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登山用ダウンジャケットの賢い選び方 -登山の保温着を考える 1-

登山道具の買い方・選び方、ショップのスタッフに聞きました!
道具・装備 2019年01月17日

寒い季節はもちろん、夏山でも天候変化に備えて持っておきたい「保温着」としての中わた入りジャケット。マストアイテムとはいえ、ダウンや化学繊維の中わた(以下、化繊綿)など種類はさまざまで、登山初心者には適切な選び方が分からないという方もいるだろう。そこで、登山する季節や遊び方に合わせてどのように選べば良いのか、さかいやスポーツ 高橋さんに「ダウンジャケットの賢い選び方」について聞いた。

取材/文=辻 歌

 

ダウンと化繊綿の違いは?

ライターT:中わたが入ったジャケットにはたくさんの商品があって、選ぶポイントが難しいです・・・。

高橋さん:登山用のウェアで「インサレーション」と呼ばれる中わたが入った保温着には、大きく分けて2タイプあります。一つは水鳥の羽毛であるダウン、もう一つは化繊綿を使ったものです。いずれもメリットとデメリットがあるので、好みや用途に合わせて選ぶといいでしょう。

さかいやスポーツ ウェア館


ライターT:ダウンと化繊綿、それぞれの特徴は?

高橋さん:まずダウンは、保温性とコンパクト性・軽量性のバランスに優れています。ただし、汗をかいたり雨や雪で濡れてしまったりしたときに保温性が保てなくなるというデメリットもあるんです。そこで、濡れることが想定される登山をする場合には、化繊綿のインサレーションを選ぶというのが選択肢の一つになってきます。化繊の種類によって特性が異なりますが、濡れても保温性を保ちやすいものが多い。手入れのしやすさや比較的価格が安いというメリットもあります。

ライターT:どちらを選べばいいか、迷いますね。

高橋さん:それぞれの中わたの優れた点、使用上で注意したほうがいい点をしっかりと知って、その上で自分にとって必要なものを選ぶことが大切です。今回は、ダウンについて詳しくお話します。
※化繊インサレーションについては次回更新の「登山の保温着を考える 2」で紹介

 

ダウンジャケットの基本的な用途は「保温着」

ライターT:初歩的な質問ですが、ダウンジャケットは、どんなときに着るものでしょうか?

高橋さん:ダウンと化繊綿に共通することですが、インサレーションジャケットの基本は「行動着」ではなく「保温着」だということ。夏でも冬でも季節を問わず、山では「着て歩くものではい」ことを念頭に置いてください。行動をやめたときの「保温着」だから、着るシーンは山行中の休憩時や山小屋やテントに着いてから。つまり、山では「持って歩くことがメイン」なのです。だから、化繊綿に比べて軽さとコンパクトさに優位性があるダウンのジャケットを、絶対に濡れないようにして持ち運ぶのがいいのではないかと。

コンパクトな「薄手タイプ」のダウンジャケットは、携行するときに重宝


ライターT:ダウンジャケットが濡れるのは厳禁、ですね!

高橋さん:ダウンジャケットは、生地の中に封入されている羽毛をふっくらと膨らませることでデッドエア(衣服の内部に抱き込まれる、動かない空気の層)を作り出して保温性を確保します。羽毛は濡れると膨らみにくい性質のため、保温性が著しく低下することに・・・。水濡れだけでなく湿気にも弱いので、汗をかくシーンで着るのは推奨できません。

ライターT:だから基本的に、着ては歩かないということでしょうか。

高橋さん:一般的な登山者は、いくら薄いダウンジャケットでも、着たまま山を登っているとザックを背負っている背中などにだんだん汗をかいてきます。その汗の湿気で羽毛がへたってしまい、本来の保温性を発揮できないことに。さらに、羽毛が乾かないまま着続けていると汗冷えを起こす原因にもなります。

ライターT:歩きはじめに寒いからといって、油断して着たままではいけないですね。

高橋さん:ただし例外があって、特に冬場、コースタイム通りではなくゆっくり歩く人には当てはまらないことも。たとえば、年配の方が冬山へ氷柱を見に行くなど散策程度に歩く場合には、必ずしも「着て歩いてはいけない」とは限らないんです。着る人の発熱量や代謝が少ないなら、ダウンジャケットを着たまま歩いても大丈夫。逆に、着ないと寒い場合もあります。

ライターT:着て歩くかどうか、自分で判断する基準はありますか?

