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秋を迎えた北海道・十勝岳で、超軽量4シーズン対応テント「ゼログラム/エル・チャルテン2P」を試す! 

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2018年10月31日

今月のPICK UP ゼログラム/エル・チャルテン2P

価格:59,000円(税別)
サイズ:210mm×130cm×100cm
重量:1.35kg(最小セット/フライ、インナーテント、ポール)

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十勝岳の絶景シチュエーションでテント。テントの細かい仕様をチェック

山中の我が家、山中のワンルームマンションともいうべきテントは、いくつ所有していても楽しいものだ。オーソドックスなタイプの堅実さも捨てがたいが、個性の強いモデルにも興味を引かれる。

この秋、僕が北海道の十勝連峰へ持っていったのは、「ZEROGRAM(ゼログラム)」の「エル・チャルテン2P」。同社を代表するテントの2人用である。

秋のある日、僕は十勝岳温泉の登山口を出発し、三段山分岐から本格的に登り始めた。


D尾根からの展望はすばらしく、安政火口の向こうには十勝岳の堂々たる姿。まさに秋晴れといった好天に、ひとりで歩いているのにうれしくてニヤニヤしてしまう。

稜線まで上がると、すぐに上富良野岳。それほど目立つ山頂ではなく、山名が命名されたのも1997年という近年だ。しかし、D尾根から稜線に上がってきたものにとっては、よい目印となっている。

稜線から南側の台地に付けられた登山道を進むと、上ホロ避難小屋だ。下の写真のなかに、赤い屋根の小屋があるのがわかるだろうか? 十勝岳が近くにそびえ、テント場としても非常によい立地である。

エル・チャルテン2Pは、ダブルウォール式の自立型テント。つまり、インナーテントの外側にフライシートをかける2重構造であり、テントにポールを組み合わせるだけで立体化する。

インナーテント&フライシート(+フットプリント)、ポール、ペグという3つのパーツごとにスタッフバッグに収められ、総重量は1.50kg。そのなかで付属のフットプリント(グラウンドシート)は必ずしも使わないで済むため、最小重量は1.35kgとなる。2人用としてはかなりの軽量さだ。

インナーテントとフライシート、そしてフットプリントは一体化したまま収納でき、折り畳むとひとつの状態にできる。ポールは3本で、テントの上部で交差するものが2本、フライシートを持ち上げて前室を作るためのものが1本だ。

ペグは8本。これはテントのボトムと前室を固定するために必要な本数のみで、フライシートの中ほどに結び付けるオレンジ色の張り綱(ガイライン)用のものは含まれていない。買い足すのは面倒なので、できることならばポールの4カ所から延長する張り綱用のペグをあと4本追加して販売してもらいたいものだ。ちなみに、ポールとペグの素材はDAC社の軽量で強靭なアルミ合金である。

インナーテントなどを入れるスタッフバッグは、かなりの大型だ。その気になればペグどころかポールまでいっしょに収納でき、バックルでしっかりと留められる。このときのサイズは、長さ44×直径15cmほど。しかも防水性であり、濡れたテントをしまっても、外部に水が漏れてこない。

しかし、その分だけ空気は抜けにくく、できるだけ圧縮してパッキングしたい人は少し苦労するかもしれない。

以下の写真は、設営した状態のエル・チャルテン2Pである。外観的な最大の特徴は、フライシートの外側にポールが位置していることだろう。エル・チャルテン2Pは、フライシートのグロメットに差し込むことで湾曲させたポールに、フライシートのフックをかけて立体化させる、吊り下げ式テントなのだ。

また、フライシートの下部が地面すれすれになっていることもわかるだろうか。エル・チャルテンはインナーテントが通気性の高いメッシュ地なのに、夏場だけではなく冬場も使える「4シーズン用」をうたっているユニークなテントであるが、それはフライシートと地面の隙間から雪が吹き込みにくくなっているという、このような構造にもあるのかもしれない。

ポールはブルー系の2色に色分けされており、前室を作り上げる短めのポールだけくすんだ色合い。設営時には一目でわかって便利だ。

フライシートに付けられたフックは指へのかかりがよく、簡単に脱着できる。このフックには鋭利な部分もなく、収納時にフライシートを強く折り畳んでも傷めることはないだろう。

フライシートの下のインナーテントは、トグルでフライシートの裏側に連結する。

ポールにフライシートの表地を引っかけ、フライシートの裏地にインナーテントをさらに引っかける……。そんな構造になっているわけだ。収納時はフライシートとインナーテントを取り外す必要がなく、いっしょに畳めるので、設営時、撤収時ともに時間をかけずに済ませられる。

フライシートには、2か所にベンチレーターが設けられている。湿気と熱気をここから逃がし、内部の結露を可能な限り少なくしようという配慮だ。

この部分は小さなプレート状のパーツで強制的に開くことができ、悪天候時はすぐに閉じることもできる。

ただし、このプレートを固定する面ファスナーは少し使いにくい。上部には3×3cmほどの大きめのものがついていて楽に固定できるのだが、下部は1×1㎝程度の小さなもので、外れやすいのだ。

