秋田県・秣岳、岩手県・南本内岳――。混雑を少しだけ避けて東北の美しい紅葉を探す山旅へ

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山の秋は短く、紅葉の見頃は1~2週間。その時期に一挙に人が押し寄せるので、「名所」と呼ばれる場所は混み合う。そんな混雑を避けて最高の紅葉を楽しめる場所を、紅葉の名所のそばから探してみよう。

 

紅葉シーズンを目前に控え、紅葉狩り登山の計画を立てている読者も多いと思う。北アルプスの涸沢など、有名な紅葉スポットに注目の目が集まるが、人気の紅葉スポットはその分混雑が予想される。静かな山を訪れたい人にとっては、この時期の登山は少し閉口してしまうかもしれない。

しかし、有名な紅葉スポットから、ほんの少し視線をずらすだけで、有名な紅葉スポットに勝るとも劣らない景色を楽しめ、かつ静かで落ち着いた山旅ができる場合もある。

そんなとっておきの紅葉スポットをピックアップして紹介する。

 

「日本一の紅葉」の栗駒山に隣接する秣岳

天狗平の西側から見た栗駒山の紅葉(写真=曽根田 卓)


秋田県・宮城県・岩手県の三県にまたがる栗駒山。近年、栗駒山の紅葉は秋のお彼岸のころに見ごろを迎えます。紅葉期の栗駒山は、日本一の紅葉とも称される絶景を見に多くの登山者が訪れます。登山道の細い場所ではすれ違いのために渋滞することも多く、時間に余裕を持った行動が必要です。

南側の小岩峰から見た秣岳(写真=曽根田 卓)


そのすぐ西隣にある秣岳(まぐさだけ)は栗駒岳の喧騒から離れることができます。2017年9月24日は、須川温泉を起点に、栗駒山の西側に位置する秣(まぐさ)岳を周回するルートを歩いてきました。

秣岳への道は天馬尾根コースともいわれ、天狗平から先は栗駒山本峰のメインルートから外れるので、静かな山歩きが楽しめます。登山道の一部は泥濘の場所がありますが、秣岳周辺はしろがね湿原が広がり、灌木の紅葉と湿原の草紅葉が一度に楽しめます。

展望岩頭から秣岳を望む(写真=曽根田 卓)


下山後は車道歩きになりますが、途中にあるシラタマノキ湿原やイワカガミ湿原に立ち寄るのもよいでしょう。

「栗駒のモン・サン・ミッシェル」と称される、しろがね湿原(写真=曽根田 卓)


このときは紅葉は山頂付近が見ごろですが、須川温泉付近まで紅葉前線が降りてくる2週間後まで紅葉狩りが楽しめます。

須川温泉から天馬尾根コースを通り秣岳を周回するコース ⇒詳細地図はこちら

 

灌木の紅葉が見事な焼石連峰の寂峰、南本内岳

岩手県の南部、秋田県鏡にほど近い位置に連なる焼石連峰。花の百名山や二百名山にも数えられ、美しいお花畑の広がる山としても、紅葉が美しい山としても知られる山です。

草紅葉が美しいお花畑の湿原(写真=曽根田 卓)


その焼石連峰のいちばん北側に位置するのが南本内岳(みなみほんないだけ)です。この山に西和賀町側から登る場合、約10kmもある未舗装の林道走行を余儀なくされるため、登山者が極端に少なく、山の奥深さと相まって、ほとんど誰にも会わない貸し切りの登山が楽しめます。

尾根コースから南本内岳を見上げる(写真=曽根田 卓)


ブナの原生林を抜けると、お花畑と称する湿原が現れます。夏場は様々な高山植物が咲き乱れる別天地です。しかし南本内岳を訪れるベストシーズンは秋の紅葉期です。お花畑から尾根コースの周回路は灌木地帯となっていて、焼石連峰でも有数の紅葉が見られるスポットとなっています。

南本内川源頭の色鮮やかな紅葉(写真=曽根田 卓)


この山に訪れた2017年10月1日は、午前中は霧雨が降るあいにくの天気でしたが、お昼過ぎから一気に晴れ間が広がり、南本内岳一帯に広がる紅葉の錦絵を堪能できました。

>尾根コースから色鮮やかな西側の紅葉を望む(写真=曽根田 卓)


北東北の紅葉は次第にブナ帯の黄葉へ移り変わっていきます。高山の雪の便りもまもなく聞けるでしょう。

西和賀町側から南本内岳を登るコース ⇒詳細地図はこちら

プロフィール

曽根田 卓

1958年仙台市生まれ。山岳写真集団仙台所属。東北の静かな山をこよなく愛している。共著に『分県登山ガイド3 宮城県の山』、「季節の山歩き」(山と渓谷社)のガイド記事執筆。『山と高原地図 栗駒・焼石』(昭文社)の調査執筆担当。
⇒ (続)東北の山遊び 

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