高橋さん:ダウンジャケットを着て歩いてもまったく背中に汗をかかないようなら、着たままでもOK。要は、年齢や歩き方ではなく代謝の問題なので、一つの判断基準にしてください。

 

暖かさには羽毛の“ボリューム”が重要

ライターT:山に携行する「保温着」としてダウンジャケットをおすすめされていますが、次に、その中でどんなアイテムを選べばいいかを教えてください。

高橋さん:登ろうとしているのがどの季節のどんな山か、日帰りか小屋泊かテント泊か。また、雪山登山やアイスクライミングをするかなど、アクティビティに合わせて選んでください。想定している着用シーンに応じて、ダウンジャケットに封入されている羽毛のボリュームで選ぶのがポイントです。

同じブランドのダウンジャケットでも、さまざまな羽毛量のアイテムを展開


ライターT:羽毛の量が重要なのですね。フィルパワー(FP)というダウン製品特有の数値も気になるところですが・・・。

高橋さん:フィルパワーとは羽毛のかさ高性を示す数値で、この値が高いほど重量に対しての保温性に優れます。600フィルパワー以上が良質とされ、現在は1000フィルパワーを超す高スペックのアイテムも。もちろん、フィルパワーの数値が高いに越したことはないのですが、それよりも羽毛のボリューム感のほうが大事だと考えています。

ライターT:なぜでしょう?

高橋さん:よく「極寒地に行くから、絶対に900フィルパワー以上のものを!」と探す方がいらっしゃいます。でも、フィルパワー値が高いのに羽毛量の少ないものを選んでいたら元も子もない。900フィルパワーの薄いダウンジャケットを選択するくらいなら、多少重量が重くなっても600フィルパワー程度の極厚なものを買った方が暖かいです。フィルパワー値が高いほど高価になるので、どの程度の保温性が必要なのかを考慮して、お金に余裕があれば買ってください(笑)

ライターT:近ごろ、ファストファッションでもダウンジャケットがありますが、それを登山に使っても大丈夫でしょうか?

高橋さん:登山用に作られているか、そうでないか――それが異なる部分です。だから、「保温着」として考えればファストファッションの製品もダメではない。ただ、登山用に作られている製品は、山で使うときの快適性や機能性を熟考されているから安心感があると思います。でも、「保温着」としてダウンジャケットを持って行かないよりかは、何であれ持って行く方が絶対にいい! それは覚えておいてほしいですね。

ライターT:先ほど重要だとおっしゃっていた「羽毛のボリューム感」は、どう見分ければいいですか?

高橋さん:羽毛量が記載されているアイテムもありますが、ブランドごとにばらつきがあるので目安にはなりにくいです。よれよりも、試着したときの感覚が大切! 人によって体感温度は異なるので、着た感覚で選んでもらうのが一番です。とはいえ、羽毛のボリューム感による特徴を知りたいでしょうから・・・私たちが目安としている「薄手」「中厚手」「厚手」に分けてご紹介しましょう。

 

厚さのタイプ別・ダウンジャケットの特徴

高橋さん:まず、夏山を中心とした用途なら、いれゆる「ウルトラライト」や「インナーダウン」と呼ばれる「薄手タイプ」でも十分対応できる保温性があります。他のシーズンに比べ、とりわけ持ち歩くことが増えるので、できるだけコンパクトになり、軽いものを・・・と追求すると、「薄手タイプ」を選ぶのがおすすめです。このタイプの共通点は、薄く軽くするためになるべく無駄なディテールを省いているところ。手元やフードまわりの仕様はシンプルですが、そもそも保温以外の機能性をそこまで必要としないアイテムなので問題ありません。

ライターT:夏以外のシーズンでの着用や、寒がりの人だと保温性が心配になることもありますね。

高橋さん:そのときは、「中厚手タイプ」を検討してみてください。基本的な考え方は、「薄手タイプ」と同じくシンプルなつくりで、羽毛の封入量が増えるというイメージです。羽毛量が多いぶん「薄手タイプ」に比べるとかさ張りますが、もちろん保温性は上がるので、一般的な縦走登山や中級クラスの雪山などにも使えます。ちなみに、こちらも携行することが前提だから、コンパクトに収納できるのが魅力です。

ライターT:見た目はかなり厚めに思えても、「中厚手タイプ」に分類されるのですね!

