軽い着心地で透湿性が高いと評判のレインウェアを、雨の岩菅山でテスト

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今月のPICK UP ミレー/ティフォン50000ストレッチジャケット&ティフォン50000ストレッチパンツ

価格:ジャケット 26,000円(税別)/ パンツ 19,000円(税別)
サイズ:ジャケット、パンツとも XS、S、M、L、XL
重量:ジャケット 304g  / パンツ228g(メーカー発表値)

※同じ型のウィメンズモデルもある
※現在は秋冬モデルの「ティフォンウォーム」も発売中

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雨の多かった9月。50000g/㎡/24Hの透湿性は? 登山前に仕様をチェック

秋は雨が多い時期だ。1年でいちばん雨が降るのは梅雨の時期だと思われがちだが、大半の年は6~7月よりも9~10月のほうが降雨量は多い。東京を例にとれば、ここ5年のうち3年は、いちばん降雨量が多かった月は10月なのだ。その理由は、秋雨前線が列島にかかっている時期が長いことと、海水温が高いままで台風の発生がまだ収まらない時期だからである。

今回ピックアップするのは、ミレーのレインウェア「ティフォン50000ストレッチジャケット」と「ティフォン50000ストレッチパンツ」。上下がセパレートで販売されているので、自分の体型に合わせやすい。

ちなみに僕は身長が177㎝、体重69kgほど。体型の特徴をいえば、上半身はわりと普通だが、足は少々長めで、ふくらはぎや太ももはかなり太い。要するに、下半身がっちりタイプである。今回はテストということもあり、やはり基本となる身長を基準にして合わせ、上下ともLサイズを選んだ。

「50000」とは、独自開発した「ドライエッジティフォン」という透湿防水メンブレンが、24時間で50000g/㎡の透湿性を発揮することからの数値だ。耐水圧は20000mmと、こちらもすばらしい数値となっている。

実際に着用した状態は、以下の写真になる。

見た感じは、過不足ないフィット感だ。下に着ているのは、半袖Tシャツとショートパンツ&タイツであり、あまり着こんではいない。その結果、ジャケットの袖がいくらか弛んでいるが、これくらいの余裕がないと腕を動かしたときにストレスを感じるだろう。

それに対し、パンツはまさにジャストサイズ。これが短いと足を動かしたときに裾が上がり、水が浸入しやすくなるが、だからといって長すぎると裾がもたれるばかりか引っ掛かりやすくなり、履き心地が著しく損なわれる。ジャケット以上にレインパンツはサイズ選びが難しい。

レインウェアの要点であるフード部分をチェックしよう。

ジャケットのフードは二重構造だ。張りのある素材で作られたツバの部分の内側にも別の生地があり、伸縮性の黒いテープでしっかりと頭部にフィットするようになっている。また、後頭部にはコードが取り付けられ、これを引くと頭部が水平方向に絞られ、ますますフィット感が上昇する。

一方で、正面のあごの下あたりにも2つのコードがあり、こちらはフードを垂直方向に絞り、顔のまわりから隙間をなくしてくれるものだ。これらのコードでフードを微調整すれば、頭部の防水、防風性は非常に高くなるだろう。

しかし、温暖な時期はコードを絞りすぎると空気の流れが完全に遮断され、いくら透湿性の生地でも蒸れて暑くなる。その場合はコードを絞らず、緩やかに着用すればいい。

このジャケットのコード類はどれも簡単に手が延ばせる位置にあり、調整しやすい。フードの形状にはかなり余裕があり、ジャストすぎないサイズのものを手に入れておけば、ヘルメットを着用したときもそのまま上にかぶることができる。

次はジャケットのポケットを見てみたい。使用されているファスナーは止水タイプで、ポケットの裏側はメッシュ素材だ。

ファスナーを締めておけば雨水が入りにくく、空けておけばベンチレーターとして機能し、内部の湿気を空気とともに流し出す効果が期待できる。ポケットはかなり縦に長く、折りたたんだ地図やグローブも入れやすい。

 

ストレッチ性は? 脱ぎ穿きは? 続いてパンツも細かくチェック

ここであらかじめ説明しておくが、今年は夏から秋にかけて天候が不順で、大雨すぎて撮影困難だったり、反対に思いのほか雨が降らなかったりして、なかなかすんなりとはテストできなかった。そのためにこのレインウェアのテストと撮影は、何回にも分けて行なわれており、今回の写真には数回分のものが混ぜて使われている。だから、これから使用される写真の中には、先ほどのカットとは撮影状況や合わせたウェアが異なっているものもあるが、あまり気にしないでいただきたい。

そんなわけで、こちらはパンツのみで撮影した様子だ。先に述べたように過不足ないフィット感である。いや、僕の足は太いので、もう少し余裕があったほうがよかったか・・・。

