シリオの「登山靴」は「P.F.662」がユーザーに人気。長年の愛用者が多く

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シリオの登山靴で、ヤマケイオンラインのユーザーが実際に使っているアイテムはどんなものだろうか? 投稿コーナー「みんなの山道具」からユーザーの声をピックアップし、製品について、さかいやスポーツ 斎藤さんに解説してもらった。

取材/文=吉澤 英晃
監修=さかいやスポーツ 斎藤 勇一 

 

P.F.662|長年の愛用者多くも2016年に生産終了、「P.F.630」が後継

★★★★★ つかひろ さん
シリオP.f.662-GTX
シリオ(SIRIO )
★★★★★ ゆっぺ さん
シリオP.f.662-GTX
シリオ(SIRIO )

 

シリオの創業は1993年。「日本人の足にフィットする登山靴をつくりたい」という思いから、日本人専用設計にこだわり、日本とイタリアで登山靴を共同開発している老舗の登山靴メーカーです。欧米人と比べて足幅が広い日本人の足に合うように独自の専用ラスト(足型)を使い、10(長さ):4(幅)という基準をもとにした「3E+」「3E」「4E+」という、3つのワイズ(靴の幅)で製品を企画・開発しています。10:4を基準としたワイズが3E+。10:4よりも細いワイズが3E。逆に広いワイズが4E+となります。

「みんなの山道具」でユーザー投稿数が多かった「P.F.662」はすでに廃番となっていますが、後継品が作られています。それが「P.F.630」です。P.F.630のワイズは3E+ですが、他にも4E+のモデル、「P.F.640」が用意されています。P.F.630は、シリオのカタログでは「ライトトレッキング」から「トレッキング」までをカバーする登山靴に分類されていますが、P.F.630でも標高3000m程の山を登ることはできるのでしょうか?

「P.F.630はソールが硬く剛性の高い靴なので、標高の高い山に向いていると言えます。山小屋泊や、荷物の重量が20㎏以下のテント泊にも対応できます。しかし一概に「高い山」といっても、ルートの状況は様々です。西穂高岳から奥穂高岳までの破線ルート(難路)や、大キレットなどの岩稜帯を目指す場合は、登攀を想定して作られているアルパインブーツを選ぶほうが良いでしょう。P.F.630は、登山道がしっかり整備されているルートを歩くための登山靴と言えます」(さかいやスポーツ 斎藤さん)

P.F.630は重い荷物を背負って長い距離を歩く縦走登山に適した靴のようです。本革を使用した外観からして丈夫そう。では、P.F.630を履いて雪山を登ることは可能なのでしょうか?

「靴底に硬さはありますが、12本爪アイゼンの装着に耐えられるほどの剛性はありません。保温材や断熱材も入っていないので、本格的な雪山には適しません。この靴が持っている剛性は、基本的に冬以外のシーズンで重たい荷物を背負って長い距離を快適に歩くためのものです」(同)

雪山登山での使用を想定したものではなく、夏山での長距離歩行のために作られた製品だそうです。ところで、革の登山靴の手入れは手間がかかりそうな印象があるのですが、そのあたりはどうなのでしょうか?

「現在はヌバックレザー用のメンテナンススプレーがあるので、手入れは簡単です。まず、靴紐などのパーツを外してから汚れを落とし、日の当たらない風通しの良い場所で陰干しします。最後に防水・保護剤が含まれたスプレーを靴に均一に吹きかけるだけです」(同)

革を使った登山靴はワックスやクリームを塗り込まなければならない印象があったのですが、スプレーを吹きかけるだけで済むなら楽ですね。P.F.630を大事に使って夏の縦走登山を楽しみましょう。

製品情報

シリオ「P.F.630」

価格
42,000円(税別)
サイズ
24.5cm~29.0cm
重量
約820g(片足、26cm)

シリオ「P.F.640」

価格
42,000円(税別)
サイズ
22.5cm~29.0cm
重量
約820g(片足、26cm)

 

P.F.430|日帰りトレッキングから山小屋泊に。後継は「P.F.421」

★★★★☆ チャーリー さん
PF430
シリオ(SIRIO )
★★★★★ ねこにゃん さん
P.F.430
シリオ(SIRIO )

 

「P.F.662」の次に投稿数の多かったモデルが「P.F.430」です。こちらも残念なことに生産終了となっていたので、後継品である「P.F.421」について話を伺います。P.F.421のワイズは3E+。メーカーのカタログでは、先ほどのP.F.630と比べると、ややライトトレッキング向けの登山靴に分類されています。

「P.F.630と比べるとソールが柔らかくなっています。そのため、登山道をより軽快に歩ける靴といえるでしょう。P.F.630のように標高の高い山に登るのに適しているかどうかで言うと、荷物が重くなりがちなテント泊には向かないですが、荷物が比較的軽い山小屋泊なら問題ないでしょう」(さかいやスポーツ 斎藤さん)

メインの使用は中低山トレッキングで、山小屋を利用した高い山への登山もたまには楽しみたい、そんな方にオススメといえそうですね。

P.F.421は、P.F.630と比べるとアッパーに使われている素材も異なります。P.F.630が本革のみだったのに対して、P.F.421は本革とナイロンのコンビネーションです。こういった違いで靴の耐久性は変わるのでしょうか?

