このエントリーをはてなブックマークに追加

山開き直後の南アルプス・北岳――、固有種キタダケソウ、大樺沢の雪渓歩きなど魅力がいっぱい

今がいい山、棚からひとつかみ
ガイド・記録 2019年06月21日

日本第2の高峰、南アルプス・北岳は、6月下旬に入山口の広河原までの道路が開通して、いよいよ登山シーズンが始まる。その瞬間は北岳が一段と輝く時期で、固有種のキタダケソウの開花をはじめ、百花繚乱の高山植物、雪渓歩きと、たくさんの山の魅力が詰まっている。

高山植物が咲き乱れる7月初旬の南アルプス・北岳。写真は中白根のお花畑と間ノ岳(写真=増村 多賀司)


南アルプス・北岳は例年、6月下旬に玄関口となる広河原までの車道が開通し、開山を迎えます。開山の時期は、大樺沢の登山道はじめ残雪が多めですが、北岳周辺だけに咲く「キタダケソウ」の見頃と重なります。キタダケソウだけではなく、ほかの高山植物の花たちも咲き始める時期となります。

また、大樺沢の雪渓歩きと見上げる北岳バットレスの偉容も魅力で、この時期ならではの楽しみがたくさん揃っています。

大樺沢上部から見上げる北岳バットレスの偉容(写真=増村 多賀司)


残雪の具合によっては、広河原からのルート上に橋が掛けられていないこともありますが、その場合は白根御池経由で大樺澤二俣から大樺沢に入るか、草すべり経由で肩の小屋に行くこともできます。

日程に余裕があれば、間ノ岳を往復する計画を立てても良でしょう。6月の下旬~7月初旬、開山直後の北岳の魅力を紹介しましょう。

モデルコース:広河原~大樺沢~北岳~北岳肩の小屋~小太郎尾根~広河原

モデルコース行程:
【1日目】広河原・・・大樺沢二俣・・・八本歯のコル・・・北岳山荘・・・北岳・・・北岳肩ノ小屋(約8時間)
【2日目】北岳肩ノ小屋・・・小太郎尾根分岐・・・大樺沢二俣・・・広河原(約3時間30分)
【サブコース】北岳山荘~間ノ岳往復(+約3時間)

⇒コースタイム付きの登山地図を見る

 

キタダケソウと百花繚乱のお花畑の北岳

2017年は、7月8日~9日に北岳に訪れました。キタダケソウを見るには少し出遅れた感がありましたが、7月初旬を過ぎてもまだ咲いていました。

入山口となる広河原へは山梨県芦安の南アルプス市営駐車場から始発のバスに乗り向かいます。到着した広河原からは梅雨の晴れ間に北岳の山頂がくっきり見えています。

広河原から大樺沢へと歩みを進めると、大樺沢二俣付近は残雪豊富で涼風が吹き渡り快適で、ミヤマハナシノブやタカネグンナイフウロが咲き出しています。

7月初旬の大樺沢は残雪がしっかりと残っている。背後には北岳バットレスが見える(写真=増村 多賀司)


この日は、そのまま左俣ルートの雪渓上を行きました。上部二俣付近はバットレスの岩壁が頭上に迫り、迫力があります。雪渓歩きが終わり、小尾根に取り付くと木のハシゴが連続する苦しい部分ですがコイワカガミやツガザクラの花に癒されます。

大樺沢の雪渓を振り返ると、高嶺と八ヶ岳を望める(写真=増村 多賀司)


この日、八本歯のコルに着く頃はガスに覆われてしまいましたが小さいお花畑があり、展望がないながらも満足出来ます。

北岳山荘へのトラバース道の残雪がある周りはまだキタダケソウが咲いていました。吊尾根分岐下ではもう種になっていましたが、代わりにミヤマオダマキ、オヤマノエンドウ、チョウノスケソウ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイなどが咲き乱れていてまさに百花繚乱です。ミドリハクサンイチゲが見られるのもこの辺りです。

残雪の残る周辺を中心に、7月初旬でもたくさんのキタダケソウが咲く(写真=増村 多賀司)


ここから、この日お世話になる北岳肩の小屋までは、ずっと花畑が続きます。山頂では一瞬、晴れ間が出て先ほど登ってきた大樺沢の雪渓が見下ろせましたが、その後は積乱雲が立ち上がってきて雷鳴が聞こえたので小屋へ急ぎます。しかし、夕方から夜は晴れて月光に浮かび上がる北岳を見ることが出来ました。

翌朝は文句なしの快晴で日の出も見られました。肩の小屋からは前日見えなかった仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳、そして北岳の影が伊那谷方向に伸びている様子を見る事が出来ました。

7月上旬に北岳周辺で見られる花。左上から、クロユリ、キタダケソウ、ミドリハクサンイチゲ、チョウノスケソウ、ミヤマオダマキ、シナノキンバイ、ミヤマハナシノブ、タカネグンナイフウロ、オヤマノエンドウ(写真=増村 多賀司)


下山は小太郎尾根経由で大樺沢右股ルートを行きます。肩の小屋から分岐までの道も、ハクサンイチゲのお花畑が見事でした。分岐から右股コース上部はシナノキンバイとサンリンソウ、そしてハクサンチドリが咲いていて目を楽しませてくれました。

日程に余裕があれば間ノ岳までの往復を追加することをお勧めします。その場合は北岳山荘に泊まる計画を立てると良いでしょう。初日は八本歯のコルからキタダケソウを観察しつつ、北岳山頂を踏み北岳山荘までとなります。

