紅葉シーズン目前、安全に楽しむために知っておくべきこと 島崎三歩の「山岳通信」 第126号&秋の特別号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2018年9月20日に配信された第126号および秋の特別号を紹介。紅葉シーズンを目前に控え、秋の山岳地での安全登山について取り上げている。また、過去最大の遭難者数となった2018年の夏山の遭難状況についても説明してる。

 

9月20日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第126号では、9月6日~9日に起きた2件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月6日、北アルプス有明山で、65歳の男性が単独で有明山に入山し道に迷い行方不明となる山岳遭難が発生。翌朝より県警山岳救助隊および北アルプス南部地区遭対協が救助活動に入っている。

  • 9月9日、中央アルプス将棊頭山で、64歳の男性が西駒山荘から桂木場登山口に向けて下山中に、つまづいて転倒・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

 

山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

9月2週は2件の遭難が発生しました。単独登山は、ルート、天候などすべてを一人で判断しなくてはならず、高度な知識や技術が必要となります。
さらに、万が一の際に救助要請ができないことがありますので、なるべく複数人で入山してください。また、こまめに地図で現在地を確認し、道迷いを未然に防ぎましょう。

 

秋山を安全に楽しむために、これだけは知っておこう!

「島崎三歩の山岳通信」では長野県の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えし、「安全登山」のための情報提供をしています。今回は、紅葉シーズンを目前に控えた「特別号」として、秋の山岳の注意情報をお伝えします。

天気の急変、降雪に要注意!

秋山は夏山と違い、昼間暖かくても、夜は気温が氷点下となることもあり、北アルプスなどの高山では氷が張ったり、雨が雪に変わることも珍しくありません。
低体温症の危険性が高まるため、悪天候が予想される場合は行動を控えるとともに、必ず防寒対策をしましょう。
 

山小屋の開設期間の確認を!

9月下旬から、山小屋の営業が終了するところが多くあります。山小屋に到着したら、「営業が終了していて泊まれなかった」ということがないよう、登山を計画する段階で、宿泊する山小屋の開設期間を確認しましょう。
また、水場が涸れている場合があるので飲料水の確保も必要です。
 

60歳以上の高齢者による遭難が多発!

昨年の9月から11月の3か月間に山岳遭難は70件発生し、遭難者75 人のうち、60歳以上の高年齢層は43人で遭難者の約6割(57.3%)を占めています。
 

体力と技術に見合った山を選びましょう!

「昔、登れたコースだから大丈夫だろう」と、自分の体力や経験を過信した結果、転倒や、疲労により行動不能となるケースが見られます。
長野県山岳遭難防止対策協会で作成した「信州山のグレーディング」を参考にするなど、体力と技術に見合った山を選びましょう。
 

きのこ採りは複数人で入山を!

昨年の9月から11 月の間、きのこ採りでの遭難は11 件発生し、遭難者12 人のうち、3人が死亡、3人が負傷しています。遭難者12 人は、全て60 歳以上の高年齢層です。
また、道迷いによる遭難が多発していますので、複数人で入山し、お互いに目が届く範囲内で行動するとともに、必ず、携帯電話を携行しましょう。

長野県では条例で登山計画書の提出が義務付けられています!

平成28 年7 月から、長野県内の指定登山道を登山する場合は、長野県知事宛に「登山計画書」の提出が義務付けられています。提出の方法は、専用のインターネットサイト、FAX(03-6862-5035)、ながの電子申請、登山口ポストがあります。また、作成した登山計画書は、家族や友人にも渡しておきましょう。

 

きのこ採りで入山される皆さんへ

1.入山場所と行動予定は必ず家族等に伝えましょう

家族から捜索願が出されても、捜索場所が分からなければ捜索が非常に困難となることから、家族には、入山場所と行動予定を必ず伝えてから入山しましょう。

2.非常時に備え、携帯電話や雨具は持って行きましょう。

携帯電話は、非常時の重要な救助要請の手段となり、雨具は雨よけだけでなく防寒衣にもなりますので、必ず携行して入山しましょう。

3.急斜面での滑落に注意しましょう。

年齢を重ねるごとに、筋力やバランス力は低下しており、急斜面等で滑落する危険性が高まります。慣れている場所であっても足元に十分注意し、危険な斜面への立入りは避けましょう。

4.単独での入山は避けましょう。

単独での入山は、方向を見失い下山できなくなったり、万が一遭難した場合に救助の要請ができない場合があるので、できるだけ複数で入山しましょう。

5.熊などの野生動物に注意しましょう。

山中で、熊や猪等に遭遇し、襲われて負傷することがあります。野生動物からの危害防止のために、鈴やラジオ等音の出るものを携行し、自分の存在を知らせることが被害防止につながります。

秋山(9 月~11 月)の山岳情報は、長野県警ホームページもご確認ください。

 

平成30年、長野県の夏山の山岳遭難状況(7 月~8 月)

長野県ではお盆を中心に山岳遭難が多発し、8 月第3 週(13 日~19 日)は週間で過去最多の25 件発生しました。また、夏山遭難発生状況は平成24年以降の記録では、100件を上回って過去最多の遭難者数となりました(長野県警山岳安全対策課発表)。

うち約7割(83件70.9%)が北アルプスでの遭難となっています。また、転倒と滑落・転落が約6割(67件57.3%)、病気と疲労・凍死傷が約3割(32件27.4%)で、道迷いが7件6.0%でした。

以下に、山岳安全対策課からのワンポイントアドバイスを併せて記載します。

ワンポイントアドバイス

一般的に北アルプス等の登山は、標高の低い里山の日帰り登山と比べると標高差や距離などが2 倍から3 倍の行程なります。このようなコースを余裕を持って安全に踏破するためには、相応の体力と事前準備が必要です。登山はマラソンなどの持久系スポーツと同じくらい負荷の高い運動です。

特に北アルプスは痩せた稜線や尾根が多いことから、行動中は気を抜くことなく慎重な行動を心掛けてください。

なお、行方不明は4 件とも単独登山です。単独の場合、万が一の際に、救助要請ができないリスクがあることに留意するとともに、必ず登山計画書を作成、提出し、家族や同僚等にも渡しておいてください。

転・滑落、転倒による遭難は、疲労や集中力の低下等により発生しやすくなります。登山前日には、十分な睡眠をとり、登山中は、こまめに休憩や水分補給をしてください。

また、転・滑落、転倒のほとんどは、下山時に発生しています。原因としては、バランスを崩したり、石につまずいたり、登山道上で足を滑らせたことによるもので、その背景には疲労による筋力や集中力の低下が関係していると思われます。下山こそ慎重に慌てずに行動しましょう。

発病や疲労遭難は、体調管理や行動中の栄養・水分補給を改善することで、予防ができるケースが多く見受けられます。特に酷暑期は日常生活で疲労が蓄積していることが多いため、入山前の体調管理をしっかりと行い、行動中は計画的な補給を心がけましょう。

今年の夏山は山の上でも高温が続き、日差しの強い中で長時間行動をすれば、体力は消耗し、体調を崩しやすくなりました。早朝の涼しい時間帯に行動を開始し、日差しの強い日中の長時間の行動を避けるとともに、こまめな水分補給と休息を心掛けてください。
また、好天が続き降雨がほとんどないため、登山道上は乾燥し滑りやすくなっていました。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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