事前の気象情報の確認の徹底と中止や撤退を含めた適切な判断を! 島崎三歩の「山岳通信」 第147号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年5月16日に配信された第147号では、ゴールデンウィーク中に起きた18件の遭難事例について言及。天候判断による遭難について言及し、適切な判断・準備の大切さについて呼びかけている。

 

5月16日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第147号では、4月27日~5月5日に起きた18件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 4月27日、浅間連峰前掛山で、46歳の男性が前掛山を登山中に道に迷い、滑落して行動不能となる山岳遭難が発生。浅間連峰地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が男性を山小屋に収容した。

  • 4月28日、北アルプス槍ヶ岳で、55歳の男性が心肺停止の状態で別の登山者に発見され、県警ヘリで救助されたものの死亡が確認された。男性は槍沢を登山中に何らかの原因により行動不能になったと思われる。

  • 4月28日、北アルプス唐松岳で、57歳の男性が意識のない状態で別の登山者に発見され、県警ヘリで救助されたものの死亡が確認された。男性は八方尾根を登山中に何らかの原因により行動不能になったと思われる。

  • 4月28日、北アルプス涸沢で、52歳の男性がアズキ沢を登山中に雪崩に巻き込まれ、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 4月28日、中央アルプス空木岳で、49歳の男性が池山尾根を下山中に滑落して、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

中央アルプス空木岳周辺の遭難現場(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月9日付)
 
  • 4月29日、北アルプス北穂高岳で、32歳の女性が北穂沢をシリセードで下山中に滑落し、アイゼンを引っ掛けて負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

  • 4月30日、中央アルプス檜尾岳で、単独で空木岳を目指して入山した41歳の男性が、下山予定日を過ぎても帰宅しない届出が30日にあり捜索を開始し、5月2日に県警ヘリで救助された。男性は悪天候及び技量不足により行動不能となっていた。

  • 5月1日、上田市太郎山で、72歳の男性が登山中に足を滑らせて転倒、負傷する山岳遭難が発生。上田広域消防署員により救助された。

  • 5月1日、下高井郡山ノ内町魚野川で、4月28日から渓流釣りのために群馬県側野反湖付近から入山していた男性4人(45歳、29歳、33歳、29歳)が、下山予定日の4月30日になっても連絡がなく捜索開始。5月2日に県警ヘリで救助された。4人は道迷いのため行動不能となっていた。

  • 5月2日、北アルプス乗鞍岳で、54歳の男性が乗鞍岳付近を登山中にバランスを崩し滑落して負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 5月3日、北アルプス白馬岳で、54歳の男性が白馬岳主稜を登山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。翌3日に県警ヘリで救助された。また男性の同行者だった57歳の女性は、同行者が救助され不在となったため自らの技量では行動できずに救助要請し、同じヘリで救助された。

  • 5月3日、北アルプス蝶ヶ岳で、50歳の女性が登山中にくぼみに足をとられてバランスを崩して転倒し、負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

北アルプス蝶ヶ岳での遭難現場(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月9日付)
 
  • 5月3日、北アルプス奥穂高岳で、26歳の男性が奥穂高岳ジャンダルムを登山中に滑落して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。男性は翌4日に県警ヘリで救助された。

  • 5月4日、北アルプス樅沢岳で、46歳の女性が何らかの原因で滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助したものの死亡が確認された。

  • 5月4日、北アルプス槍ヶ岳の北鎌尾根で、33歳の女性が北鎌尾根を縦走中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

北アルプス槍ヶ岳・北鎌尾根の遭難現場(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月9日付)
 
  • 5月4日、北アルプス槍ヶ岳で、43歳の男性が槍ヶ岳から下山中に疲労による体調不良のため行動不能となる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • バランスを崩して滑落し、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 5月5日、北アルプス蝶ヶ岳で、62歳の男性が蝶ヶ岳から下山中にバランスを崩して滑落し、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

■4月22日~4月29日

連休前半を中心に、6件の遭難が発生し、槍ヶ岳と唐松岳では2名の方が亡くなっています。亡くなられた2名の登山者はいずれも、低気圧の通過により悪天候となった27日に行動をしており、状況から悪天候の中、何らかの原因により行動不能となったものと推測されます。
事前の天気予報で「低気圧の通過」「前線の通過」「寒気の流入」「気圧の谷の通過」などの予報があった場合、春先の標高の高い山域は、行動ができないほどの荒天になります。事前に気象情報の確認を行い、状況によっては登山の中止や撤退を含めた適切な判断を心がけてください。

■4月30日~5月6日

大型連休後半は、12件の遭難が発生しました。態様別では行動中の滑落が6件と最多を占めています。北アルプスの槍穂高連峰や後立山連峰などを始めとする高山には谷筋を中心に雪が残ります。残雪の状況により登山道も変わるため、予定しているコース上に残雪が見込まれる場合は、事前に付近の山小屋などにコース状況を確認するとともに、アイゼン、ピッケルなどの装備品を携行してください。
また、標高の低い里山では山菜採りのシーズンとなりますが、入山する際は、家族に行き先を告げる、携帯電話を携行する、単独での入山は避けるなど、アクシデントに対する備えをしてから入山するようにしてください。

 

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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