実はよくある登山靴のトラブル。登山ガイドに教わる、靴底剥がれの対処法&役立つグッズ

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登山愛好者として身につけておきたい知識、技術を教えてもらう「大人のワンゲル部」。今回は、登山ガイドの上村博道さんに、山の中で登山靴のソールが剥がれてしまった時の対処法、携帯しておきたいアイテムを教えてもらった。上村ガイドの実体験から学んだ知恵を、ぜひ覚えておいてほしい。

 

2日間、靴底を離さずに保ち続けてくれた○○テープ

数年前に中央アルプスへ縦走に行った際に、靴底が剥がれてしまったときの経験から得たことを今回はお話しします。

その日、歩き出して半日過ぎたあたりで靴底が少し剥がれていることに気が付きました。今思えば、一年以上使っていない軽登山靴を無警戒に履いてきてしまったのは迂闊だったのですが…。

これは何か応急処置が必要だと思い、まず、ガムテープより粘着強度があるパワーテープを巻いてみましたが、水に濡れると粘着力が弱くなり、しばらく履いているうちに役に立たなくなってしまいました。

次に、針金を巻いてみましたが、硬い革靴ならいざ知らず、ナイロン製の柔らかい軽登山靴では、しっかり固定することが出来ませんでした。強く締めようとすると、足が痛くなり、思うようにいきません。

仕方がないのでそのまま歩いていると、剥がれている面積がどんどん大きくなるのがわかりました。靴本体と靴底が分離してしまうのも時間の問題となった時、ファーストエイドキットの中に、伸縮性のあるテーピング(キネシオロジーテープ)が入っていることを思い出しました。ダメでもともとと思って巻いてみたところ、残りの2日間、キネシオロジーテープは靴底を離さずに保ち続けてくれたのです。

 

靴底が剥がれるかは、使用頻度にかかわらない

一般的な登山靴は、表面部分のアッパー、靴底部分のアウトソール、その2つのパーツの間にあって、クッションの役割をしているミッドソールに別れています。ミッドソールは“ポリウレタン”素材が使われていることが多く、この“ポリウレタン”とソールを貼り付けている“接着剤”が、経年劣化しやすい箇所です。

そのため、長期間使用していない登山靴は、外見は綺麗に見えても、ソール部分が劣化していて、靴底が剥がれる可能性があります。家を出る時は気がつかず、山中で靴底が剥がれてしまうと、場所や状況によっては、困るだけでは済みません。さらに、今回の経験で知ったのは、ソール部分の経年劣化は両足同時に進行していて、剥がれるのも両足同時ということです。

土踏まずを中心に巻くようにしている

 

キネシオロジーテープのおススメの巻き方。泊りの山行では、ひと工夫も

こうした経験から、山へ行く際はキネシオロジーテープを持っていくようにしています。キネシオロジーテープは汗や濡れに対応した粘着力があり、手では引きちぎれない強度があるため、靴底に巻いても耐久力は十分ありました。また、ドラッグストアや場所によってはコンビニでも買うことができるほど手軽で、持ち運びには軽量。本来の目的である関節を痛めた時の救急用としても使えるので、山に携帯するのに、もってこいのアイテムです。

使い方は簡単で、土踏まずを主体に靴本体と、靴底が離れないように巻きます(上の写真参考)。歩いていると靴底がつま先の方へずれて歩きづらさもありますが、そこは応急処置だと割り切って我慢しましょう。あまり広範囲に巻き過ぎると、靴底のグリップを低下させてしまうので、靴底のグリップを生かす、この巻き方がおススメです。

靴底のグリップを生かしたいので、あまり広範囲に巻かない

宿泊をともなう登山の場合は、キネシオロジーテープを巻いた状態で脱いだり履いたりしたいので、つま先から甲のあたりまで靴紐を緩めて、脱着ができることを確認してからテープを巻きます。このひと工夫をすると、山小屋などで靴を脱ぐ際に、キネシオロジーテープを外さなくて済みます。山ではキネシオロジーテープ自体が貴重品なので、強度は残しつつ、翌日もそのまま使用します。僕の経験からすると、片足で1.5mくらいは使うので、新品のキネシオロジーテープひと巻き(6m)で2足分対応できる計算です。

定期的に靴のメンテナンスをして、山中で靴底がとれるようなことがなければ、それが良いでしょう。しかし、もしもの緊急事態に備えて、少なくともパーティにひと巻きのキネシオロジーテープを持っておくことをおススメします。

プロフィール

上村博道

気象予報士の資格をもつ登山ガイド。安全登山の指導を行っている。 国内では北海道・積雪期日高山脈全山縦走、積雪期知床半島縦走など積雪期の長期山行を行う。海外では、エベレスト8848m、デナリ 6194m、アコンカグア6960mに登頂。
⇒BLOG:ヒロい自然の中で・・・

太田昭彦部長の「大人のワンゲル部」―リーダーとしての力を身につけよう―

登山初心者や、すでに山登りをしているが登山についての基本的な知識を学ぶ機会のない方を対象に、自分の力で安心して山登りが出来るようになって欲しいとの願いを込めて、登山の知識や技術を学ぶ“大人のワンゲル部”を創部しました。メンバーは部長に太田昭彦。コーチに上村博道&絵美という経験豊富な登山ガイドです。この機会にあなたも知識を身に付け、ぜひ自立した登山者の仲間入りをして頂ければ幸いです。(部長・太田昭彦)

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