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地図を見ればいろいろな景色が見えてくる。登山に大切な「地図」の話

山の疑問・難問、山岳ガイドが答えます!
基礎知識 2018年10月18日
地図読みを学びたい

質問: 登山をはじめて3年、いろいろな山に登ってきましたが登山の地図読みはできません。いままで必要だと感じなかったので、特に興味もなかったのですが・・・先日、登山から帰ってきてから地図を広げてみたら、地形図と実際に見たものがリンクして、地図をみる楽しさを感じました。
安全登山のためにも「これから地図読みを覚えていきたい!」と思っているので、学び方のアドバイスや登山地図のことについて教えてください。

 

かつて登山者は地形図を使って計画を立て、登山のイメージをしてきました

安全で計画的な登山に「地図」は不可欠なものです。本来、自発的に登山を行う者は、この「地図」を使って、向かう山の様子を知り、合理的なルートを見つけ、ルートを確認して、それから山に入りました。

地形図の基本は、実際に該当する場所を五万分の一や二万五千分の一に縮めて図式化したものです。「五万?」「二万五千?」という数字にピンと来ない人に簡潔に説明すると、二万五千分の一の地形図上での1cmは二万五千センチ=250mと理解すれば、なんとなく縮尺のサイズ感がわかるはずです。

地図について少し余談をすると、日本での地図の作製は、近代化以前の江戸時代に、まだ全容のわからなかった蝦夷地(北海道など)で本格化したことが始まりです。歴史の教科書に登場する伊能忠敬や間宮林蔵などが、現在のコンパスにあたる羅針盤のみを武器として、方角を定めながら自分の足による歩行距離で実際の距離を測定し北海道の海岸線を描いていき、間宮海峡を発見(?)したことは、教科書に載っているはずです。ちなみに、このときに作成された地図は、のちに三角測量法で計られた地形と大きくは違わない緻密なものだったそうです。

話を戻すと、「地図を読む」ことは、かつては学校教育の中で教えられてきました。五万分の一の地形図(二万五千分の一の地形図が全国に普及したのは1970年代以降)の読み方や使い方の基礎を授業の中で学び、林間学校などでは実地訓練として実際に使われ、生徒たちは車道から登山道の入口を探すことも行っていました。

「ここからは等高線が詰まっているから急だ」「今は針葉樹マークの森だから何も見えないけれど、尾根は笹のマークだから見晴らしが効く」などと予想し、登山をしない人でも地図の活用の基礎を学びました。

こうした下地があったからこそ、登山者は地形図で登山計画を立て、地形図の上でコースをなぞることで登山のイメージを作り上げ、そのうえで実際に山を歩き、地図と実際の地形を重ねることで、登山で地図を活用してきました。例えば、「もう水筒の水、ほとんど飲んじゃったけど、谷筋のトラバース道がこの先あるから、脇から水なら汲めるかもしれない」などと、実際の登山行動の中で上手に使いこなしていたように思います。

 

地図を見ればいろいろな景色が見えてくる

山に行ったら、まずは地図を広げてみてください。地図読み初心者の登山者が、地図について身近で便利な物と感じられるのは、景色の広がる山頂でしょう。地図上にコンパスを正確に置いて、推定される山頂からの距離と方角を見れば、山の名前の確認できると思います。「あれは〇〇山」「尖っているのは△△山」「富士山が西に見えるから、その左は丹沢」など、憧れの山や登った山を確めると「地図はいいなぁ」と親しむきっかけとなるでしょう。

そして山から帰ったら、ぜひ、登った山を地図の上で確認してください。「ここ尾根が狭くて風が強くて怖かった。地図で見ても、やっぱり尾根が狭いね」「この荒地と笹のマークの所、景色良かったなぁ。こんどは行く前に尾根の上の荒地マークをチェックしよう!」と振り返ってみてください。こうしていくと、尾根の形や谷の様子から、少しずつ山の姿が浮かび上がるようになるはずです。

そして慣れてくると冬山のように雪に道が覆われていたり、広大な高原で霧の中にいたりする時でも、地形図とコンパスだけで「正しいルート」を辿るための道具となります。地図を使って山に親しんで来た者なら、真っ白で足元しか見えない地形でも、雪原が目標もなく広がっている場所でも、地形を把握し、雪崩や滑落の可能性を考えながら正しい方向を探し出し、ザイルで距離を計測して行くことで、必ず目的の地に到達できるようになります。

山の名前を知ることから始まり、最終的にはホワイトアウトの雪山でのルートファインディングまで役立てることができるのが地図です。GPS機器やスマートフォンの時代でも、地図は登山の中でも必携品であることには変わりはありません。

教えてくれた人

山田 哲哉

1954 年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。著書に、登山技術全書「縦走登山」(山と溪谷社)ほか、「奥秩父、山、谷、峠そして人」(東京新聞出版局)など多数。
 ⇒山岳ガイド「風の谷」

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