悪天候時は上下の面ファスナー通しをくっつけてベンチレーターを閉じることができるものの、強風が吹き込めば、あっという間に剥がれてしまいそうである。この点はちょっと心配だ。

こちらはベンチレーター部分をテント内部から見た様子である。ベンチレーターが2カ所といっても、それらはテント最上部の至近距離にあり、内部に吹き込んだ空気がテント全体に行きわたるわけではない。だが煙突のような効果は高く、内部で温まって上昇した空気はすみやかに排出される。

インナーテントのメイン素材はメッシュということもあり、サイドから流れ込んだ風が内部の空気を押し出す効果も期待できる。

 

さらに細部をチェック。最大の特徴である「水を弾くメッシュ」とは

次に、テントの地面への固定方法をチェックしてみよう。エル・チャルテン2Pは、他のテントにはあまりない、おもしろい特徴をいくつか持っている。

上の1枚目の写真はフライシートのサイドで、長さを調整できるコードがつけられている。この部分にコードがあるのは当たり前ではあるが、わざわざ調整できるようにしているものはあまり多くない。

2枚目の写真はテントの4隅部分。インナーテントとフットプリントには小さな金属製フックが取り付けられており、これらをフライシートのテープ部分に引っかけて一体化できる。収納時に外す必要はなく、インナーテントだけではなくフットプリントもいっしょに畳めるのだ。

上の1枚目の写真は、インナーテントの出入り口部分。ここにループがつけられているテントは非常に少ないが、ペグで固定すれば強風で吹き上げられる心配が減り、とても有用だ。個人的には、非常に気に入ったディテールである。

2枚目の写真はフライシートの外側から延びる張り綱で、蓄光性で夜には光る“自在”で長さを調整する。この自在が地面側ではなくテント上部側にあるのがひとつのポイントで、張り綱の滑りがよくなり、ペグを打ってからも長さの調整がしやすい。細かなことだが、気が利いている。

インナーテントやフライシートの出入り口を巻き留めるトグルにもこだわりがあるようだ。

メッシュ地のインナーテントのほうでは、トグルに合わせるのはナイロン製のループ。その一方で、フライシートのほうは、トグルに金属のリングを合わせているのがおもしろい。もっとも、ここに違いを出す理由は、考えてみてもよくわからなかった。どちらかといえばトグルを差し入れやすいのはリングのほうであり、それならばどちらもリングでよいように思えるのだが……。なにか理由があるのだろうか?

インナーテントの出入り口のパネルは、ファスナーで開け閉めする一般的なタイプだ。このファスナーは引き手がダブルで、どこからでも開くことができるのは便利である。

だが、引き手の滑りが悪く、引き手を引くとメッシュ地に無用なテンションがかかり、スムーズに開閉できない。反対に、風や体重でテントに圧力がかかったときには入口が簡単には開かないともいえ、見方を変えればメリットなのかもしれない。だが、それ以上にストレスを感じざるを得ず、ここは改善してもらったほうがよさそうである。

さて、ここまであえて詳しく触れないようにしてきたが、エル・チャルテン2Pの最大の特徴は、インナーテントに使われているメッシュ地だ。これは特殊な「モノフィラメント」という素材で、水を弾く力が抜群によいとされている。

格子状に強靭な糸を織り込んだリップストップ素材でもあり、触った感じは少しゴワついている。色はブラックで、テント内からメッシュ越しに外部の景色を眺めても、ホワイト系のメッシュとは異なり、大きな違和感はないのがいい。しかし、好天の日中はテントに水滴がつくはずもなく、モノフィラメントの効果のほどは判断できないため、この点は後ほど改めて確認したい。

 

天候が変わり、曇天から荒天へ。ベンチレーション、結露は果たして。

エル・チャルテン2Pは、前室の奥行きが65㎝あり、広々としている。ブーツを置いてもブーツ上部がフライシートに触れず、たとえフライシートに結露が生じていても水分を吸い込まずにすむはずだ。

注意して作業すれば、悪天候時は調理も可能である。しかも出入り口は2カ所。このテントを2人で使う場合はそれぞれを専用の出入り口に使い分け、1人で使う場合は、一方にブーツを置き、もう一方を調理スペースにする……などという使用方法も考えられる。

内部スペースは、縦130×横210×高さ100㎝。2人で使うには少々狭く、1人で使うと少々広い……といった現代のテントではスタンダードなサイズ感だ。

前室が両サイドにあるために、インナーテントの出入り口を開け放しておくと、とても解放的な気分になれる。とくに蒸し暑い夏場に使う際はとても快適だろう。

出入り口と前室が両サイドにあり、フライシートは左右一方だけでも、左右同時にも開け放つことができるエル・チャルテン2Pは、使用人数、日光や風の向き、気温、虫の有無などに合わせ、さまざまな使い方ができる。

