まるで太古の地球のような場所! アイスランド・ロイガヴェーグル:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(13)

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旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第13回目は、アイスランド南西部にあるトレッキングコース、ロイガヴェーグル。火山灰や溶岩でできた灰色の大地からは蒸気が噴き出し、黄緑色の苔が生える。火山と氷河が織りなす太古の地球のような場所。約55kmの行程を4日間かけて歩いた様子をお伝えする。

 

山肌から蒸気が噴き出し、硫黄の香りが漂う

2016年8月20日(世界一周130日目)

アイスランドの首都レイキャビクを抜けたバスは、溶岩に黄緑色のモコモコした苔が生えた大地を進んでいった。地熱地帯とあって地面からはところどころ白い水蒸気が噴き出している。僕らは4WDのごついバスに乗りハイランドと呼ばれる内陸部の高原山岳地にある登山口へ向かっていた。

ノルウェー・ロフォーテン諸島を歩いた僕らは、北大西洋上に浮かぶ島国アイスランドを訪れた。

これから4日間かけてロイガヴェーグルというトレッキングルートを歩く。やがて未舗装路に入り、砂埃を巻き上げながら、時には川をザブザブと越えながら、荒野を奥へと進んでいく。歩き始める前からすごい景色を見せられて、否が応でもロイガヴェーグルの期待度が高まっていった。

砂埃を巻き上げて荒野を進むバス


バスはスタート地点となるランドマンナロイガルに到着。秘境感のある景色の中に、山小屋とたくさんのテントが映える、絵になる場所だった。しばらくは黒い溶岩地帯、そしてそこを抜けると樹木の無い赤茶色の山に鮮やかな黄緑色と灰色がマーブル模様のように混ざりあう、不思議な景色が広がる。山肌からは蒸気が吹き出し、硫黄の香りが鼻をついた。

ランドマンナロイガルを拠点に日帰りトレッキングも可能

歩き始めから不思議な景色の連続だ


一日目の目的地フラプティンヌスケルの小屋までは黒と白のモノトーンの世界。こんもりとした巨大な丘がいくつも並び、しかし飛び抜けて高い山があるわけではなく、遠くまでその丘が続くのを見渡すことができる。露出した山肌は黒曜石の砂利で覆われ、太陽に照らされてキラキラと眩しい。雪渓が丘と丘の間を埋め、所々からは白い蒸気が噴き出す。そんな丘を登っては下り、また登り返して行く。黙々と歩きながらも、どこかに吸い込まれるような恍惚とした気持ちにさせるトレイルだった。

火山帯特有の黒いトレイルに白い雪と青空のコントラスト

初日の宿泊地フラプティンヌスケル

 

太古の地球を思わせるような光景

2016年8月21日(世界一周131日目)

二日目に一望したフィヤットラバクも素晴らしかった。朝から冷たい霧のような雨が降り、雲の中を歩いているようだったが、登りきると突如視界が開け、向こう側の谷の景色が広がった。火山灰の黒と苔の鮮やかな黄緑の世界の上に分厚い雲が垂れ込め、太古の地球を思わせるような光景。曇り空なのにこんなに美しいと感じたのは初めてかもしれない。

濃い霧と地表から吹き出る蒸気

厳しいコンディションでも見たことのない絶景が僕らを魅了する

 

氷河から溶け出した凍るように冷たい川の渡渉

2016年8月22日(世界一周132日目)

手付かずの大地を歩くロイガヴェーグルでは渡渉も外せないアクティビティだ。ルート上にはいくつもの川があるのだが、その多くは橋はかかっておらず、靴を脱いで渡るしかない。三日目の渡渉ポイントは、川幅があり雨も降り続いているせいか水量が多い。何人かのハイカーが渡っているが、皆膝上まで浸かって必死だ。何度も流れに足を持っていかれそうになりながらも、トレッキングポールでバランスを取って持ちこたえ、僕らもなんとか乗り越えた。身を切るような冷たい水で足がじんじんするが、これもいいリフレッシュだ。

流されないように必死に渡るハイカーたち


冷たい渡渉の後は、ご褒美のような久々の太陽が顔を出した。風が強く、その風に乗って横から雨が打ち付けるが、そんな天気雨のおかげで、振り返ると歩いてきた道に綺麗な虹がかかっていた。黒い砂漠を延々と歩き続ける。虹はどこまでも追いかけてくる。足元には小さく可憐な花がそひっそりと耐えるように咲いていた。

晴れているが強い風に乗って横から雨が打ち付ける

トレイルをまたぐように虹の橋がかかっていた

 

大地が割れたようなゴルジュ

2016年8月23日(世界一周133日目)

四日目のハイライトはエムストルの小屋をスタートしてすぐに現れるダイナミックな峡谷だ。左手には氷河が見え、そこから流れ出る大量の水が谷底を蛇行する。くねくねと入り組んだゴルジュはまるで迷路のようだ。大地が割れたように口を開け、その割れ目に沿って歩き続ける。ゴールのソルスモルクはこのコースで唯一の樹林帯。樺の木の気持ちのいいトレイルを抜けると四日間の冒険もようやく終わりとなる。

出発してすぐに大地が割れたような峡谷が現れる

氷河から溶けだした大量の水が流れていく

厳しくも楽しい四日間の冒険だった

 

絶景だらけと言われるアイスランドでも格別な場所

氷河から溶け出した凍るように冷たい川の渡渉、横から吹き付ける砂交じりの雨、払ってもなかなか落ちない火山灰、そして氷点下近くまで冷え込む夜。コンデションは最も過酷なトレッキングでしたが、その厳しい自然環境がこのロイガヴェーグルの美しい景観を作り出しています。

四日間のトレッキングは毎日景色の変化があって、どの日も印象的でした。アイスランドは何処に行っても絶景だらけと言いますがが、自分の足で歩いて訪れる絶景はやはり格別。厳しい一面もあるけど、それを上回る魅力があるからこそ、世界中から多くのハイカーを惹きつけているのだと思います。

アイスランド・ロイガヴェーグルでのトレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備については、トレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

至る所から噴き出す蒸気

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
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トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

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