アルプス山脈トレッキングの穴場!? 7つ氷河湖と白い山肌が美しいスロベニア・トリグラウ国立公園を歩く:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(8)

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旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第8回目は、山と湖が美しい中央ヨーロッパの国スロベニアが舞台。緑豊かな牧草地、美しい氷河湖のさらに向こうに、石灰岩の白い山肌を持つトリグラウ山がそびえ立つ。三つの頂を持つこの山は国旗にも描かれたスロベニアの象徴。様々な表情が楽しめるトリグラウ国立公園でのトレッキングの様子をお伝えする。

 

不思議な色に輝く、いくつもの湖

2016年7月8日(世界一周87日目)

旧ユーゴスラビア連邦のひとつだったスロベニアは、バルカン半島北西端に位置する。この国のシンボルであるトリグラウ山は、イタリアから続くユリアンアルプスの最高峰で、ここを中心に広がるトリグラウ国立公園には、いくつもの登山道と山小屋が整備されている。

今回僕らはこのトリグラウ国立公園を二泊三日で歩く。スロベニア有数のレイクリゾート、ブレッド湖のさらに奥、ボーヒン湖が今回のトレッキングのスタート地点だ。

アルプスの瞳と称されるブレッド湖


ボーヒン湖西岸からしばらくは緩やかな林道だが、途中から本格的な登山道に。標高差500mぐらいの、遠くから見るとほとんど壁のようなところをジグザグに登っていく。

厳しい登りを越えた先、周りを高い岩山に囲まれて外界から遮断されたような場所に湖があった。「黒い湖」と名付けられ、その静けさがどこか神秘的に見えた。

山の中にひっそりと佇む黒い湖


そこからさらに先、苔むしたトレイルや、花畑の広がるトレイルを越えていく。やがてセブンレイクと呼ばれるエリアへ。U字谷が広がる穏やかなエリアで、その名の通りいくつもの湖が点在している。トリグラウ国立公園の見どころのひとつともいうべき、歩くのが楽しくなるトレイルだった。

今日の目的地は湖のほとりにあるトリグラウセブンレイク小屋。可愛らしい小屋と温かいスロベニア料理が僕らを迎えてくれた。

今日の目的地セブンレイク小屋

 

荒涼とした白の世界に現れた動物

2016年7月9日(世界一周88日目)

朝は風がなく、湖面は鏡のように周りの景色を静かに写し込み、ただ湖の色だけが、光の差し込み具合で様々な表情に変化していた。

セブンレイクを越えると、徐々に登りに変わる。標高とともに草花の緑と石灰岩の白のバランスが反転し、遂には雪が一面に積もったような白の世界へと変化していった。

森林限界を超えると石灰岩の世界へ


突然、「ピャーッ」という甲高い口笛のような鳴き声が聞こえ、周りを見渡すと、岩の上に1匹のアイベックスが姿を現した。間近に見せつけられた、その反り返る立派な二本の角と岩山を駆けるたくましい脚が、なんとも格好よく見惚れてしまった。

甲高い鳴き声で仲間に僕らの存在を伝えていたのだろうか


しばらく進み、峠を越える。雲がなければここから最高峰のトリグラウが見えるはずだが、今日は残念ながら厚い雲に覆われ眺望はない。

峠の向こうの急峻な下りを行くとドリッチ小屋だ。ここから最高峰のトリグラウに登る人も多く、本格的な岩登りの装備をした登山者が多く見られた。

僕らはトリグラウ山頂方面には進まず、そのままさらに下り、ヴォドニコウドム小屋へ。ここも快適で居心地のよい場所だった。

ヴォドニコウドム小屋近くは緑が美しい場所だった

 

顔を出した三つの頂

2016年7月10日(世界一周89日目)

三日目は快晴で、昨日は雲がかかって見えなかったトリグラウが綺麗に顔を出している。スロベニアの国旗にも描かれている三つの頂も確認できる。カメラの望遠レンズからは、隣の小トリグラウの岩壁に列をなして登る登山者や、小トリグラウからトリグラウまでの岩稜を進む登山者が見えた。

トリグラウは、スロベニア人なら一生に一度は登るべき山と言われているらしいが、難易度は高い。ヘルメットやハーネス、ザイルを使って登るような岩稜に挑戦しなければならない。富士山に登るのではなく、北アルプスの岩稜を歩く感じだ。ようやく見ることができたトリグラウに挨拶をし、僕らは下山を開始した。

雲ひとつない青空の下、トリグラウがくっきりと見えた


樹林帯や草原地帯を4時間ほど下ってようやく広い牧草地にたどり着く。ここまで来ると家族連れのハイキング客も増え、にぎやかになる。最後はモストニツァ峡谷を抜けてゴール。バスが来るまでアイスを食べて三日間のトレッキングのゴールを祝った。

気持ち良い草原を抜けていく

 

物価は控えめながらアルプス山脈のトレッキングを満喫できるトレイル

スロベニアのトリグラウ国立公園は、アルプス山脈の一部であるユリアンアルプスに位置し、牧草地、湖、岩場と、変化に富む景観を楽しめるトレイルでした。道は目印があり、山小屋も整備されていることから、距離は長いものの比較的歩きやすいトレイルだと思います。

観光客が訪れるような場所では英語はほぼ通じ、バス、電車なども利用しやすく、それでいて物価は他のアルプス山脈の国々に比べると控えめ。隣接する他国からのアクセスも良いのでオーストリアやイタリア、またクロアチアの旅行と組み合わせて、アルプス山脈トレッキングを楽しむのにオススメの場所のひとつです。

スロベニア・トリグラウ国立公園でのトレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備については、トレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

スロベニア料理のソーセージとザワークラウト

 

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
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トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

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