正しく使えてる? 雪山でのピッケルの持ち方・活用法

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ピッケルの持ち方・活用法

質問:先日、雪山登山に行ってきた友人が、「ピッケルを逆さまに持っているヤツがいてさ~」と笑い話のように話をしていたので、僕も合わせて笑っていたのですが、内心は「自分のピッケルの使い方はあっているのか?」と心配に思っていました。歩くときはストックのようには使っているのですが、ほかの出番は今のところありません。

 

もともと足場切りの道具だったピッケル

ピッケルは、雪山の様々な場面によって、実に多様な使い方をします。だから「逆さまにもっているヤツ」を「間違った使い方をしているヤツ」と捉えるのは、少し違うかもしれません。

もともとピッケルは、凍結した氷雪の斜面に一歩ずつ足場を切るための道具でした。その際にはシャフトの下の方を持ち、ブレード(ヘッドの幅広い部分)で足場切りを行っていました。ただ、この“足場を切る作業”はアイゼンの登場(特に前歯が付いたモデルの登場)によって、一般的には行われることが少なくなりました。

 

主にストックのように持ちバランス保持のために使う

「歩く時にストックのように使っている」とのことですが、現在のピッケルの用途の9割は、このストックのように持ちバランスの保持のために使います。

強い風の中ではピッケルをシッカリと持ち、支えとして使います。バランスの悪い歩行路を行く際は、山側にピッケルの石突部分を突きながら進みます。ピッケルを刺すことで、スリップを初期の段階で止める(初期制動)ためです。

この時の持ち方としては、シャフトの真上のヘッドの部分を上から持ち、鉛直方向に押さえることで安定させます。また、ピック(ヘッドの尖った部分)の向きは、登りの際には前方側に、降りの際には後方側に持つことで転倒した時にピックを雪面に刺して、大きなスリップや滑落するのを防ぎます。

ピッケルの基本的な使い方。登りなので、ピックは前向きに

 

ピッケルの応用的な使い方は先達に教えてもらおう

その他には、シャフトの部分を握って氷雪面に打ち込み手がかりとして使ったり、柔らかい雪にはシャフト部分を全て埋め込みピッケルそのものを支点にしたり・・・など、実に様々な使い方ができます。

ただ、尖った部分があり、使い方を間違えると凶器にもなりうるのがピッケルです。正しい使い方を独学やネットの情報だけで学ぶのは限界があります。「自分の使い方はあっているのか?」は、やはり、ベテランや先達に一度、指導を受けた方が良いのではないでしょうか?

ピッケルを使った滑落停止の練習

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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