憧れの剱・立山連峰、どこを歩く?何を楽しむ? 3つの定番コースから魅力を探る

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夏が近づき蒸し暑さを感じてくると、夏山登山に向けてそわそわしている人も多いのでは? 今回紹介するのは、北アルプスを代表する山岳エリア「剱・立山連峰」。無雪期に楽しめるのは7月から10月のわずか4カ月ほど。だからこそ、自分にあったコースを見つけて、夏の剱・立山を楽しもう。

別山尾根から望む剱岳山頂(写真/編集部)

 

 

剱・立山連峰は、日本海からわずか30㎞の距離に位置し、富士山を除けば、立山は最も海に近い3000m峰だ。日本海からの季節風によってもたらされる年間約6000㎜の雨と雪は、プレート運動と火山活動によって隆起した山を削りながら深い谷を刻み、剱岳に代表されるような急峻な地形を生み出している。富山湾から望む険しいフォルムと、夏でも残雪を抱いた印象的な峰々は「岩と雪の殿堂」と呼ばれるにふさわしい。

西面の明るい富山平野とは対照的に、東面は黒部川が流れる黒部渓谷が存在する。山腹には、ツキノワグマやニホンカモシカ、イヌワシといった動物が暮らし、深く陰鬱な渓谷には原始の趣が漂う。変化に富んだ山岳景観と自然に出会えるのが「剱・立山連峰」だ。

そんな広大な山岳エリア、剱・立山連峰にはどんなルートがあり、どんな楽しみ方があるのか。今回は、山と溪谷6月号から3つの定番コースを紹介しよう。
 

豊かな自然を楽しむ―― アルペンルートコース(日帰り・初級)

弥陀ヶ原に点在する池塘(山と溪谷2019年6月号P48~49より)


弥陀ヶ原は、数十万年前からの幾度に渡る噴火の末、形成された広大なカルデラ台地である。年間6000㎜の降水量は、湿地を生み出し、弥陀ヶ原湿原に点在する3000個の池塘「ガキの田」は多くの植物と動物の生息地となっている。

池塘は季節によって発生と消失を繰り返すため、何度訪れても飽きることはない。さらには、天狗平と弥陀ヶ原を結ぶ一ノ谷道の途中には、弘法大師を祭った雄山神社の末社がある獅子ヶ鼻岩や役行者像など、立山信仰の歴史も感じることができる。

余力があったらバスを使って美女平やブナ平に行って巨樹や滝などの豊かな自然を味わうのもよい。

▶参考コースタイム
室堂から弥陀ヶ原へ…3時間
▶総距離
6.8㎞

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信仰の歴史をたどる―― 立山三山コース(1泊2日・中級)

富士ノ折立方面から望む内蔵助カール(山と溪谷2019年6月号P42~43より)


浄土山、雄山、別山の三山を縦走するこのコースは、大展望の稜線歩きを満喫できる。室堂から立山三山への縦走ルートは、かつて「禅定道」と呼ばれる巡礼の道として使われた最後の部分でもある。コースの途中には、標高約3000mに位置する雄山神社や立山開山の舞台といわれている玉殿岩屋があり、信仰の歴史をたどることができる。

宿泊場所である内蔵助山荘の近くでは、2018年に氷河認定されたばかりの「内蔵助谷の氷河」も楽しめる。別山乗越から剱岳を眺たら雷鳥沢で下山。最後は雷鳥荘の温泉に浸かって疲労回復するのがオススメ。さらに余裕があるなら室堂でもう一泊して、高山植物探索や室堂小屋見学もしてみよう。

▶参考コースタイム
(1日目)室堂ターミナル~浄土山~雄山~真砂岳~内蔵助山荘(泊)・・・計4時間10分
(2日目)内蔵助山荘~別山~別山乗越~雷鳥平~室堂ターミナル・・・計4時間20分
▶総距離
13.4㎞

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岩稜に挑む―― 剱岳・別山尾根コース(2泊3日・上級)

急峻な岩場が続く別山尾根(6月号P58~59より)


標高2999mの剱岳の登頂をめざし、別山尾根を登るコースである。剱岳の登頂コースとしては最もポピュラーだが、難易度は高い。特に剣山荘の先、一服剱からは傾斜が増し、不安定なガレ場、そして急峻な岩場が続く。

さらにはカニのたてばい(登り)やカニのよこばい(下り)など、高度感ある鎖場も非常にスリリングだ。日本有数の難度の高いコースのため、技術・体力を要する。充分な登山経験を積んでから挑もう。試練を越えたあとには何事にも代えがたい爽快感があるはず。

▶参考コースタイム
(1日目)室堂ターミナル~別山乗越~剣山荘・・・計3時間50分
(2日目)剣山荘~前剱~剱岳~前剱~剣山荘~剱澤小屋・・・計6時間40分
(3日目)剱澤小屋~別山乗越~室堂ターミナル・・・計3時間30分
▶総距離
15.9㎞

⇒関連モデルコースを確認


 
今回紹介したのは、山と溪谷2019年6月号の特集「剱岳と立山」のほんの一部だ。

本誌には今回紹介したコースのより詳しいガイドや、ほかのコース・バリエーションルートも紹介しているので、ぜひ目を通していろいろなコースを検討してほしい。

さらには、立山の信仰・歴史やアルペンルートの楽しみ方など、知っているとさらに楽しくなる情報も満載だ。付録は剱・立山登山マップが付いているのであなたの山行に役立つだろう。

 

プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

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From 山と溪谷編集部

発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。

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