2日目の朝に間ノ岳を往復します。途中の中白根付近のお花畑が見事で、足が止まります。間ノ岳山頂からは塩見岳や南アルプス南部の展望が広がります。下山は往路を戻り大樺沢を下山します。

キタダケソウ越しに間ノ岳を望む(写真=増村 多賀司)

教えてくれた人

増村 多賀司

長野県北安曇郡在住、山岳写真家、長野県自然保護レンジャー。数々の山岳写真と撮影する傍ら、グリーンシーズンは北アルプスを中心にトングとゴミ袋を持って山を歩き、雑誌などへの寄稿も多数。
⇒Facebook

同じテーマの記事
ブナの紅葉が見ごろの塔ノ岳へ。山頂の山小屋に泊まり、丹沢の山をゆっくり堪能する
日帰りで行ける山でも、山頂の山小屋に一泊してみてはどうだろうか。登山者と語らい、黄昏から落日、翌朝のご来光を拝む充実の登山も一興だ。
日高山脈・アポイ岳~ピンネシリ縦走――、標高1000m未満の山で2000m級の情景を楽しむ
北海道のアポイ岳と言えば、高山植物の山として知られ、花が咲き乱れる春から夏にかけてがベストシーズンと言われる。しかし、季節外れと思われる冬が目の前に迫る11月は、もう1つのベストシーズンが待っている。
丹沢一の紅葉と展望を丹沢最高峰の蛭ヶ岳で味わい、富士山をシルエットにした落日を鑑賞する
広い丹沢山塊の中でも、特に紅葉が美しい場所の1つが最高峰の蛭ヶ岳の北側、姫次付近のカラマツ林だという。丹沢に本格的な紅葉シーズンが訪れるのは11月初旬から、この時期に蛭ヶ岳に宿泊してみるのはいかがだろうか?
群馬県・子持山、屏風岩から獅子岩へ――。紅葉と特異な岩塔をめぐるさわやかハイキング
11月に差し掛かる頃になると、紅葉は標高1000mあたりまで下ってくる。秋も深まったこの時期に歩く低山は心地が良い。群馬県にある子持山は、紅葉と岩場歩き、そして抜群の展望を楽しめる山となっている。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

明後日

晴時々曇
(日本気象協会提供:2019年11月14日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW 山梨県 一部山域の冬期登山は計画書提出を
山梨県 一部山域の冬期登山は計画書提出を 山梨県では12月から3月までの冬期期間、八ヶ岳、南ア、富士山の一部山域で登山計画書の提出を義務化する。詳しくはこちら
NEW 登山ガイドが語る。ゴアテックスを選ぶ理由
登山ガイドが語る。ゴアテックスを選ぶ理由 山行に合う本当に必要な装備だけを揃えるという登山ガイドの武田佐和子さんに、ゴアテックス製品を選ぶ理由を聞いた
NEW スカルパの登山靴を試す! 連載「山MONO語り」
スカルパの登山靴を試す! 連載「山MONO語り」 高橋庄太郎さんのギア連載。今月はスカルパ「ZGトレック」を平標山の山行でテスト。その履き心地とは?
NEW ザ・ノース・フェイスが開発! 新しい防水透湿素材
ザ・ノース・フェイスが開発! 新しい防水透湿素材 ザ・ノース・フェイスが開発した全く新しい防水透湿素材「FUTURE LIGHT」。開発ストーリーと搭載アイテムを公開!
NEW 小林千穂さんも体感! ヒザ、腰を守るサポーター
小林千穂さんも体感! ヒザ、腰を守るサポーター 「ザムスト」のサポーターを山岳ライターの小林千穂さんと読者が体感! 登山愛好者の膝、腰のサポートに!
NEW ガイドが試した こだわりのトレッキングハット
ガイドが試した こだわりのトレッキングハット 女性のためのトレッキングハット「アルピア」。視野の広さ、収納性など、女性登山ガイドの菅野由起子さんがチェック!
紅葉登山シーズンも中盤から終盤へ
紅葉登山シーズンも中盤から終盤へ 標高1000~2000近くまで降りてきた山の紅葉。低い山でじっくりと紅葉狩りを!
渋滞の心配なし! 駅から歩いてらくらく登山。
渋滞の心配なし! 駅から歩いてらくらく登山。 日没時間が早まる時期は、アクセス時間を減らして行動時間を長くするような登山にしたい。「電車で行ける・帰れる山」で時間を短...
登山+紅葉+寺社仏閣で心落ち着く秋を愉しむ
登山+紅葉+寺社仏閣で心落ち着く秋を愉しむ 日本の山には、山岳仏教の修験の場として栄えた場所が数多い。参道沿いやの艶やかな紅葉は、繊細で心が落ち着くような美しさがあ...
冬でも歩けるアルプス! 全国のアルプスファンへ
冬でも歩けるアルプス! 全国のアルプスファンへ 日本全国にはその数は50以上あるともいわれる「ご当地アルプス」。本場を彷彿とさせる!?
秋の贅沢、秘湯+紅葉の山旅へ
秋の贅沢、秘湯+紅葉の山旅へ 温泉で山歩きの疲れをほぐし、山の幸を堪能する。日本の秋を満喫する至高の組み合わせに誘うコース七選
山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS
山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS スマートフォンの普及で高価で手の届かなかったGPS機器が誰でも使える! 初心者向けのノウハウから裏技まで、登山アプリとス...