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初心者でも失敗しない! 登山靴の選び方のキホン

登山道具の買い方・選び方、ショップのスタッフに聞きました!
道具・装備 2018年10月12日

登山をはじめてみたい人にとって、ハードルになることはいくつかある。その一つが登山靴の選び方だろう。でこぼこしていたり、岩でゴツゴツしていたりする登山道を安全に歩くために必要な靴とは、どんなものか。さかいやスポーツ シューズ館 斎藤さんに間違いのない登山靴選びの基本を聞いてみた。

 

さかいやスポーツ シューズ館

 

誰にでもおすすめできる登山靴がない理由

編集部N:今回は「登山靴の選び方」を教えていただこうと思います。

斎藤さん:はい。なんでも質問してください!

編集部N:ではさっそく「誰が履いても失敗しない、おすすめの登山靴」を教えていただけますか?

斎藤さん:えぇ? なかなか雑な質問ですねえ。うーん……。

斎藤さん:そうですねえ…。例えばNさんは、どんな登山靴なら良いと思いますか?

編集部N:スポルティバ「トランゴ」のような、靴底の硬い、岩稜帯も歩けるような登山靴でしょうか?

斎藤さん:なるほど。一足だけ選ぼうとすると、スポルティバ「トランゴ S エボ GTX」のような、いわゆるライトアルパインブーツを思い浮かべるかもしれませんね。

スポルティバ「トランゴタワー  GTX」(写真左)と、モンチュラ「バーティゴ GTX」


編集部N:ライトアルパインブーツを履いて登っている方は北アルプスでもよく見かけますから、万人におすすめできるのかな〜と。

斎藤さん:しかし多くの登山者は、標高2000mを超える山にも、標高1000mより低い山にも登ると思います。では、高尾山や筑波山、金剛山、六甲山あたりを日帰りで登りに行くとなった場合、ライトアルパインブーツは最適でしょうか?

編集部N:正直、そこまでしっかりした登山靴でなくてもいいかな、と思います。

斎藤さん:そう。最適な靴は、「どの山に、どのように登るのか」で変わるのです。

 

登山靴の選び方の基本

編集部N:では、登山靴として最低限なければならない機能は何でしょうか?

斎藤さん:ビブラム社の登山専用のゴムソールのような、滑って転ばない、安全性の高いソールがちゃんと付いていること、これが最低限なければならない機能です。それに加えて、ケガを防ぐためにミドルカットで足首をサポートしているものを選ぶと安心です。

編集部N:防水である必要性はありますか?

斎藤さん:日本は雨が多く、多湿なため、朝露などで足元が濡れることも多いです。その際に靴の中まで濡れると足がふやけてしまい、靴擦れといったトラブルが起きる原因になります。それを防ぐために、防水性はあったほうが良いと思います。ゴアテックスなどの防水透湿素材を使ったものを選ぶと良いでしょう。今は主流ではありませんが、防水クリームやオイルなどを塗って防水加工ができるような革の登山靴もあります。

編集部N:次は靴の選び方について教えていただけますか。

斎藤さん:まず、登りたい山のイメージをなるべく膨らませましょう。山の標高や、スタート地点と目標地点はどこか、どんな季節に、どのぐらいの荷物を持っていくのか、といったことを具体的にしていき、その条件に合う靴を探すようにするといいでしょう。

編集部N:山に登ったことがないからイメージが湧きません! という方もいると思います。分かりやすい目安はありますか?

斎藤さん:さかいやスポーツでは、靴選びの参考のために「日帰り登山用」や「山小屋泊用」、「テント泊用」といったカテゴリに分けて商品を陳列しています。これはスタッフが実際に登山靴を履いたり、触ったりして、その靴に合いそうな山行スタイルを決めているのです。お客さまが選ぶ時の目安になればと思っています。

プライスタグの下におすすめの山行スタイルを記載している


編集部N:どういう基準でカテゴリを分けているのですか?

斎藤さん:主に靴底の硬さ(芯材の剛性)とアッパー、足首のサポート部分の硬さで決めています。日帰り登山用と山小屋泊用の靴を比べてみると、山小屋泊に対応した靴のほうが靴底が硬く、しっかりした作りになっていることが分かります。

靴底の硬さをみる斎藤さん


斎藤さん:先ほどのライトアルパインブーツは、靴底がかなり硬いため重量のある荷物を背負って日数をかけて歩くような「テント泊登山用」に分類しています。硬く、薄い靴底は足裏感覚に優れ、岩場での安定性を高めます。また、つま先が細くなっているため、慎重を要する場面でも細やかな動きを可能にします。つまり、ライトアルパインブーツは、岩稜帯があるような標高の高い山や、岩場が多い山を登るときに適しています。

編集部N:なるほど。岩場で真価を発揮するものなのですね。

斎藤さん:高い安定性は、重量のある荷物を背負うときにも発揮しますし、コバがついているモデルが多いので、アイゼンを履くような場面にも対応しています。

編集部N:標高の高い山では岩稜や岩場を通る可能性が高くなりますし、荷物の量も多くなりがちなので、ライトアルパインブーツなら失敗はなさそうです。

斎藤さん:注意しなければならないのは、普段履いているスニーカーのような靴とは履き心地が全然違うため、歩き方や靴紐の締め方に慣れず、靴擦れなどのトラブルが起こりやすいことです。

編集部N:では逆に、靴底が柔らかめの登山靴が日帰り登山やハイキング、トレッキングに向いているということでしょうか。

斎藤さん:そうですね。標高差があまりなく、一日の行程が5〜6時間までで済むような場合、つま先が細くタイトに締め上げられるようなガッチリした靴で歩くと、歩きにくく疲れやすくなってしまいます。高山より登山道の変化に対応する必要がないところも多いので、中滑りしない程度に足と靴の間に空間があるような、快適に履ける靴がおすすめです。

