今年こそ親子で登山を始めよう! 信州登山案内人・石川高明さんに聞く「親子で登山・トレッキング」
八ヶ岳の山麓に住む信州登山案内人の石川高明さん、ガイドをしている中で、親子登山、ファミリーハイキングについての質問をされることが多いとか。そこで、これまでのご自身の体験をもとに「親子登山のノウハウ」を紹介する連載をスタートします。
春が近づいてきています。今年こそ親子で登山をしたいという方、ぜひ読んでみてください。
はじめまして。信州登山案内人の石川高明です。今月からこちらに「親子で登山・トレッキング」のコラムを担当します。
私は、ネパールやスイスに住み、それぞれ1~2年ほど現地でのトレッキングガイドを経験した後、2004年に帰国。さらに息子が3歳、娘が生まれたというタイミングで、八ヶ岳の山麓、標高1200mにある森のログハウスへと移住しました。
現在は登山案内人をしながら、アウトドアに根ざした生活をしています。
最近、ガイド業をしていて多くの問い合わせをいただくのが、「子供と登山したいのですが、どうしたら良いでしょうか?」という質問です。この質問には、「いつから登山に連れて行っていいの?」や「何を持って行ったらいいの?」、「どこに連れて行ったらいいの?」が、混在しているように感じます。
連載1回目の今回は、その中から「子供と登山したいけど、何を持って行ったらいいの?」について、お話ししたいと思います。
子供の登山でも揃えたい山の三種の神器
みなさんは、山の三種の神器って何だかご存知ですか? 登山をする上で、「この3つだけは最低限、揃えましょう」という登山アイテムを指していいます。答えはリュック(ザック、パック、バックパックともいう)、レインウェア、靴です。子供の登山においても、まずはこの3つは必要です。
まず、リュックについて。子供のリュックはあまり大きくないものを選びましょう。大きすぎると狭い場所でリュックが引っかかる場合があり、危険です。
余裕がありすぎると、ついいっぱい詰めてしまい、重くなりがちです。子供にはリュックを背負わせないという選択もありますが、後ろに転んだ時のクッションになりますので、背負わせることをオススメしています。
中身を取り出しやすいリュックが良いですね。あまり凝った作り(バックル式、ヒモ式)だと、子供が自分で荷物を取り出すことができません。ジッパー式が良いでしょう。
子供は肩幅が狭いので肩ひもがずり落ちてしまう場合があります。チェストストラップがないリュックでしたら、ベロクロテープ(面ファスナー)で代用ができるので、軽く留めてあげると良いでしょう
次にレインウェアです。レインウェアはきちんと選んであげてください。ゴアテックス製でなくてもいいですが、100円ショップのビニールカッパだと、蒸れて内側がびちょびちょになってしまいます。安いタイプでいいので、きちんとしたアウトドアショップで選んであげてください。
汚れを気にするよりも、むしろレインパンツなどを履かせて、思いっきり草滑りをさせる方が子供は喜びますよ。
靴に小石が入らないようにするスパッツ(ゲーター)というものがあります。子供用も当然あるのですが、泥だらけになる上に、履かせるのがたいへんという代物です。スパッツの代わりに、100円ショップに売っている、大人用のアームカバーが、子供の足の太さにちょうどいいので、ぜひ試してみてください。これなら汚れたり破けてもへっちゃらです。
最後に靴ですが、出かける対象の山が標高2000m以下で、未就学~小学生のうちは、登山靴でなくても大丈夫です。子供用の登山靴は高価な上、年に数回しか利用しない割には、子供の成長が早く、あっという間に足に合わなくなってしまいます。
親子登山、親子ハイキングで向かう山のレベルを考慮すると、それほど気に揉む必要はないと思います(ただし、小学生の子供を連れて槍ヶ岳に登ろう、という親御さんなら話は別です)。
靴を選ぶ際のポイントは
- 1)サイズは適正なものを履かせる
- 2)靴底がすり減った靴で登山はしない
- 3)靴下は重要。靴購入の際は登山に行く時に履く靴下を履いて試し履き
- 4)試し履きは最低でも30分時間をかける
- 5)靴を買いに行くのは、足が大きくなる午後がオススメ
我が家では、1歳6ヶ月前後でしっかりとしたシューズを購入して以降、ほぼ半年ごとに子供靴を買い替えていました。特に未就学の子供は、微妙な靴の中のあたり具合を説明できません。専門店では、子供のサイジング用につま先が透明になっている靴があって、ぴったりしたものを選んでくれます。
また、「これだ!」と思う靴があっても、しばらくその靴を履かせて店内を回ってみてください。歩いているうちに違和感があると、子供はすぐに「嫌だー」と歩かなくなります。これは大人の靴選びでも言えることですが、靴購入の際は最低でも30分、時間をかけてください。
そして、登山の時に履く靴下(化繊が良い)を履き、足が大きくなる午後に買うのが良いでしょう。
未就学の子供の場合、長靴でもいいと思います。その際には、靴下を厚めのものにして、サイジングに注意を払ってください。
お漏らしなどで靴下までびちょびちょになることもあります。替えの靴下は必ずお持ちください。
普段着で済むものは流用、でも綿のシャツはNG!
