自然が生み出した奇岩群、世界遺産トルコ・カッパドキアを歩く: トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(6)

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トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る連載「世界のトレイルを巡る旅」。第6回目は、前回に引き続きトルコが舞台。自然の驚異ともいえる独特の奇岩群で有名な、世界遺産カッパドキアでのトレッキングの様子をお伝えする。

カッパドキア

 

自然が作り出した奇岩が続く「ピジョンバレー」

2016年6月11日(世界一周60日目)

トルコに詳しくなくとも、赤茶色の奇岩群の上空にたくさんの気球が浮かぶカッパドキアの風景をどこかで見たことがあるだろう。インパクトのあるこの景色を目当てに、たくさんの観光客が訪れる。山ではないのであまりトレッキングのイメージは無いかもしれないが、ここには気軽に歩けるルートがたくさんある。

カッパドキア到着初日、宿に荷物を置いて早々に歩き始めた。カッパドキアの中心となる街、ギョレメのすぐ裏手からトレイルが伸びている。というより、ギョレメの街自体がカッパドキア独特の地形の中にあり、街とトレイルの境目がないと言ったほうが正しいのかもしれない。

奇岩群と寄り添うギョレメの街

 

谷底につけられたトレイルの両脇には、カッパドキア特有の不思議な形をした岩が並ぶ。しばらく行くと、谷底をそのまま進むトレイルや、斜面を登り少し高い位置を進むトレイルなど、複数の道に分岐していくが、どの道も一つの谷の中にあるため、全く違う方向に迷い込んでしまうことはない。

谷底から複数のトレイルが走っている

 

よく見ると、自然が作り出した奇岩に人が作り出した小さな穴がたくさんある。これは、かつて鳩の糞を肥料として使うために壁に穴を開けて鳩の巣を作り、多くの鳩を飼っていた名残りだとか。このルートの名称「ピジョンバレー」もこれに由来する。

ところどころに空いている小さな穴が鳩の巣の跡

 

やがて、ジブリ作品に出てきそうな独特の風貌の岩山、ウチヒサル城にたどり着く。

ウチヒサル城の上からは360度の眺望でカッパドキアの風景が楽しめる。どちらを向いても絶景だが、ギョレメ方面は力強さを感じる渓谷、反対方面は緑が多く穏やかな渓谷で、異なる風景が楽しめる。

独特の風貌の岩山、ウチヒサル城

 

そして、遠くにはエルジェス山が見えた。カッパドキアの独特の地形は、はるか昔に繰り返されたエルジェス山の噴火活動によって形成されている。火山灰や溶岩が何層にも堆積し、長い年月をかけて侵食を繰り返した結果、今のカッパドキアの姿があるのだという。

 

ホイップクリームのような可愛らしい岩が続く「ホワイトバレー」

2016年6月12日(世界一周61日目)

トルコは朝食が豪華だ。僕らが泊まった洞窟ホテル風の安宿でもビュッフェ式の朝食が付いていて、トレッキングに出かける前にモリモリ食べた。

トルコの典型的な朝食メニューは、数種類のパンとチーズ、キュウリやトマトのサラダ、オリーブ、ハム・ソーセージ、卵料理、ヨーグルト、フルーツ、紅茶といったところだが、豪華なところはさらに何品も付く。

トルコでは安宿でもしっかりとした朝食を食べられた

 

朝食の時間は朝8時から10時と比較的遅い時間に用意される。トレッキングに出かけることを考えると、もう少し早いとありがたい気もするが、大概のルートは2~3時間で歩けるものが多いのであまり問題はなかった。優雅に朝食を楽しんでから歩くべし、ということだろうか。

この日はホワイトバレーと呼ばれるルートを歩いた。ホワイトバレーはその名の通り、白い砂岩で出来た谷だ。形もどこかホイップクリームのようで可愛らしい。

ホイップクリームのようなホワイトバレー

 

谷を半分ほど進むと、キノコの形状をした岩がたくさん見えてくる。近づいてみると仰ぎ見るほど大きく、力強い。特に、歩いてしか来られない谷の中に林立する光景は圧巻だ。カッパドキアの奇岩の代表格であるキノコ岩は幾つかのエリアで見ることができるが、それを自分の足で歩いて見に行けるのがこのトレッキングルートの一番のポイントだろう。

大きく力強いキノコ岩

 

 

夕陽が映えるサンセットポイント「ローズバレー」

2016年6月13日(世界一周62日目)

カッパドキアの奇岩群は夕暮れが似合う。白やピンクの岩肌にオレンジ色の夕陽が映えるためだ。カッパドキア滞在最終日となったこの日、夕暮れ時を狙ってローズバレーを訪れた。

ローズバレーはギョレメの街の北東方向にあり、サンセットポイントとして有名だ。ここは谷自体の規模が大きく、ビューポイントが多いことに加えて洞窟の教会も幾つかある。それらを繋ぐ複数のルートが縦横に走っているため、道は少し複雑だ。

夕陽に染まるトレイルを駆け下りていく

 

谷底を歩き、洞窟トンネルを抜け、迷路のように入り組んだトレイルを、探検家になった気分で進む。小高い丘を駆け上がると、傾き始めた夕陽が一帯を染めていた。あまりの美しさに息を飲む。まるで夢の世界に迷い込んでしまった気分だった。

洞窟の教会

幻想的な世界に息を飲む

 

これでアジアでのトレッキングは終了。次はいよいよヨーロッパのトレイルだ。

 

奇岩群の異世界に入り込めるショートトレイル

カッパドキアは、トルコを代表する観光地・景勝地として訪れる人がほとんどだと思いますが、旅行と組みわせて気軽にトレッキングを楽しむにも適した場所です。2~3時間で歩けるコースが中心で、大きなアップダウンもなく、特別な装備も必要としないためです。

大半の人がバスツアーなどでカッパドキアの名所を巡るため(実際、効率よく回るためにはバスツアーが適切)、これだけ有名な世界遺産であるにもかかわらず、トレッキングコースには人が少なく、奇岩群に囲まれた絶景を独り占めしながら歩けます。

カッパドキアを訪れた際は、半日でも良いのでぜひ自分の足で歩くトレッキングを組み入れることをオススメします。

トルコ・カッパドキアでのトレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備については、トレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

カッパドキアを作り出したエルジェス山

 

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
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トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

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