上の写真は、その一例だ。最小重量1.35kgという超軽量タイプで、ここまで幅広く変化させられ、快適に使えそうなテントは珍しい。とくに好天時は実力を発揮してくれそうである。

だが今回のテスト時、十勝連峰は夕方から悪天になってしまった。周囲にはガスがたちこめ、フライシートには細かな水滴がついていく。

上ホロ避難小屋のテント場はほぼ稜線上にあるといってよく、強風も容赦なく吹き付ける。僕は以前、同じ場所で悪天候に遭遇し、テントが壊れそうな強風下で停滞を余儀なくされたこともあるが、今回はそれほどではないものの、最終的には強風にあおられ、テントの前室が変形してしまうほどになってしまった。

こんなときはテント内で寝袋にくるまって寝ていたいところだが、テントのテストには最適ともいえる状態である。そこで外に出てテントの状態をチェックしてみると、いくつかの問題が生じていることがわかった。

天候が悪化する前にベンチレーターは閉めていたが、やはり面ファスナーの面積が狭く、入口が開いてしまっていた。ここから風が吹き込むくらいなら大きな問題はないが、横殴りの雨が吹き付けてきたら内部の浸水は避けられない。また、フライシートの前室部分も小さな面ファスナーでフラップ部分を留められるのだが、この部分も同じように剥がれ、ファスナーが露出していた。このままではファスナー部分から水が浸透し、内側に流れ出してしまいそうだ。これらの部分にはもっと面積が広いものか、強力タイプの面ファスナーを使わねば、悪天候時は心配である。

夜には強風とともに雨になり、フライシートに降りかかる雨水は弾丸のような音を立てた。テント内部の湿気のために結露も起こり、フライシートの外側は雨で、内側は結露でびっしょりと濡れている状態になってしまった。雨水と結露による水濡れは、もちろんエル・チャルテン2Pに問題があるわけではなく、山中に張ったテントならばどんなものにでも起こりえることだ。

エル・チャルテン2Pの特徴は、撥水性が高いモノフィラメントを使用していることによる「結露への強さ」である。もちろん結露に強いといっても、結露自体が生じないわけではない。フライシートが地面近くまでフライシートが覆うこのテントは、むしろ結露しやすい構造だ。実際、フライシート裏側に付いている水滴の量は非常に多かったのである。

だが、インナーテント内の濡れはわずかでしかない。一般的なテントであれば、フライシートに付いた結露はインナーテントの生地をも濡らし、次第に内部にも水滴がついて湿っぽくなってくるものだが、このテントの内部は予想以上にドライなままなのである。

その秘密こそが、先に述べた「モノフィラメント」だ。このメッシュ素材は水を弾く力が驚くほど強く、フライシートから降り落ちてきた結露の大半をシャットアウト。結露による水はメッシュ地の上で玉のように弾かれ、集まった水分は表面を流れ落ちてしまう。試しに、生地の上にくぼみを作って水を溜めてみたが、それでも水が滴り落ちてこないほど。本当にすばらしい撥水力だ。

ただし、いくら撥水力が高いといっても、やはりメッシュ地である。過度にテントを揺らせば水滴がメッシュ地を通って内部に落ちてくることは避けられず、今回のようにテントが強風にあおられている状況であれば、ある程度の水がインナーテント内に降りかかってくる。だが、それでも大半の水分を弾き飛ばしてくれており、モノフィラメントという特殊素材の力を感じずにはいられなかった。

 

まとめ: 解放感に大満足! 3シーズン用として考えれば、積極的に使いたい

翌朝は薄曇りのなかでテントを撤収した。フライシートは雨水と結露に濡れてしまったが、撤収前に乾燥させるのは不可能なので、そのままスタッフバッグへ収納してしまう。

こんなとき、防水性のスタッフバッグは心強い。ただし、素材自体は極薄であり、穴が空かないように注意して使う必要はありそうである。

「4シーズン用」で「結露に強い」というエル・チャルテン2P。僕はこの後も北海道内の他の山で何度も使用してみた。そのうえで思うのは、このテントのメッシュ素材は当然ながら風を通してしまうため、冬山を含む4シーズンにはあまり適していないなのではないかということだ。低温下では、やはり寒さを感じやすいのである。だが、3シーズン用として考えれば、あの解放感は非常に快適。僕ならば冬は使わないだろうが、春から秋にかけては積極的に使用したい。

その一方、結露にはたしかに強かった。結露自体の発生は抑えられるものではないとしても、インナーテント内があれだけドライに保てるのは、大きな長所だ。この点でも真冬よりも蒸し暑い時期のほうが、このメリットを生かせそうである。面ファスナーなどのディテールを見直せば、ますます快適なテントして活躍するのではないだろうか。

 

今回登った山
上富良野岳
北海道
標高1,893m

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テント用品 日本の山
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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