だが「ドライエッジティフォン50000」という素材は、非常に伸縮性が高く、これくらいのフィット感ならば、さほど足に負担を与えることはないだろう。

パンツはサイドから後ろ側がゴムで伸縮し、ウエストに合わせられる。同時に右サイド(写真の中央上の部分)にはコードストッパーが取り付けられ、さらに強く絞ることも可能だ。腰が細い人や、歩き方のクセなどで歩行中にパンツがずり落ちやすい人には有用なディテールである。

しかし僕はゴムの伸縮性のみで充分にはけた。むしろ本当はないほうがいいかもしれない。というのも、バックパックのウエストハーネスを締めると、このコードストッパーを上から押さえつけることになり、少々異物感があるのだ。だから、テント泊時の重い荷物をハーネスで支えようとすると、このコードストッパーで腰に痛みを感じてしまう可能性はある。しかし、荷物が軽いときはそれほど問題ではないだろう。

パンツのファスナーは止水タイプではなく、一般的なものだ。しかし上を覆うようにフラップが付けられ、雨水を内部に流し込まない。

腰元のポケットは右側のみで、左側は省略。つまり片側だけである。この内側はジャケットと同様にメッシュになっており、ベンチレーターとして機能する。パンツ内の暖気は上に上がるものだから、この位置のポケットがベンチレーターになると効果的だ。そういう意味では、左側にもポケットがあってもよかった気もする。

レインウェアは雨が突然降ってきたときに、すばやく取り出して着ることも念頭に開発されねばならない。そこで大半のレインパンツは裾にファスナーを付け、ブーツを履いたまま足を入れられるようにしている。内側が泥で汚れるのを嫌い、わざわざブーツを脱いでから履く人もいるが、あまり現実的ではない。

このパンツも膝下くらいまでファスナーがついており、もちろんブーツを履いたまま足を入れられる。ただ、ストレッチ性が強いからかブーツが引っかかると外しにくく、一般的な伸縮性がない生地よりも足入れしにくい。とくに足が大きい僕のブーツは引っかかりやすかった。しかし、何度か繰り返すと早く足を入れられるようになったので、慣れれば大きな問題はないだろう。

さて、何度か山中で撮影とテストをしたティフォン50000ストレッチジャケットとパンツだが、最終テストを行なったのは、志賀高原の一角にある岩菅山。日本200名山のひとつだが、雨の日とあって登山者は皆無で、僕は山頂の西にある岩菅山登山道入り口からひとり歩き始めた。

 

満を持して雨の岩菅山へ。果たして山行中の着心地はいかに?

出発時は小雨で、フードをかぶるほどでもない。頭部を覆うとむしろ暑くてかなわないので、帽子のまま歩いていく。ジャケットも同様で、ファスナーを完全に閉めると蒸し暑く、前は半開きにして歩いていった。胸元だけファスナーで閉められ、腹部から腰は開いているのが、上の写真を見てもらうとわかると思う。

このような状態で着用できるのは、ファスナーがダブルになっているからだ。上からだけではなく、下からも開けられるので、上はしっかりと閉じながらも下から空気を取り込むことができる。雪山用のハードシェルにはよくある仕様だが、レインウェアで採用しているものはあまり多くはない。だが暑がりの僕は、こんなダブル仕様のジャケットが大好きだ。これだけで高ポイントである。

ダブルタイプのファスナーのメリットは、座ったり屈んだりしたときにも現れる。下だけを開いていると、フロント部分の生地が腹部でもたれて不快だったり、余った生地が首のほうに上がってきて邪魔になったりという問題がなくなり、違和感なく座ることができるのだ。こういう点があまり気にならない人もいるだろうが、僕にはけっこう重要な点である。

下の1枚目の写真は生地の裏地だ。とても薄いが、わずかに織りを感じさせるニット素材であり、さらっとした着心地になっている。半袖のTシャツを着ていても、汗ばむほどにならなければ、肌に張りつくことはない。

こんな裏地が張られた「ドライエッジティフォン50000」という生地のストレッチ性と薄さは大したものだ。一般的なレインウェアのような張りや硬さとは無縁で、まるでウインドシェルのようなのである。すばらしく伸縮するうえに人間工学に基づいたパターンを採用しており、なおかつ軽量。レインウェアを着ているとは思えない。ちなみに、ジャケットは270g、パンツは220gである(実測値)。

撥水性も充分だ。雨水を玉のように弾き、表面から流してしまう。大粒の水が表面に残らないので、撮影が難しかったほどであった。

もっとも、着始めのレインウェアはどれもこれくらいの撥水性を発揮するともいえる。何度も着こんで歩き、表面が少し摩耗してきてからのほうが本当の実力を見られるだろう。

ノッキリという分岐を経て、山頂に向かう。ときおり明るくはなるが、雨のなかにガスが立ち込め、周囲は薄暗い。本当は周囲の景色を楽しみたかったものの、今回はあくまでもレインウェアのテスト。我慢するしかない。

