天候が悪い状況での登山は集中力の低下を招きリスクが高まる 島崎三歩の「山岳通信」 第128、129号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2018年10月5日に配信された第128号、および10月9日に配信された第129号での、合計26件の遭難事例について説明。天候が不安定だった9月中旬~下旬のリスク、およびキノコ採り中の遭難について言及している。

 

10月5日および10月9に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第128号および129号では、9月18日~30日に起きた26件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月18日、北アルプス槍ヶ岳で、57歳の男性が北鎌尾根を槍ヶ岳に向けて登山中に滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助されたものの、収容先の病院で死亡が確認された。

  • 9月19日、八ヶ岳連峰亀甲池で、79歳の男性および80歳の女性が大河原峠から双子池に向けて登山中、亀甲池付近で疲労などにより行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊、佐久警察署山岳高原パトロール隊員などによる背負い搬送により救助された。

  • 9月19日、八ヶ岳連峰権現岳で、18日から入山していた40歳の男性が権現岳から旭岳に向けて縦走中に道に迷い、下山途中に転倒・負傷、行動不能となる山岳遭難が発生。19日になってから男性からの救助要請を受けて、県警ヘリにより救助された。

  • 9月19日、北アルプス燕岳で、82歳の男性が山荘に宿泊中、体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 9月20日、北アルプス前穂高岳で、3人パーティが前穂高岳北尾根から奥又白池に向けて下山中に道に迷い、うち33歳の男性1名が滑落する山岳遭難が発生。県警山岳救助隊などが救助に向かい、22日に県警ヘリで救助されたものの、男性の死亡が確認された。

  • 9月20日、北アルプス前穂高岳で、上記パーティの同行者2名(40歳女性、36歳男性)は、道に迷い行動不能となっていたところを、県警山岳遭難救助隊および北アルプス南部地区遭対協隊員などにより救助された。

  • 9月22日、伊那市長谷地籍山林内で、きのこ採りのために単独で入山した83歳の男性が、自宅に戻らず行方不明となる遭難が発生。翌23日に無事発見された。男性は疲労のため行動不能となっていた。

  • 9月22日、北アルプス大黒岳で、47歳の女性が五竜岳に向けて登山中、バランスを崩して転倒・負傷する山岳遭難が発生。翌23日に長野県山岳遭難防止対策協会秋山パトロール隊員が救助要請を受け、県警ヘリにより救助された。

  • 9月23日、北アルプス奥穂高岳で、46歳の男性が西穂高岳から奥穂高岳に向けて縦走中にバランスを崩して滑落。左足を骨折する山岳遭難が発生し、岐阜県警山岳警備隊員が現場に駆け付け、県警ヘリにより救助された。

  • 9月23日、北アルプス大黒岳で、54歳の女性が五竜岳に向けて登山中にバランスを崩して滑落、右足を骨折する山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止対策協会隊員が救助に赴き、県警ヘリにより救助された。

北アルプス大黒岳付近の遭難現場の状況(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)9月28日付)

 

  • 9月23日、北アルプス前穂高岳で、70歳の男性が前穂高岳から岳沢へ向けて下山中、足を滑らせて滑落し、頭部を負傷する山岳遭難が発生。北アルプス南部地区遭対協救助隊員が出動し、県警ヘリで救助された。

  • 9月23日、伊那市富県地籍山林内で、きのこ採りのために入山した79歳の男性が、入山中に足を滑らせて滑落する遭難が発生。病院に搬送されたものの、死亡が確認された。

  • 9月24日、中央アルプス木曽駒ヶ岳で、33歳の男性が木曽駒ヶ岳から下山中に道に迷い、さらに転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 9月25日、北アルプス常念岳で、74歳の男性が常念小屋から一ノ沢登山口に向けて下山中、足を滑らせて滑落して頭部を負傷する山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊、安曇野警察署員、および北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が背負い搬送により救助したものの、男性は意識不明で、のちに死亡が確認された。

  • 9月26日、北アルプス涸沢で、82歳の女性が山小屋内の段差でバランスを崩し転倒・負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 9月26日、北アルプス涸沢で、52歳の女性が涸沢から横尾に向けて下山中、横尾本谷橋付近で足を滑らせ転倒・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 9月27日、松本市中川地籍山林内で、26日からきのこ採りのために単独で入山した88歳の男性が帰宅しないとの届出があり捜索したところ、27日に山林内で倒れている男性を発見、死亡が確認された。

  • 9月28日、北アルプス唐松岳で、69歳の女性が唐松岳から五竜岳に向けて縦走中に滑落・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 9月28日、下伊那郡大鹿村大河原地籍山林内で、きのこ採りのために入山した72歳の男性が滑落する山岳遭難が発生。静岡県消防防災ヘリにより救助されたものの、死亡が確認された。

  • 9月28日、御嶽山で、72歳の女性が山頂に向けて登山中に岩場でつまづいて転倒し、肘を負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 9月28日、八ヶ岳連峰天狗岳で、62歳の男性が天狗岳から黒百合平に向けて下山中に、黒百合平付近で転倒して肩を負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 9月28日、八ヶ岳連峰天狗岳で、66歳の男性が黒百合平から唐沢鉱泉の間の登山道で倒れているのを、別の登山者が発見。茅野警察署山岳救助隊が救助したものの、死亡が確認された。下山中に起きた事故で原因は不明。

  • 9月28日、八ヶ岳連峰阿弥陀岳周辺で、37歳の男性が日帰りの予定で阿弥陀岳に登山に向かったまま行方不明となっている。茅野警察署山岳救助隊、諏訪地区遭対協救助隊員が捜索を行っている。

  • 9月29日、北アルプス涸沢で、68歳の男性が涸沢から横尾に向けて下山中、疲労による体調不良により歩行困難となる山岳遭難が発生。県警山岳救助隊により救助された。

  • 9月30日、木曽郡木曽町三岳地籍山林内で、きのこ採りのために単独で入山した50歳の男性が足を滑らせ、滑落する遭難が発生。警察と消防で救助したものの、死亡が確認された。

  • 9月30日、上伊那郡中川村大草地籍山林内で、きのこ採りのために単独で入山した73歳の女性が一時行方不明となったものの、無事発見された。女性は道に迷い、行動不能となっていた。

 

山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

9月4週は13件の遭難が発生し、3名の方が滑落により亡くなっています。下山中に滑落、転倒し、負傷する遭難が後を絶ちません。
天候が悪い状況での登山は、雨により登山道が濡れて滑りやすくなる上、気温が下がり体温が奪われることにより、疲労や集中力の低下を招き、遭難のリスクが高くなります。天候の判断も遭難防止のためには、非常に重要となりますので、天気予報を確認し、行動を控えるか、行程を短くするなどの対策を取ってください。
また、きのこ採りによる遭難も発生していますので、入山する際は、家族に行き先を伝えるとともに、携帯電話、ヘッドライト、雨具等は必ず携帯してください。

9月5週は13件の遭難が発生し、5名の方が亡くなっています。中でも、きのこ採りに夢中になるあまり、道に迷ったり、急斜面に入り込み滑落したりするケースが後を絶たず、3名の方が亡くなっています。里山の斜面は樹林帯で陽が当たらず、非常に滑りやすいので、無理をしないように努めてください。
また、仲間と声や目が届く範囲で行動してください。登山では、下山中の転倒・滑落が多発していますので、こまめに休憩を取るとともに、時間に余裕を持った行動に努めてください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

編集部おすすめ記事