高橋さん:中厚手と厚手でボリューム感は変わらなく見えるけれど、実は「厚手タイプ」になると用途が異なるんです。私たちの考える「厚手タイプ」は、羽毛量の多さに加えて、極寒の野外アクティビティにも対応できる仕様になっているものを指します。たとえば、アイスクライミングのビレイ時や雪洞を掘るときにも使えるよう、表地に水を弾きやすい耐水性のあるものが使われている。さらに、体をカバーできる範囲を広くするため着丈が長めで、首まわりや前立てのフラップ部分から寒気が入りにくく保温性を保てるデザインに。また、雪の浸入を軽減できるフード付きが多いです。

ライターT:休憩時の「保温着」の用途として持ち歩くには重くてかさ張るし、オーバースペックかもしれませんが、寒いときにエクストリームなアクティビティをする方には必須のアイテムになりますね。

高橋さん:エクストリームなことをしない登山者の場合、「薄手タイプ」や「中厚手タイプ」の薄くてやわらかい生地のほうが着心地がよく、収納時にコンパクトにもなる。用途によって、厚みにプラスして、生地やデザインの特徴にも注目して選ぶといいでしょう。

ライターT:最後に、厚さタイプ別におすすめのアイテムの紹介をお願いします!

高橋さん:「薄手タイプ」は、とにかくコンパクトになるこちらがおすすめ。胸ポケットに本体を小さく収納できるポケッタブルタイプです。ダウンをベースに、遠赤外線効果のある光電子®をミックスした中わたを使用することで、化繊のメリットも兼ね備えています。

製品情報

ザ・ノース・フェイス「ライトヒートジャケット」

サイズ
S、M、L、XL、XXL
素材
<表地>パーテックス カンタム ダイヤモンドフューズ(ナイロン100%)
<中わた>クリーンダウン光電子PRO(ダウン72%、ポリエチレン20%、その他の羽毛8%) <裏地>パーテックス カンタム(ナイロン100%)
本体価格
23,000円(税別)

 

高橋さん:「中厚タイプ」では、しっかりとボリューム感があって保温性が高いこのダウンジャケットがいちおし。一般的に、これくらいの厚みになるとかさ張るものですが、こちらはかなりコンパクトに収納できるのが特長です。

製品情報

ウエスタンマウンテニアリング「フライトジャケット」

サイズ
XS、S、M、L、XL
素材
<表地>0.9ozマイクロドットリップストップポリエステル
<中わた>850+フィルパワー グースダウン
本体価格
40,000円(税別)

 

高橋さん:極寒地やアイスクライミングのビレイ時などに重宝する「厚手タイプ」。表地にはっ水機能があるオーバージャケットで、ヘルメット着用に対応できるフード付きです。1000フィルパワーのはっ水ダウンとサーモマックスという化繊綿をミックスすることにより、濡れても極端なロフトの低下を軽減。寒気が流入しないつくりや、グローブを着けたままでの着脱のしやすさなども考慮されています。

製品情報

ティートンブロス「ハイブリッド ダウン フーディ」

サイズ
XS、S、M、L、XL
素材
<表地>15D リップストップナイロン
<中わた>1000フィルパワー ダウン、サーモマックス
本体価格
53,000円(税別)

 

次回は、ダウンとは異なる魅力がある化繊綿を使ったジャケットについて考察。日々進化し続けている化繊のインサレーションは、「保温着」だけでなく「行動着」にも・・・!? 引き続き、さかいやスポーツ 高橋さんにうかがいます。

 

教えてくれた人

高橋 典孝(さかいやスポーツ ウェア館)

山の世界で働いて20年のベテラン。ウェアに関する知識はオタク級だが山道具も大好き!!
ゆったりオートキャンプからガッツリ登山まで何でもこなすが特に最近は、トレイルランニング、テンカラ釣りに没頭中。

さかいやスポーツ

創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。

住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分

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