登山口から比較的緩やかな登山道が続いていたが、山頂直下には険しい岩場もあった。そのなかには、足を大きく上げなければならないポイントも点在している。

ここで僕が今回、どのようにパンツをブーツに合わせていたのかをお見せしたい。下の写真は出発時。パンツの裾に付属しているドローコードを引き絞り、ブーツの上に固定している。この部分がずれなければ、わざわざ別途ゲイター(スパッツ)を合わせずに済み、ブーツ内の湿気が逃げやすくて快適だ。

事実、山頂直下まではこれで問題なく、ゲイターなしでもブーツ内へ水が入ることはなかった。

だが、岩場で足を大きく上げると・・・。かかとの部分がずれ、パンツがブーツから外れてしまった。この点はあり得ることと思って注意していたので、ブーツ内が濡れる前に再びかぶせることができ、雨濡れは回避できた。だが、やはりゲイターを合わせたほうが確実だっただろう。

とはいえ、あと少しだけパンツが長ければゲイターなしでも問題なかったはず。僕はXLサイズのパンツを選んでおくべきだったのだ。このパンツ自体が悪いわけではない。レインパンツをセレクトする際は長さという点を重視しておくと、このような事態は避けられる。

ただ、ドローコードを強く絞ったときに、余ったコードがブーツのサイドに長く伸びたままになるのは問題だ。今回はレインパンツの内側に押し込んで履いていたが、何かの拍子に外に出てくることがあり、まわりのものに引っ掛かりやすい。どこかに固定できるとよさそうである。

山頂に到着。風雨にさらされながら、なんとか記念撮影を行う。

近くには避難小屋があり、そこで一息つくと僕はすぐに下山を始めた。

 

下りになると、ウェア内のドライ感をいっそう実感! 着心地が軽く、透湿性・防水性も充分なレインウェアだった

再び樹林帯に入ると風は収まり、あとはゆっくりと先に進むだけである。気温は高めだが、登りに比べると体力を使う必要はなく、発汗は収まった。じつは登りのときは汗でジャケットの裏地が肌に張り付くこともあったのだが、下りになるとウェア内部がすぐにドライになっていき、まったくべとつかなくなっていた。

このあたりが透湿性「50000g/㎡/24h」という数値の力なのだろう。発汗量が多い登りのときはあまり実感できなかったが、下りでは理解できた気がする。腕の汗を吸いとってくれる長袖のベースレイヤーを合わせれば、もっと乾燥は速かっただろう。

下山を終え、クルマに乗る前にパンツを脱いだ。履くときに比べると、脱ぐときはすんなり。ほとんど同じ行為を反対向きに行なっているだけなのに、不思議なことだ。

泥道を歩いていたわりに裾はあまり汚れていなかったが、擦れていた部分の撥水性はやはり落ちている。しかし、他の部分の撥水性はいまだ落ちていない。はじめに書いたように、このウェアのテスト&撮影は何度にも分けられて行なわれ、岩菅山での着用はおそらく4回目だった。そう考えれば、この時点でキープされている撥水能力は充分に合格レベルといえそうであった。

最後に、細かなことを。降雨時以外はバックパックの中に入れて持ち運ぶ時間が長いレインウェアは、大半のモデルにスタッフバッグが付属している。だが、ティフォンシリーズには付属せず、その代わりにパンツは右ポケット内部に本体を入れられるパッカブル仕様だ。ジャケットはパッカブルではないが、畳んでから丸めてフードのなかに収めると、コードで留められるように工夫されている。下左の写真を見てほしい。

もっとも、ポケット内部に本体を入れられるようにしたパッカブル仕様といえども、ポケットを裏返したときにファスナーを閉めやすいようにファスナーの引き具が反対側にもついている程度である。ジャケットもポケットの中に入れてしまえば、少々ファスナーが閉めにくいとはいえ、上の2枚目の写真のようにパンツと同じような状態に収納できるのは覚えておいて損はない。

同じ素材を使用した「ティフォン50000ストレッチジャケット」と「ティフォン50000ストレッチパンツ」は軽い着心地で、透湿性と防水性も充分そうなレインウェアだった。防水性が高いということは防風性も高いということで、これからの寒い時期は「雨にも強いウインドシェル」として選んでもいいだろう。ただし極薄で柔らかい生地という特性上、傷みは早い可能性がある。その特性を踏まえながら着用すれば、使い勝手がいい山の相棒となりそうである。

(編集部註釈:高橋庄太郎さんがテストしたのは春夏モデルの「ティフォン50000」。9月からは、生地裏にトリコット起毛のある秋冬向けモデル「ティフォン50000ウォーム」も発売中)

 

登った山
岩菅山
長野県
標高2,295m

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プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

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