そのほかの装いについてですが、ここに示したのは親子で登山・トレッキング装備表(グリーンシーズン)の抜粋です。
親子夏山標準装備表
ベテランガイドでもこうした装備表で確認しながら山の準備をします。ぜひこうした表を元に、親子でトレッキングの準備をしましょう。なぜなら、こうすることで、親御さんが一方的に連れて行くのではなく、子供の参加意識が高まるからです。
装備表をみると、いろいろあります。さすがに、これを全部、しかもいっぺんに揃えるのだと、お金がいくらあっても足りません。でもよく見れば、タオルや帽子など普段使いのものを流用すれば良いものもありますし、防寒着は普段着ているフリースでも良さそうです。一方、アウトドアショップに売っているものは、たとえフリースであっても、登山に特化したもので、価格に応じて優れているのも確かです。
では、どうすればよいのでしょうか?
とりあえず、流用できるものはぜひ流用してください。余裕ができたら、専門店で買っていただければよいかと思います。
ただし、ひとつ注意点があります。普段から登山をしているアウトドア派の親御さんはご存知だと思いますが、登山ウェアにコットン(綿)製品はオススメしません。特にコットンの下着は汗の吸収が早く、肌触りもいいのですが、水分の放出に難があります。つまりかいた汗がなかなか乾かないので、いつまでも濡れて、汗冷えの原因になります。汗っかきの子供たちは、すぐに風邪を引いてしまいます。
ぜひアウトドアショップで子供用の化繊の下着を選んであげてください(化繊が肌に合わないお子さんの場合は、シルクやウール製もあります。夏でも薄いウールの下着はいいのです)。
また、帽子は必ず被せてあげてください。帽子は熱中症や日射病対策、さらにはケガ防止に役立ちます。
水筒は本人に持たせるのが良いですね。喉が乾けば自分から積極的に飲みます。子供の水筒は小さくて良いですが、親御さんのボトルは大きめに準備して、子供の水筒に継ぎ足してあげるといいでしょう。
次回は、親子登山の形態のひとつ。キャリーバッグで背負う登山について、ご紹介したいと思います。どうぞお楽しみに。
石川ガイドを講師に。親子登山の年間プログラムを各地で開催
「山の日」を契機に、八ヶ岳の山麓・原村で、過去3回行われた「山の日サミット」。石川高明さんはこのイベントで、親子登山を担当しています。
そして2019年は、この親子登山が、イベント当日を含む年間プログラムに拡大。「山の日サミット 親子のための登山・トレッキング ノウハウ講習会」として、机上での講習会や、実際の登山イベントを年間で予定しています。
3月21日(祝・木)には、東京のモンベル渋谷店にて、シーズン最初のプログラム「親子のための登山・トレッキング準備会&ショップツアー(説明会)」を、6月16日(日)には、長野県のモンベル諏訪店にて、同じテーマで講習会を開催する(定員各50名。参加無料。申込不要)。道具のことのみならず、いつ頃からどんな山に親子ででかけたらいいのか、などノウハウ盛りだくさんで実施するとのこと。
当日は、親子で登山準備するのに最適な「親子で登山・トレッキング装備表」を無料配布。また、年間スケジュールの説明もあります。興味のある方、参加希望の方は、こちらをチェックしてください。
ほか、八ヶ岳周辺などでも実践講座を開催。今年は家族で登山を始めたい、という方、ぜひチェックしてみてください。
■【山の日サミット】親子のための登山・トレッキング ノウハウ講習会
会場:モンベル 渋谷店
日時:2019年3月21日(木祝)11:00~12:30 / 13:00~14:30 ※2回開催
会場:モンベル 諏訪店
日時:2019年6月16日(日)13:00~14:30
プロフィール
石川高明さん
1967年東京生まれ。学生時代から登山に親しむ。最初に登った山が八ヶ岳。大手電機メーカーを2000年に退職し、世界一周登山の旅に出発。途上のスイス・ツェルマットで、“観光カリスマ”山田桂一郎氏の元で2年間、トレッキングガイドを勤める。帰国後、八ヶ岳の麓で子育てをすべく、長野県原村に移住。
各国の山岳地域を旅した体験や、スイスで観光業に携わった経験を活かし、地元地域や観光活性化のお手伝いをしながら、各種イベントを実施している。
原村観光連盟 副会長/八ヶ岳観光圏 観光地域作りマネージャー/公認スポーツ指導者 山岳指導員/長野県信州登山案内人/(株)八ヶ岳登山企画 代表取締役/登山歴30年/スノーシュー歴20年
子どもと一緒に山、行こう! 親子登山のススメ
子どもや孫といっしょに山に登ることは、登山愛好者にとって1つの夢ではないだろうか? しかし、子どもの気持ちを山に向けることができるか、安全な登山を伝えられるかなど、疑問や悩みも多い。親子登山に役立つ情報を、さまざまな角度から伝えていく。