雪山での歩行時間。無雪期用のコースタイムって参考になる?
質問:雪山の山行計画を立てています。雪山のガイドブックに載っていない道を歩くとき、無雪期用のコースタイムってどれくらい参考になりますか?
雪山の歩行時間は、同じコースでも状況によって変わる
これは、非常に難しい質問です。・・・と言うのは、積雪によって登山ルートの状況は大きく変わるからです。例えば、無雪期には岩がゴロゴロして歩きにくい個所が、積雪の上に先行者のトレースが付き、とても歩きやすくなっている、という場合には、コースタイムより早く、快適に歩くことができるはずです。逆に本来の雪山の姿・・・誰も歩いていない雪のコースに自分でルートを探しだし、一歩ずつラッセルして行動するなら、コースタイムより大きく時間が増えることもあるでしょう。
どちらにしても現場に行ってみないと状況がわからないので、無雪期のコースタイムで計画を立てるのは難しいです。
10時間で200m程度しか進まなかったことも
これは極端な例ですが、かつて、ドカ雪の中、撤退の下山をしたときのことです。頭を越える積雪があったので、ザックを置き、交代で雪をかき分け、踏み固め、一歩ずつラッセルして進みました。朝7時から夕方17時まで、実に10時間かかって、二万五千分一地形図で1cm未満、つまり200m程度しか進まなかったこともあります。これがラッセル未経験者ばかりなら、当然ですが、毎年、北アルプス北部や上越で鍛えてきた者ばかりだったのです。
無雪期のコースタイムに対して、早いときもあれば、遅いときもあります。更に、遅いといっても、一定の目安が付けづらいのが難しいところです。計画段階でコースタイムは参考としては使いますが、雪の山は天候や入山前の積雪状況、メンバーの体力、技術によって、状況が大きく変わるので、歩行にかかる時間も予想しづらいということを忘れないでください。
プロフィール
山田 哲哉
1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。
著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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