駅から駅で秋色を楽しむ 。11月のオススメ、高畑山・倉岳山

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低山をこよなく愛す低山フォトグラファーの渡邉明博さんに、季節に合わせた魅力的な低山を紹介いただく連載。11月におすすめの山は、駅から駅を周遊できる高畑山と倉岳山。大月市の「秀麗富嶽十二景」の山に選ばれる2座を歩くプランをご紹介します。

 

中央沿線の山から紅葉の便りが聞こえて来ると、ウズウズして行きたくなるのが高畑山と倉岳山です。

山梨県大月市の「秀麗富嶽十二景」にも選ばれていて、どちらの山頂からも富士山の眺めがいいのが一番のポイントです。駅からの利便性が良いため四季を通して人気の山ですが、特に空気が澄んで富士山がよく見える秋から春は登山者が絶えることがありません。ここでは駅から駅の周遊コースを紹介します。

 

駅から駅へのハイキングは、鳥沢駅からスタート

スタートはJR中央本線の鳥沢駅から


JR中央本線の鳥沢駅から国道20号に出たら、右に進み「鳥沢小東」の信号機の前で右の小道へ。JR中央本線のガードをくぐり、線路沿いに進むと広い車道に突き当たります。右折し下っていくと桂川が見え、正面には目指す高畑山が見えてきます。虹吹橋を渡り、集落内にある道標に従いながら進むと山乃神神社があります。その先に鉄格子のゲートは、動物除けのゲートでもあるので、必ず閉めて通り抜けましょう。

桂川の虹吹橋までくると高畑山と倉岳山が見えてくる(左)、動物除けゲートを通り登山道へ(右)


車道が終わって登山道になると、小篠貯水池の池畔に出ます。水面に秋色が映り、とても気分の良い場所です。

彩りの小篠貯水池畔に立つと心が洗われるよう


山道はオシノ沢沿いに行くようになり、傾斜が強くなると馬頭観音の石仏がある分岐に着きます。直進は穴路峠。道標を見送り、右の急な斜面を登って行きます。途中、仙人小屋跡で一旦平坦になりますが、辛い急登が続き、杉や檜の植林帯を汗だくで登り切れば、高畑山に到着です。南面が開け、道志や丹沢の山並み、そして、富士山が大きく見えるでしょう。

山頂の一角には三等三角点が置かれ「秀麗富嶽十二景」の案内板が。お昼頃に到着すると山頂は多くのハイカーで賑わっていることでしょう。

大勢のハイカーでにぎわう高畑山の山頂

 

秀麗富岳十二景・高畑山からの富士山展望

 

秀麗富岳十二景の山を縦走。高畑山から倉岳山へ

1つ目の富士山展望を満喫したら、先に進みます。東の尾根を進むと、右に雛鶴峠への道を分け、尾根通しに下ると天神山に出ます。ここは隠れた展望の穴場で、北面の景色が素晴らしく、ゆっくりと写真を撮りたくなる小ピークです。

小さなピークの天神山は意外な展望穴場。北面に展望が開ける


そのまま下り、直ぐに穴路峠へ。ここは馬頭観音と無生野の道を左右に分けますが、稜線をそのまま進みます。

登り返しは少し苦しい登りですが、傾斜が緩めば富士山展望の2つ目のピーク、倉岳山に到着です。ここからも均整の取れた美しい富士山が望めます。「秀麗富岳十二景」のひとつです。

紅葉の綺麗な倉岳山の山頂も富士山が良く見える


倉岳山では、北側にも展望があり、眼下には桂川に架かる鳥沢鉄橋がバッチリ見えます。鉄道ファンには溜まらない構図でしょう。

倉岳山から見下ろす鳥沢鉄橋。鉄道ファンなら見逃せない構図だ

 

富士山展望を楽しんだら梁川駅へ下山

2つ目の富士山展望を楽しんだら、立野峠への道を下りましょう。足場の悪い急坂は滑りやすいので注意が必要。小さなアップダウンを繰り返すと立野峠です。直進は寺下峠、右は浜沢、左が梁川駅となります。

主稜線を離れて北斜面の植林帯をジグザグに下っていくと、やがて倉岳山水場という月屋根沢の源流部に出ます。ベンチもあり、小休止には適地といえるでしょう。

道標がある立野峠は稜線の峠の十字路。ベンチもある倉岳山水場


さらに沢沿いを下流へ。登山道はツガやクヌギの巨木が多く、沢の流れも美しい場所です。次第に沢から離れれば、倉岳山登山口の林道に出ます。あとは車道をたどって国道に出て、梁川駅を目指します。

梁川駅ホームからは歩いて来た稜線が良く見える

 

山行アドバイス

鳥沢駅から小篠集落まではタクシー利用も可能。しかし、鳥沢駅に常駐するタクシーの台数は少ないので、事前に予約しておいたほうがいいでしょう。

マイカーの場合、鳥沢側、梁川側ともに駐車できるスペースはなく、クルマ利用には不向きな山と言えます。
富士山の展望を楽しむには、空気の澄んでいる秋から冬が最適ですが、日照時間が短いので、できるだけ早朝から登るとよいでしょう。

倉岳山山頂付近の紅葉(11月中旬撮影)

最後に、お酒好きの方で、山行の振り返りには、必ず一杯という方へ。残念ながら、梁川駅周辺にはお店がないので、主要駅に戻って、適宜盛り上がるのがよいでしょう。

 

『高尾山と中央線沿線の山』

高尾山と中央線沿線の山々の徹底コースガイド決定版! 南に丹沢山塊、北に奥多摩というメジャーエリアに挟まれた中央線沿線の山々は、日本百名山のような有名山岳こそ含まれないものの、首都圏の登山者から四季を通じて親しまれている。鉄道駅から直接登ることができる身近さから、根強い人気がある。著者が140日以上に渡って実踏調査したコース案内と、写真集のような美しい山岳写真でまとめられたガイドブック。富士山展望の山も多数収録。

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プロフィール

渡邉 明博

1957年、東京都生まれ。中学時代に写真を始め、1976年から商業カメラマンとして写真を仕事とする傍ら、「山上から富士山を撮る」をテーマに山岳写真家としても確立。「低山フォトグラファー」として中央線沿線の低山にくまなく通い四季折々の風景を撮影。のべ150日に渡る実踏取材を元に『高尾山と中央線沿線の山』(山と溪谷社)を2016年に上梓。白籏史朗賞日本山岳写真コンテスト入選ほか受賞歴多数。山岳写真ASA会長。(写真=水谷和政)

低山フォトグラファーの気ままな山歩き

冬場はもちろん、真夏であっても、低山には見どころがたくさんあります。 ガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者で、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さんに、季節季節のおすすめ低山情報を聞きました。

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