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子供が自ら歩く登山は、何歳から? どんな山に? 石川高明さんに聞く親子登山・トレッキングのノウハウ

子供と一緒に山、行こう! 親子登山のススメ
基礎知識 2019年06月26日

八ヶ岳の山麓に住む信州登山案内人の石川高明さんに、これまでの経験から得られた親子登山のノウハウを聞く本連載。第3回は「子供が自分の足で歩く親子登山について」。何歳になったら、どんな山なら、どうやったら自分で歩いてくれるのでしょう? 石川家の例を見てみましょう。

 ★石川高明さんの連載第1回目「親子で登山・トレッキング 子どもための山道具選び」はこちらをお読みください。
 ★石川高明さんの連載第2回目「親子で登山・トレッキング ベビーキャリーを使った親子登山」はこちらをお読みください。

GWの山でもたくさん見た親子連れハイカー。何歳なったら自分で歩いてくれるの?

みなさんはゴールデンウィークの連休をいかがお過ごしでしたか? お天気が良い日には、気持ちよく歩かれたのではないでしょうか? 山は新緑の気持ち良いシーズンになります。どんどんお出かけいただきたいです。

私はというと、GW前半は丹沢方面の低山をガイド、後半は地元八ヶ岳に戻って、八ヶ岳や南アルプスの前衛の山をガイドしていました。

いずれの山域でも、たくさんの親子連れハイカーとすれ違いました。元気に登る子供や、ぐずって動かない子供、また前回記したように「ベビーキャリー」を利用した親御さんもたくさん見かけました。せっかくのお休みの親子登山です。お子さんがぐずらないように、スムーズに外遊びをしたいですよね。

前回、「ベビーキャリー」を利用し、息子を1歳で秩父札所巡りに連れて行き、3歳で雲取山を目指したものの、七ツ石山で引き返した失敗談を書きました。この時は父親の私がほとんどの行程を背負っていたわけで、子供が自らの足で歩いたわけではありませんでした。

今回は「子供が自分で歩く親子登山」を、どういう手順で進めればよいのか、お話ししたいと思います。

***

再び家族写真を追っていくと、3歳6ヶ月で、北八ヶ岳の白駒池散策や坪庭散策などに行っています。そこでは子供の足で歩かせていました。

白駒池は北八ヶ岳にある標高2100m以上の湖としては最大の天然湖ですが、駐車場から大人の足で20分ほどと、アクセスの良い場所にあります。湖周が散策路になっていて、一周1時間弱で巡れ、JRの宣伝でも使われたコケの名所になっています。山小屋は2軒あって、ランチやお茶も提供(営業時期や営業時間は事前に問い合わせてください)していますし、トイレも完備しています。子供とハイキングするにはうってつけの場所と言えるでしょう。

同じく北八ヶ岳にある坪庭は、北八ヶ岳ロープウェイに乗れば10分で到達する、標高2200m前後にある溶岩荒々しい散策路です。子供の足でも一周1時間ほどで歩けるコースになっています。子供は電車にしろ、ロープウェイにしろ、乗り物は大好きですので、それだけで喜びますね。

山頂駅にはトイレや売店があり、展望テラスは雲海の日などは素晴らしい景色が広がります。八ヶ岳は海から遠く、水蒸気の少ない乾いた土地なので、晴天率の高い、山登りに適した場所になっています。

3歳半くらいの子供でしたら、このような場所を選んで、大きな景色を見せ、普段とは違う空気を感じさせる、そんな体験から始めてはいかがでしょう。起伏の少ない1時間程度のハイキングがよいでしょう。

ただし、坪庭などは、一気に高度を稼ぎますので、お子さんの高度障害(高山病)には気をつけてあげてください。高度障害は、年齢、性別に関わらず罹患します。こまめに顔色や行動を見てください。高度障害になった場合は、高度を下げるのが特効薬です。無理せず、すみやかに下山しましょう。

 

「山頂を目指す」がわかってきた5歳児と登ったのは・・・

さて、5歳にもなると、足取りも随分しっかりしてきます。そしてだんだん「山頂を目指す!」ということもわかってくるようです。その頃に目指したのが、南アルプスの前衛峰、花の百名山・入笠山でした。

ここも、標高1955mの高さを誇りますが、アクセスには富士見パノラマスキー場のゴンドラを利用することができます。山頂駅から入笠山の山頂までは、大人の足で片道1時間くらい。往復で2時間ちょっとでしょうか。すばらしいのは、途中に通年で利用できるトイレと、山頂近くに営業している山小屋がしっかりあることです。

道はよく整備されていて、特段危険はありません。山頂に至る道が2つあり、片方が「岩場コース」となっていますが、ちょっと岩が出ているくらいで、滑落するような場所ではありません。それと、子供は単調な山道を歩くより、これくらいの小さな岩場がある方が喜びます。

岩場では口で言って指示するよりも、実際に親御さんが登ってお手本を見せ、一旦降りて、今度はお子さんが登るのを後ろで見る、そんなふうにするのがよいでしょう。また、親御さんはお子さんが岩に取り付いている時は、万が一に備えて、後方で受け止める準備をしておきましょう。

5歳になった息子を励まし、無事、自分の足で入笠山に登頂。本人はどう思ったかわかりませんが、父親の私の方が、親子登山に徐々に自信を深めていきました。

ところでこの頃、我が家は、東京から長野県原村への引っ越しを果たしました。移住の決め手は、息子が通う予定の幼稚園の園庭から見える360度の山岳展望です。八ヶ岳や北アルプス、南アルプス…素晴らしい展望でした。実はそこから見える山並み、すべて私が登ったことがあった山々だったのです。