「登山靴の耐久性イコール、ソールの寿命と捉えるといいでしょう。何年も使用し続けると、ソールに使われているゴムのグリップ力が低下し、クッション材も劣化します。一般的にソールの寿命は5年といわれていますが、早ければ3〜4年でゴムが硬化してしまう印象です。さらに5年も経つと、ソールのクッション剤に使われているウレタン素材が加水分解を起こし、ソールが剥がれる可能性が高くなります」(同)

アッパーの耐久性については、過度につま先側を曲げるような歩き方をせずに、靴本来の使い方をすれば3〜4年は持つとのこと。しかし、ソールの劣化は登山靴を使わなくても時と共に進むそうです。せっかく買った貴重な登山靴が劣化する前に、満足いくまで山登りを楽しみましょう。

ちなみに、先程のP.F.630には4E+の幅を持つP.F.640がありました。P.F.421には4E+のモデルはあるのでしょうか?

「残念ながら3E+のワイズしか存在していません。P.F.421に近い性能で4E+の靴となると、P.F.640がオススメになります。しかし、一度もシリオの靴を履いたことがない方が、自分の足幅が3E+なのか4E+なのかを判断するのは、相当な知識があっても難しいでしょう。登山専門店に行ってスタッフに相談することをオススメします」(同)

同じ3E+の靴でも、モデルによって使われる素材が異なるため、履き心地も変わってくるそうです。4E+しか履けないと思っていても、モデルによっては3E+でちょうど良かった、なんてこともあるのだとか。最適な登山靴を選ぶには、やはり試し履きをすることが一番の近道ですね。

製品情報

シリオ「P.F.421」

価格
28,000円(税別)
サイズ
22.5cm~24.0cm、25cm〜29.0cm
重量
約730g(片足、26cm)

P.F.302|ライトトレッキング向きの「P.F.421」の軽量モデル

★★★★★ Kakishibu さん
P.F.302
シリオ(SIRIO )
★★★★★ serious さん
PF302
シリオ(SIRIO )

 

最後に紹介するのが「P.F.302」です。メーカーのカタログによると、これは「ライトトレッキング」に適した登山靴のようですが、どんな人にオススメなのでしょうか?

「P.F.302は、P.F.630やP.F.421が重くて靴底が硬いと感じる方にオススメです。P.F.421の軽量化をコンセプトに開発された背景があり、より軽快に歩くことを目的としたソールが使われています。使用シーンは、日帰りトレッキングに最適で、中低山の山小屋泊登山も可能。体力に自信がある方なら、標高2000mを超える山でも1泊山小屋利用の登山ぐらいなら楽しめるでしょう」(さかいやスポーツ 斎藤さん)

実際にP.F.302を持ってみると、確かに軽くてソールも柔らかいのが分かります。これなら軽快にトレッキングを楽しめそうです。ところで、インターネット上でP.F.302は雪渓の上ですべりにくい、という書き込みを見つけました。P.F.302のグリップ力は他の登山靴と比べると優れているのでしょうか?

「他のビブラムソールを使った登山靴と同じ素材でできているため、厳密に言うとグリップ力は変わらないと思います。ただ、スニーカーと比べればもちろんソールの溝が深いので、滑りにくいと言えるでしょう。P.F.302に限らずシリオの靴は欧米メーカーの靴と比べると幅が広い分、ソールの面積も広くなっているので、安定感が高くなるかもしれませんね」(同)

雪渓でも滑りにくいとは断言できませんが、トレッキングシーンに十分なグリップ力を持っていることは間違いありません。

シリオのカタログを見ると、モデルによって適応する登山レベルが明確に分かれています。基本的にP.F.302といった商品名に3桁の数字がはいるものは、3桁目の数字が大きくなるほど剛性が高くなり、標高の高い山向けの靴になります。逆に3桁目の数字が小さくなるほどソールに柔軟性があることを示しており、軽快に歩ける日帰りトレッキングやハイキング向けの靴だと言えるのです(P.F.46のような数字が2桁のものなど例外はあります)。

「山行シーンに応じた靴を履くことは、疲労の軽減やケガのリスクを回避する上で重要です。安全に登山を楽しむためにも、メーカーが推奨する使い方で履くことをオススメします。体力に自信があれば、P.F.302のような軽くて柔らかいトレッキングシューズでも長期間のテント泊は可能です。しかし、その分ソールの消耗が激しくなるでしょう。シリオがP.F.302の使用を推奨している日帰りトレッキングなどの「ライトトレッキング」シーンで使えば、軽快な歩行とともに、快適に登山を楽しむことができるはずです。登山レベルにあった登山靴を履くことは、靴のパフォーマンスの持続にもつながるのです」(同)

軽い荷物で軽快にトレッキングを楽しみたい時はP.F.302、重い荷物を背負って登る場合はP.F.630というように、山行にあわせて登山靴を選ぶのも安全に登山を楽しむのに重要なことなのですね。

製品情報

シリオ「P.F.302」

価格
17,500円(税別)
サイズ
22.5cm~28.0cm、29.0cm
重量
約580g(片足、26cm)

※掲載した情報は、2019年2月現在のものです

「みんなの山道具」ユーザーのおすすめ度調査

ヤマケイオンラインのユーザーが実際に使っている登山用品を投稿するコーナー「みんなの山道具」。この記事ではユーザー投稿を登山ブランドごとにピックアップし、人気順(投稿数順)にギアをまとめた。

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