テント山行を楽しむための知恵が満載! テント泊テクニックをプロが伝授

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これからの季節、テント泊への挑戦を考えている人も多いだろう。テント山行を楽しむには、登山技術はもちろん、山で生活する技術も重要だ。そこで、本当に役立つテント泊技術を身につけてあなたの登山の可能性を、もっと広げてみてはいかがだろうか。


木々の展葉も徐々に始まり、早くも新緑の気配を感じられる季節になってきた。そろそろ夏に向けてテント泊の計画を考える人も増えてくるだろう。

テント泊の魅力はなんといっても、奥深い山や自然の魅力をより身近に体感できること。自然の表情が豊かになる夏山で、寝ても覚めても山に浸るのは、最高の贅沢だ。

テント泊の基礎知識は、入門書やインターネットなどで手軽に見つけられるが、たくさんの情報源から本当に役立つ情報をピックアップするのは意外と難しいもの。そこで今回は、『山と溪谷』5月号「夏のテント山行 入門とガイド」よりテント泊のプロだからこそ知る、テント泊登山の知恵と工夫の一部を紹介しよう。

北アルプス・双六岳直下の双六小屋テント場

 

装備を軽くするコツを身につけよう

重たい装備での縦走は、体力面だけでなく、峻険な岩場での歩行に影響するので、リスクマネジメントの上でも避けたい課題だ。例えば、以下のような要素から軽量化を考えてみよう。
 

装備の見直しは、ウェアを「量る」ところから

軽量化を意識する人のなかには、テントやシュラフなどのギア選びから入る人もいるだろう。しかし、重い装備の原因は実はウェアにある場合が多い。いやはや、灯台下暗し。ウェアは実は重たい装備なのだ。そのため、フリースやダウンなどの用途が重複する保温着は、装備が重くなる一因になる。

軽量なギアを購入する解決法だけではなく、まずは身近なウェアの重さを量り、自分がどれくらいのウェアをザックに入れているのかを把握し、省略できるものがないか見直してみよう。
 

あえてザックの容量を「減らす」のもアリ

ザックが大きいと、余ったスペースになんでも詰め込みたくなる。そこで、あえていつもよりザックの容量を減らしてみるのも一つの手。強制的にザックが小さくなれば、詰める荷物を見直さざるを得なくなる。

山小屋泊で使っているような中型ザック(40~50ℓ前後)に、テント泊装備が入るかどうか試してみよう。昨今の登山装備はどれも軽量コンパクトなので、もしかしたら意外と収納できてしまうかもしれない。

 

道具を「工夫する」ことで自分流の快適さを追求

さらなる軽量化の手段として、快適さを損なわない程度に軽さを意識したギアを導入してみよう。前述したように、「軽量化」=「超軽量アイテムの購入」ではなく、さまざまな工夫の中の一つの方法だと考えよう。

気をつけたいのは、軽さに特化しすぎたアイテムは、快適さを我慢する場合もあること。快適さと軽さのバランス、自分にとっての妥協点を考えて選ぼう(そこがいちばん難しいのだが)。

なお、装備の軽量化については、ICI石井スポーツの経験豊富なスタッフによるテクニックを以前に紹介しているので、こちらも必見だ。

★テントマット、寝袋は工夫次第で大幅に軽量化が可能! 登山装備の軽量化の秘訣を山岳マラソンに学ぶ

 

慣れないうちは、体力のセーブをこころがけよう

テント泊で重要な要素の1つが、体力維持や体調管理の面だ。山小屋泊などと比較すると、装備の重量はもちろん、快適性でも劣ることが多く、体力の温存や管理に影響する。はじめは、以下の面から体力のセーブを検討してみよう。
 

ロープウェイなどで登りの標高をかせぐ

装備の重たいテント泊は、とにかく登りがつらい、しんどい、苦しい。せっかくテント泊を楽しみにしていても、テント場まで行くのに体力を使い果たしてしまうのは、元も子もない。

