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ナメや滝の美しい米子沢を遡行して―― 新潟県越後・巻機山避難小屋のトイレに感動

こんな山小屋で一息ついてみたい。“避難小屋”への誘い
ガイド・記録 2018年10月23日

イラストレーターで登山ガイドの橋尾歌子さんが、日本各地の避難小屋をめぐり、独自の視点から立体的なイラストで紹介する。第3回は、越後にある巻機山避難小屋へ。人気の沢登りスポット、米子沢を遡行して巻機山の山頂近くに立つ避難小屋で見たものは!?

 

 

いかつい岩壁で覆われる越後の山にあって、巻機山はたおやかで美しい山容を見せる。その山頂へと突き上げる米子沢は、ナメと美瀑が続く、広く明るい人気の沢登りスポットだ。

国際山岳ガイドの篠原達郎さんに、「上信越の沢、きれいですよ〜」と言うと、「米子沢は前から行ってみたかったんだ」と同行してくれた。国内外の岩壁に登りまくっている篠原さんだが、沢登りはなんと10年ぶりとのこと。お客さんに「篠原さん、沢には行かないんですか?」って言われたのがきっかけで、久々に行きたくなったそうだ。

米子沢は岩がゴロゴロした河原歩きから始まる


小屋の歴史を紐解くと――、1956年に日本山岳会がマナスル(8156m)に初登頂したのを機に、国内では第一次登山ブームが起こり、登山者が増えた。それに対応するために、頂上手前にひと休みできる場所をと、1959年に旧塩沢町(2005年南魚沼市に編入)が巻機山避難小屋を建てた。この場所を選んだ理由は、水場が近く、雪田や草原を避けたからだそうだ。このときに建てた小屋は老朽化により、2000年11月に改築されていて現在の小屋となっている。

小屋と登山道の管理は、巻機友の会が南魚沼市から委託されている。会の創設は1974年。この頃は登山者のマナーが悪く、山にはゴミが増え、登山道は荒れていた。そこで、初代会長である長谷川眞砂弘さんを中心とした地元の登山愛好家たちが、清掃登山をしようと立ち上がったのが巻機友の会の始まりだ。現在の会員数は17人で、二世会員も多い。6月の雪解け後の無雪期は、毎週1回2人一組で小屋を訪れて清掃をしている。

草原に立つ巻機山避難小屋の外観。裏手に外トイレがある


そんな歴史の残る巻機山避難小屋を目指して登山口へ向かう。すると、朝の登山口の桜坂駐車場はあっという間に超満員。すごい数の登山者だ。

入渓し、ゴロゴロした河原を進んでいく。小滝を越えると左手のスラブから枝沢が入り、その先で沢が開けてきた。青い空がぱぁっと広がり、そのなかに白い岩肌の沢が広がっている。次々と現われるナメや滝を進み、ゴルジュを抜けると、また広々としたナメが続く。やがて流れが穏やかになり、お花畑の中の小さな流れを歩く。「最後まできれいな沢だね〜。それに奥多摩や奥秩父の沢と全然違う」と篠原さん。

美しい滝が続く。お天気がよくて最高!


沢では、長野県の5人パーティと、神奈川県の高校山岳部パーティに会い、抜きつ抜かれつで進んだ。駐車場にいたほとんどの人は、一般登山道から巻機山山頂をめざしたようだ。

沢の遡行を終え、小屋でひと休みした後、巻機山の山頂へ。長野グループが先に到着していた。真っ青な空のなか、この日来れてよかったねと言い合った。篠原さんが、沢登りは10年ぶりだと話すと驚かれた。「へ〜。でも登るの上手ですね。クライミングは?」

そろそろ沢の終わりが近い。後ろは谷川岳方面

 

巻機山避難小屋DATA

所在地: 新潟県南東部、群馬県との県境にある巻機山(1967m)の山頂南西(1805m)。桜坂駐車場から前巻機山経由で4時間30分。米子沢を遡行する場合は、駐車場そばの入渓点から小屋前の終了点まで約5時間
※本文で紹介している米子沢は沢登りのルートで、登攀技術や経験・装備が必要です。事故も多発しているので、安易に入渓しないように!

収容人数: 20人
管理: 通年無人。トイレ使用時には協力金100円程度を支払う
水場: 小屋から徒歩10分の米子沢
トイレ: 小屋内部にバイオトイレ、別棟にもあり
取材日: 2017年9月9日
問合せ先: 南魚沼市役所商工観光課 ☎025-773-6665

 

この文章とイラストは橋尾歌子さんの著書『それいけ避難小屋』から紹介しています。実際の書籍では、山行中の様子についても、さらに詳しく・楽しくイラストを掲載して紹介しています。

著者独自のカラーイラストで描かれた間取り図や山行ルポは、写真や図面と違い、小屋の雰囲気まで伝わってきます。東北から四国にかけて実際に訪れた、全51軒の個性あふれる避難小屋を、イラストと共にぜひ楽しんでください。

 

教えてくれた人

橋尾歌子

イラストレーター、登山ガイド。多摩美術大学大学院卒。(有)アルパインガイド長谷川事務所勤務、(社)日本アルパイン・ガイド協会勤務を経てフリーに。
2004年、パチュンハム(6529m)・ギャンゾンカン(6123m)連続初登頂。最近は、日々クライミングに出かけている。
(公社)日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ。現在、季刊誌『やまとびと』(共栄印刷)にて「山気佳日夕」を連載中。

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