岩場のないような低い山では履き心地を重視する


斎藤さん:登山は未経験だけど、いずれは八ヶ岳のような中級グレードの山を登りたい、という方もいらっしゃると思います。そういう方も、いきなりライトアルパインブーツを一足目に選ぶのではなく、ある程度柔らかい「日帰り登山用」にあたる登山靴の足首のサポートがしっかりしたものから慣れていくと良いと思います。

編集部N:標高の低い山や岩場の少ない山は、サポートの強い登山靴よりも履き心地を重視して選ぶと良いのですね。

 

イタリアの靴はつま先が細い? 生産国から靴の特徴を知る

編集部N:棚をみるだけでも色々なブランドの靴が置いてありますが、どういった違いがあるのですか?

斎藤さん:例外はありますが、生産された国によってそれぞれ特徴があります。まず、シリオやキャラバンなどの日本ブランドは、日本人の足型に合わせているため、足幅が広い傾向の靴が多いです。スポルティバやアゾロ、ザンバランなどのイタリアのブランドは、比較的つま先が細めで、足首のサポートがしっかりした登山靴が多い。ヨーロッパアルプスの中でもイタリアに近い山々は岩稜などの急峻な地形が多いため、登山靴もおのずと靴底が硬く、しっかりしたものになってきます。

編集部N:なるほど! そういう風に見ていけば、国によってデザインの傾向が見えてくる気がします。

斎藤さん:面白いですよね。ヨーロッパの中でも、ドイツやオーストリア、フランスのブランドは旅行やトレッキングを目的としたものが多くなってきます。ローバーのようなドイツの登山靴専用ブランドは、足当たりがよく、歩きやすい靴が多くなります。足の骨格構造を考慮したデザインにもなっている点も、ドイツらしいなと思います。

編集部N:アメリカのブランドはどうでしょうか?

斎藤さん: キーン、バスク、メレルといったブランドも、ロングトレイルや長旅で履くことを目的としたトレッキングシューズが多いです。こういった傾向を把握しておくと、なんとなくブランドごとの棲み分けも見えてきます。そうすると、自分の足にあったブランドや好みが選びやすくなるのではないでしょうか。

編集部N:たしかに、登りたい山と自分の足の形状、デザインの好みで絞っていけば、お気に入りの一足に出会えそうです。

斎藤さん:ちなみにザ・ノースフェイスやモンベルのような総合ブランドになると、アルパイン系の登山靴をイタリアで作っていたり、日本規格のトレッキングシューズを作っていたりしますので、必ずしも当てはまるものではありません。あくまで目安として知っておくといいでしょう。

多様化するニーズに合わせて、同じ商品でも幅が違うものを展開しているブランドがある

 

意外と知らない「自分の足の本当のサイズ」

斎藤さん:靴を選ぶ時に大事なことがもう一つあります。それは自分の足のサイズを知ることです。登山用品店では、足を計測するためのスケールや足型をとる機器を置いています。最適な登山靴を選ぶためにも、自分の足型や足の傾向が知っておきましょう。

編集部N:靴の正確なサイズって、普段気にしないかも……。意外と思い込みで選んでいたりするのでしょうか?

斎藤さん:27cmの靴を履いている方が、実際にサイズを測ってみたら25cmしかなかった、なんてこともよくあります。自分の測ったサイズを把握することが良い靴選びの第一歩です。

登山用品店には、足のサイズを正確に測る機器ある

編集部N:近所に登山靴用品店がない方は、どうすればいいでしょうか?

斎藤さん:壁にかかとをつけて、定規やメジャーを使って測ってみましょう。他に人にサイズを測ってもらうと、より正確に測ることができます。実際に山に登る時は靴下を履くので、測った数値から10〜15mm大きいサイズが靴を選ぶ目安になります。あとは、足の幅が広いか狭いかで自分の足にあった靴を選びましょう。

壁にかかとをつけて足のサイズを測る方法

編集部N:足のサイズに合っていない登山靴を履くと、どんな問題があるのでしょうか?

斎藤さん:靴擦れやマメなどのトラブルが起こりやすくなります。登山の最中にこういったトラブルが起きてしまうと、せっかくの楽しい登山も台無しになってしまいます。また、正しく靴が履けていないこともトラブルに繋がります。ちゃんと靴選びができていても、靴紐がしっかり締まっていないと、足が靴の中で動いてしまったり、かかとが浮いて擦れてしまったりします。靴紐を締めすぎても痛くなってしまうので、適切な締め加減が必要ですね。

編集部N:実際にやってもらいましょう。

斎藤さん:まず、「むにに〜」と横に靴紐を引っ張ります。そして「キュッ」と引っ張った紐を、少し緩めてから固定していきます。こうすると、足首の可動域を確保しつつ、靴との一体感を出すことができます。一度試してみてください。

編集部N:登りたい山、ルートを具体的にする。自分の足の形を把握する。登山靴の履き方を覚える。そのうえでブランドの特徴を参考に登山靴を選んでいけば、失敗のない買い物ができそうですね。斎藤さん、ありがとうございました!

 

登山靴
教えてくれた人

斎藤 勇一(さかいやスポーツシューズ館)

アウトドア、ヤマの業界で25年超の経験を持つ長老的存在(笑)。
シューズ系の売り場に長く在籍し、さまざまな登山者の足元を見続けたせいで、その人の姿勢や歩き方から身体のクセなどを見抜くイヤらしいヤツ。
アウトドアスポーツ全般をこなすが、最近はイマドキ流行りの軽量装備で一人テント泊登山を楽しむ。

さかいやスポーツ

創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。

住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分

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