幼稚園児の息子に「お父さんはここから見える山、全部登ったんだゾ!」と言いたかっただけなんですが…。原村でそんな素晴らしい山岳展望が得られる、素敵な幼稚園を見つけたのでした。

 

嫌いにならないよう楽しく歩く。山の中に楽しみを作るコツ

ここまでの親子登山、白駒池、坪庭、入笠山では、概ねコースタイムは1~3時間くらいでまとめています。未就学の子供が、自分の足で楽しく歩けるのは、このくらいが限界と考えておきましょう。

大切なことは、ここまでの段階では「山歩きが嫌いにならないよう、楽しく歩く」ことです。

大人を相手したガイド登山でも、私は常々お話ししていますが、「登山は修行ではないので、楽しく登りましょう」。ガイドはそのためのお手伝いをするのです。大人も子供も、楽しくないと続かないですよね。

さらに大切なのは、ある程度子供が「登ってみたいと思う」こと、モチベーションがあるといいでしょう。

そのひとつは、食べ物です。モノでつるのも良し悪しですが、大人だって「この仕事が終わったら美味しいものを食べよう」とか思うのですから、大切な動機付けです。山にはいろいろと美味しいものが溢れています。富士見パノラマスキー場は、地元名産のルバーブを使ったルバーブソフトクリームを売っています。北八ヶ岳ロープウェイにはコケモモジャムのお菓子。甘いものだけではなく、「山小屋についたら、山小屋のラーメンを食べようね」と元気付けるのもよいでしょう。

山の楽しみは「食」。山小屋の名物を楽しみに登るのは大人も子供も同じ


さて、我が家の話に戻ります。息子が小学生に上がった夏、日帰りで北八ヶ岳の北横岳(標高2480m)に登った後、南八ヶ岳の横岳(標高2830m)に登りたいと言いだしました。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、北横岳はロープウェイを使えば、往復2時間程度の、初級編に属する山です。一方、南八ヶ岳の横岳は、日帰りでは無理な、山深い、岩場の連続するルートで、私も大人のお客様をガイドする時には、ヘルメット着用のお願いするようなコースです。息子はそんなことも知らずに、「きたよこだけ」に登れたので、「よこだけ」にも登りたかったのでしょう。

岩場の連続する南八ヶ岳の「よこだけ」へ。果たして・・・


先にもお話ししたように、モチベーションは大切です。「無理だよ」と否定するのは簡単ですが、思い切ってチャレンジすることにしました。登山口から山中に一泊して、横岳登頂を目指す計画です。

息子が6歳3ヶ月の9月の週末、登山口の美濃戸を出発し、まずは八ヶ岳の硫黄岳(2741m)を目指します。続いて、稜線つたいに登り、横岳の最高地点まで行く計画です。ちなみに、途中、赤岳鉱泉で泊まらないといけないのですが、ここはテントを使い、私が装備を全て背負いました。

途中の北沢での写真。慣れない山道のせいか疲労の色が濃い


赤岳鉱泉のキャンプ指定地にテントを張って泊まり、翌日は早朝に出発。途中、カモシカの後ろ姿をクマと間違えて、びっくりするというオマケまでつきましたが、硫黄岳まで息子は自分の足で登っていきました。

6歳3ヶ月、硫黄岳までは自分の足で登っていった


ここから横岳へはいったん下って鞍部にある硫黄岳山荘を経由して登り返し、岩場を経て標高2830mの横岳山頂に至る。ところが、硫黄岳山荘まで歩いたところで、山小屋のラーメンを食べて満足したのか、小学1年生の息子が「もういい。降りる」と言い、下山することにしました。残念ながら、横岳には登頂できず、硫黄岳の登頂だけに終わりました。

***

こうして見ていくと、子供が自分の足で「本格登山」をするのは、やはり6歳前後からが適切なようです。

登山の難しいところは、ゴールが山頂にあるように勘違いしがちですが、実は山頂はゴールまでの半分という点です。下山するまでは登山は終わりません。登頂にこだわって無理をさせると、バテて歩けなくなったり、下山中に怪我をしたり、登山自体が嫌いになりかねません。

ですので、最初は近所の里山で足慣らし、次第にゴンドラや車を使った短めの登山、と徐々に慣らしていくのが良さそうです。

 

中学生の息子とガイドの父。7年ぶりの硫黄岳「親子登山」

最後になりますが、山岳県である長野県の中学校では、伝統的に学校登山があります。私はガイドとして、毎年地元の中学校の学校登山を手伝っています。

昨年、息子が中学生になり、息子の学年を率いて学校登山をする機会を得ました。登った先は、八ヶ岳の硫黄岳でした。

学校登山ではありましたが、彼は7年ぶりに硫黄岳の山頂に、父親と(もちろん同級生とも)一緒に登頂したことになり、ガイドで引率した私には感慨深いものがありました。

いつか、南八ヶ岳の「よこだけ」にも一緒に登れたらなと思っています。

教えてくれた人

石川高明さん

1967年東京生まれ。学生時代から登山に親しむ。最初に登った山が八ヶ岳。大手電機メーカーを2000年に退職し、世界一周登山の旅に出発。途上のスイス・ツェルマットで、“観光カリスマ”山田桂一郎氏の元で2年間、トレッキングガイドを勤める。帰国後、八ヶ岳の麓で子育てをすべく、長野県原村に移住。
各国の山岳地域を旅した体験や、スイスで観光業に携わった経験を活かし、地元地域や観光活性化のお手伝いをしながら、各種イベントを実施している。
原村観光連盟 副会長/八ヶ岳観光圏 観光地域作りマネージャー/公認スポーツ指導者 山岳指導員/長野県信州登山案内人/(株)八ヶ岳登山企画 代表取締役/登山歴30年/スノーシュー歴20年

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