冬山でスマホを使う時の7つの注意点。工夫と知識で、冬山でもスマホを使いこなそう!

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冬山こそがGPS機器の活躍の場だが、「スマートフォンは寒さに弱い」と聞くと、スマホを信頼して使うには心配も多い。そこで今回は、氷点下を下回る世界でスマートフォンと登山アプリを使いこなすための秘伝のコツをお伝えする。

こんにちは、松本です。ジオグラフィカというスマホ用のGPSアプリを開発しています。

ジオグラフィカ iPhone版 ジオグラフィカ Android版

最近では、一時期温かい日もありましたが、やはり冬は冬。寒いですね。今回はスマートフォン(以下、スマホ)を冬山で使うための情報を7項目に分けて説明します。寒い場所でスマホは使えないと思われがちですが、実は結構使えます。

今回は、冬山でスマホを使う時の7つの注意点について説明します。

その1 一般的なスマホは冬山での動作を保証されません

いきなりネガティブな情報ですが、一般的なスマホの動作保証温度は「0℃以上40℃程度未満」となっています。例えば、iPhoneは0℃~35℃が動作温度とされていて、一般的なAndroidスマホも同じようなものです。

MIL規格(米国国防総省の調達基準)対応の『TORQUEシリーズ』(京セラ)や『arrowsシリーズ』(富士通)など一部の機種は、-21℃~50℃の範囲で動作を保証していますが、一般的にはそこまでの低温は保証されません。

メーカーが保証する温度としては冬山の寒さには耐えられないことになります。

 
MIL規格14項目準拠のarrows M03。-20℃の動作を保証する

その2 実際にスマホは冬山で使えないのか?

メーカー保証の温度範囲では-10℃や-20℃の冬山でスマホを使えないことになってしまいますが、実際はどうでしょうか? 0℃以上でしか使えないのであれば、例えば冬の北海道では屋外でスマホを使えないことになりますよね? 東京だって冬の朝は氷点下になることもあります。

私が試した範囲では、氷点下の冬山でもスマホを使用することは可能でした。-15℃で風速10m程度の環境、つまり体感温度-25℃の環境でも、スマホをGPS端末やカメラとして使用しています。もちろん、メーカー保証外なので自己責任にはなりますが、冬山でも使えないことはありません。

-15℃程度なら実績としてスマホを使えている

その3 バッテリーの減りが早く感じる理由

冬山でスマホを使う場合よく言われるのが『バッテリーの減りが早い』ということです。なぜ寒いとバッテリーの減りが早くなる(あるいは早く感じる)のでしょうか?

それを理解するにはまずバッテリーの残量とはなにか? を知らないといけません。一般的にスマホのバッテリー残量は、稼働時間なども加味されますが、電圧から計算されます。スマホに入っているリチウムイオン二次電池は残量が多い時は電圧が高く、残量が減ると電源も下がります。下がった電圧が一定未満になると残量ゼロと表示されます。簡単に言えば『電圧の高さ=電池の残量』です。

ところが、バッテリーの電圧は温度の低下でも下がります。バッテリーが冷えると電圧が下がり、下がった電圧から残量を計算するために見かけ上の残量が減ってしまうわけです。そのため寒い場所ではバッテリーが早く減っているように見えます。

しかしバッテリー内のエネルギーが勝手に減ったわけではありませんから、スマホを温めれば残量もある程度復活します。

その4 iPhoneは寒さに弱い?

Androidスマホと比べてiPhoneは寒さに弱く、ちょっと寒いとすぐに電源が落ちてしまうと思われがちです。確かに旧機種のiPhone5や5sなどは寒さに弱く、場合によっては0℃以上でも電源が落ちていました。しかしiPhone7で防水防塵になった影響でしょうか? 寒さに強くなり、-15℃程度であれば冬山でも使えるようになりました(実体験です)。

つまり、iPhoneが寒さに弱いかどうかは世代によります。寒いところで使う場合はiPhone7以降を選んでください。

iPhone7以降は冬山でも電源が落ちる事が少ない。-15℃程度なら普通に使える

その5 低温シャットダウンを起こさないために

スマホ(特にiPhone)を低温シャットダウン(電源OFF)させないための対策をご紹介します。

バッテリーの残量を多めに保つ

バッテリーの残量は電圧で決まるというのは前述の通りです。電圧が一定未満になるとバッテリーを保護するために自動でシャットダウンをしてしまいます。そうならないためには残量を多くしておくことが大事です。

