やっとの思いで辿りついたご当地カツ丼! 長野県駒ケ根の早太郎温泉こまくさの湯で食べた下山メシ

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下山後に味わいたい粋なご飯を紹介するライター西野 淑子さんの「下山メシのよろこび」。17回目は、中央アルプス最高峰・木曽駒ヶ岳の登山の起点となる駒ケ根のご当地カツ丼のお話。登山終わりのご飯が、お店の営業時間と合わないことは、皆さん、経験のあることかもしれません――。

標高2,612mに広がる青空と千畳敷カールの絶景

 

木曽駒ヶ岳と宝剣岳、無事下山。とにかくお腹がすいていた。

バスに乗る前に、「ソースカツ丼を食べて帰ろう」「駒ケ根といえばソースカツ丼だから」「バス停の近くに美味しいお店があるんだ」と、山を下り始めるときから、パートナーとずっと言い合っていた。

埼玉で育ち、東京に住んでいる私にとって、カツ丼といえば卵でとじたトンカツがご飯の上に乗ったものだが、卵でとじていない、ソースのかかったトンカツがご飯の上に乗ったものを「カツ丼」と呼ぶ地域は日本各地にある。以前紹介した秩父のわらじカツ丼もそうだ。この形式のカツ丼は、卵でとじたものと区別して「ソースカツ丼」と呼ばれている。

ソースカツ丼と一口にいっても、ご飯の上(カツの下)に千切りキャベツを敷くか敷かないか、カツは分厚いか薄いか…など地域によってさまざまだ。

駒ケ根のソースカツ丼は、厚みのあるカツにソースがからんでいて、キャベツが敷いてある。存在感たっぷりのカツと甘辛いソース、シャキシャキのキャベツ。ご飯が無限に進みそうな組み合わせだ。木曽駒ヶ岳登山の起点となる菅の台バスターミナルの周辺に数軒お店があり、駒ケ根駅の周辺にもソースカツ丼の味わえるお店はある。数年前の夏に訪れたときは下山してすぐ菅の台でお店に駆け込み、アツアツのソースカツ丼をほおばり、幸せのため息をついた。

あの幸せな時間をもう一度。 …そう思ってバスを降りて店に向かったのに、以前訪れた店も、他に行こうと思った店も、すべて定休日またはお昼休み休憩になっていた。そんなばかな。空腹とショックで頭がクラクラしてきた。

そういえば…と、思い出したのが「早太郎温泉こまくさの湯」。以前訪れたときは温泉に立ち寄って汗を流したが、たしか館内には食堂があったはず。

駒ヶ根市の高台にある日帰り温泉施設「早太郎温泉こまくさの湯」

 

行ってみると、おお、営業している。食堂もある! ソースカツ丼もある!! いそいそと食堂に入り、ソースカツ丼をオーダーした。とはいえ温泉施設の食堂だもの、あまり期待しすぎないほうがいいね、とりあえずご飯が食べられるだけよしとしようよ。パートナーと話をしながら待つこと数分。

出てきたソースカツ丼は、丼の上にたっぷりの千切りキャベツと分厚く大きなカツがダダーンと乗っていた。あれ、思っていたのと違う…と思いつつカツを一口ほおばる。美味しいじゃないか! ジューシーな肉のうまみ、甘辛いソースの味わいが口に広がる。白飯も美味しい。カツとご飯、キャベツの奏でるハーモニーにクラクラする。ボリュームたっぷりで、すごい勢いで食べているのになかなかなくならない。なんて幸せ。

存在感のある駒ヶ根名物ソースかつ丼 900円!※価格は2019年6月現在

 

夢中で食べ続け、食べ終えて幸せのため息。 目の前のパートナーもほっとしたような、満ち足りたような顔をしていた。

乗りたいバスの時間がきわどかったので、温泉は残念ながら入れなかった。こまくさの湯は肌触りのよい温泉で、明るく広々とした内湯、山々を見渡せる露天風呂も魅力的。次回は温泉もソースカツ丼も味わいたいな。

 

今日のお店 「早太郎温泉こまくさの湯」

こまくさの湯の露天風呂からは空とアルプスの境界線がとても美しく、空が澄んでいるときにはきれいに中央アルプスを見ることができる。

住所: 長野県駒ケ根市赤穂759-4
電話: 0265-81-8100
http://www.komakusanoyu.com/

 

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

下山メシのよろこび

登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。

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