見つめる(写真=谷水 亨)

エスケープ箇所も避難小屋もない日高山脈では、下山には時間がかかりすぎるため、その先のスペースの空いているところでテント泊を選びました。

服を着替え、翌朝に備えます。しかし、天候は回復することなく、翌朝の出発時間になっても雨が止みません。計画を徐々に縮小せざるを得なくなり、最終的には北戸蔦別岳(1912m)のピークを踏んだだけで下山しました。

前日の予報では午後から晴れだったにも関わらず、当日は日高地方に大雨警報が出されていたようです。途中、雲の状態を見て「撤退」も頭をよぎりましたが、天気予報を信じ強行してしまいました。反省と教訓だらけの登山となりました。

9月中旬、ヌカビラ岳から北戸蔦別岳の稜線は、すでに草紅葉に彩られていた(写真=谷水 亨)

 

――こうレポートしていました。今回は天気予報もよく、万全の体勢で望みます。

8月6日、国道274号線日高峠を下りると、さらに千呂露川沿いに車を8.2km走らせて北戸蔦別岳登山口に到着。10台ほどの駐車スペースは、すでに満車状態でした。

さっそくゲートをくぐり、二岐沢沿いに3.2kmの林道歩きを始めます。取水場(登山口)から本格的な登山道となり、二ノ沢を何度か飛び石で徒渉し、標高1227mからは沢を離れ尾根に向かって急坂を登ります。テント泊フル装備での急登はきつかったですが、途中「トッタの泉」で水を確保できるのは助かります。

標高差650mの急坂をギンリョウソウやアリドオシランに癒されながら登りきると、ヌカビラ岳に到着。ここからは右手に幌尻岳を眺めながら、トカチフウロ、ウサギギク、ミヤマリンドウ、エゾツツジ、トモエシオガマ、ミヤマアケボノソウ、ミヤマキンボウケなどのお花畑の稜線を歩きます。計4時間30分で北戸蔦別岳のテン場に到着。

チングルマと幌尻(ぽろしり)岳(右)戸蔦別(とったべつ)岳(左)(写真=谷水 亨)

 

計画では本日はここまでで、テントを張って夕陽を見に5分ほど登って北戸蔦別岳に行くだけの予定でした。しかし早いペースで歩けたのと、涼しいうちに登りたいということで出発時間を早めたことから、ここから5時間で幌尻岳までピストンできると判断し、テントを後にして出発しました。

 

予想以上に軽快な足取りで幌尻岳に到達。 満天の日高山脈を堪能!

テントを後にして出発した私たちは北戸蔦別岳で止まることなく、標高差100mほどのアップダウンを2回繰り返して戸蔦別岳に到着しました。ここからの絶景は格別です。七ッ沼カールに幌尻岳、振り返れば北戸蔦別岳に、ピパイロ岳・伏美岳へと十勝側に続く縦走路とその峰々、そして先日登ったエサオマントッタベツ岳とカムイエクウチカウシ山までの稜線などなどです。

ここからは200m下って300mの登り返しを行うと、幌尻岳山頂。予定通り2時間36分で到着しました。山頂では日高山脈南部の風景を堪能しながら20分ほど休憩した後、来た道を戻ります。

幌尻岳(右)を後にし北戸蔦別岳に同行者と共に戻る(写真=谷水 亨)

 

北戸蔦別岳で夕陽を見るため、帰り道は絶景やユキバヒゴダイやミヤマナデシコの群生を撮影しながらのんびり戻りました。北戸蔦別岳山頂で夕焼けを堪能した後、テン場に戻って夕食を済ませます。

夜、友達の「星がきれい!」との声から星空の撮影会が始まり、満点の星空に幌尻岳から日高山脈と並行して天の川が伸びているようすは格別な絶景でした。

翌朝、朝日を見に北戸蔦別岳に再登頂。十勝で親しまれている伏美岳(1792m)から朝日がのぼり、遠方には雌阿寒岳が浮き出ています。1時間ほど、朝日に照らされた戸蔦別岳や幌尻岳も堪能した後、テントに戻って朝食。この日は下山だけなので実にのんびり。

北戸蔦別岳より伏美岳からのぼる朝日。遠方には雌阿寒岳が見える(写真=谷水 亨)

快晴のため、下山するには惜しい気もしますが、昨日からの満足感を胸にしまって、無事に下山しました。

ガイド 記録・ルポ
教えてくれた人

谷水 亨

北海道富良野市生まれの富良野育ち。サラリーマン生活の傍ら、登山ガイド・海外添乗員・列車運転士等の資格を持つ異色の登山家。

子育てが終わった頃から休暇の大半を利用して春夏秋冬を問わず北海道の山々を年間50座ほど登って楽しんでいる。

最近は、近場の日高山脈を楽しむ他、大雪山国立公園パークボランティアに所属し公園内の自然保護活動にも活動の範囲を広げている。

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