そこで、テント泊経験の少ないうちや体力に不安があるなら、ロープウェイやバスなどを使って、手軽に標高を上げられるコースを選んでみよう。ただし、急激に標高を上げるため、体調管理には充分気をつけよう。
 

ベースキャンプスタイルで、山頂までは身軽に

ベースキャンプはその名のとおり、山の中の基地となる。山頂手前のテント場などを利用すれば、宿泊装備をテント内に置いたまま山頂に行けるので、余計な体力をセーブできる。テント内で休憩してから、山頂へとアタックするのもよし。行動の幅が広がるのもこのスタイルの魅力だ。

安全登山を考えればこそ、荷物の軽量化を意識したい
北アルプス・涸沢カールのテント場。奥穂高岳や北穂高岳登山のベースとなる
 

ちょっと贅沢に食事は山小屋で

どんなに装備の軽量化を意識しても、ザックのなかでどうしてもかさばるものがある。そう、それが食料。テント泊の魅力は「自炊」でもあるのだが、おいしい食事をつくろうとこだわり始めると、ついついザックの食材は増えていきがち。

しかし、山小屋によっては、テント泊利用者でも小屋の夕食や朝食を利用できる場合がある。つまり、重たい食料を背負わずに、おいしい食事にありつけるのだ。体力をセーブする目的だけでなく、せっかく山に入るのだから山小屋の食事を楽しむのもおすすめだ。

 

テント場で快適に過ごすための3つのポイント

ここまで紹介した「準備」「計画」に加えて、テントの快適さを左右する最大のポイントが、テント場での「生活技術」だ。ここでは、人気アウトドアライターの高橋庄太郎さんによる、快適化テクニックの3つのポイントを紹介しよう。
 

その1. テント場に着いても「休む前に設営」を完了せよ

テント場にテントを張れる数には限りがある。テント場に到着したら、ひと休憩といきたいところだが、休んでいるうちにいいスポットは取られてしまう。休憩する前に受付を済ませ、テントの設営まではがんばろう。

出遅れてしまうと設営スペースを見つけるのも難しい
 

その2. テントに入り込む前に「基本準備」を終わらせておく

テントの設営を済ませたら、すぐに中で横になりたくなるものだが、その前に、飲料水の入手と、トイレを済ませておこう。山の天気が変わりやすく、天気が急変してしまえばテントの出入りはひと苦労。ラクに過ごすための準備は入念に行なおう。テント場によっては、水場がなく、山小屋で飲み水を購入する場合もある。また、テント場の利用料のほかに、トイレの協力金が必要な場所もあるので注意しよう。
 

その3 テント泊が快適か否かは最終的には「小技」で決まる

「小技」はまさに経験の賜物。初めてのテント泊は失敗してしまうこともあるだろうが、数々の失敗が結果的には快適に過ごすための小技につながっていく。いろいろな人の失敗談や工夫を聞いて自分の登山に生かす、あるいは自分流の小技を生み出すことが、テント泊をいかに快適に過ごせるかにかかわっていく。

高橋庄太郎さんの書籍には、基本知識のほかに小技情報も満載だ。

テント泊登山の基本

テント泊登山に必要な装備、知識のことをコンパクトにまとめたポケットマニュアル。次の山行の予習として自宅で読んでもよし、バックパックの奥に忍ばせておいて山行中に確認してもよし。
高橋庄太郎氏直伝の、いざというとき活用できる内容をたっぷりと詰め込みました。

 

今回紹介したのは、山と溪谷5月号『夏のテント山行 入門とガイド』のほんの一部。テント泊のなるほど!な小技が、まだまだいっぱい詰まっているので、ぜひ一読いただきたい。
さらに特集全体では、これらのテント泊テクニックに加えて、今夏おすすめのベスト30ルートも紹介している。

テント泊の充実度を高める6つのテーマに注目し、ルートを紹介しているので、あなたの目的にあったテント山行の計画づくりに役立つだろう。

プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

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発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。

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