朝イチで充電を100%にしておき、休憩のときなどに充電できる環境なら追加で充電しておきましょう。モバイルバッテリーとケーブルは、忘れずに携行しておきましょう。

体温で保温する

スマホはミドルウェアのポケットなどに入れて体温で保温してください。使い捨てカイロまで使う必要はありません。体温で温めれば十分です。

写真を連写しないようにする

スマホを外気に晒したままカメラで連写すると自動シャットダウンが起きやすくなります。バッテリーが冷えた状態で負荷が掛かると電圧が下がるためです。写真は連写せず、1枚撮ったら少し休ませてから再度撮ってください。

防水機種でも出来るだけ濡らさないようにする

本体の表面が濡れた状態で風に吹かれると余計に冷えます。防水の機種でも冬山では濡らさないように注意してください。防水ケースやチャック付きのポリ袋に入れておくのも有効です。

その6 Androidの防水機種は寒さに強い

iPhoneに比べてAndroidスマホは寒さに強い機種が多いです。MIL規格対応のスマホはもちろん寒さに強いのですが、そうでない機種でも-20℃程度の寒さに耐えられる場合があります。

個人的な実験となりますが、「XPERIA Z5 Compact」や「Nexus5」、「Galaxy S8+」などを1時間ほど冷凍庫(-20℃)に入れて動作をチェックしましたが、問題ありませんでした。非防水の機種も含めて数機種試しましたが、バッテリー残量もあまり減らず、冷凍後でも軽快に動作します。iPhoneだと-20℃で冷凍後に負荷を掛けるとシャットダウンしてしまいます。

ただし、HUAWEIのスマホは寒さに弱く、冷えるとカメラ機能が使えなくなったり電源が落ちたりしてしまいます。非防水で寒さに弱いため、冬山では使えそうにありません。前回も書きましたがHUAWEIのスマホは登山向きではありません。

★選ぶ基準は? 登山を前提にした場合のスマホの選び方。

Androidスマホは冬山でも不安なく使える機種が多い

その7 タッチペンとストラップが便利

冬山では手袋をするため、タッチパネルの操作が困難になります。スマホ対応の手袋もありますが、細かい操作やりにくかったり、しばらく使っていると反応が悪くなったりします。

そこで、手袋をしたままでもスマホを操作できるように、冬山ではタッチペンを使うことをおすすめします。タッチペンであればオーバー手袋をしていても細かい操作が可能です。

冬山ではタッチペンを使うと手袋をしていても使えて便利

スマホにストラップを付けておくのもおすすめです。新雪にスマホを落とすと探すのは困難になります。ストラップがあれば懐に入れたスマホを取り出しやすく、落下でのロストや破損を防げます。

私は冬山ではストラップにタッチペンを連結しています。こうしておけばスマホ本体もペンも無くすことなく使えます。

大抵の地図アプリは『ダブルタップの2回目を離さずに上下』させる事でズーム操作が出来ます(ただし山と高原地図は出来ません)。この操作方法ならタッチペン1本でズームイン/アウトが可能です。

ストラップとタッチペンを連結しておくと紛失を防げるメリットもある

今回のまとめ

  • メーカーは保証していないが防水防塵スマホであれば冬山でも使える。
  • バッテリー残量を多く保ち、体温で温めて過負荷を掛けないようにすれば自動シャットダウンが起きにくい。
  • タッチペンとストラップが便利。

理屈がわかっていれば冬山でもスマホを活用できます。便利に使って楽しく安全な冬山登山を行ってください。

プロフィール

松本 圭司

アプリ作家、ライター、料理研究家などマルチに活躍する山好き。江戸川区在住。

アプリの代表作「ジオグラフィカ」は多くの登山者に利用され、GPSアプリに関する講演・講習なども行う。

ほか、国土マップR、アルパカナビ、速攻乗換案内、雨かしら?雨時雨などもリリースする。クリーン&ビルド株式会社所属。

山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS徹底使いこなし術

かつては高価で手の届かなかったGPS機器は、スマートフォンの普及・登場以来、誰もが使えるものになった――。初心者向けのノウハウから、GPSの裏技まで、登山アプリとスマホGPSを120%使いこなし術を解説します!

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