認識・装備・技量の不足は遭難を招く事態に―― 島崎三歩の「山岳通信」 第153号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年7月5日に配信された第153号では、残雪に対する認識不足、装備・技量不足が原因とみられる遭難に言及。事前情報の確認および必要な装備品の携行に注意喚起している。

 

7月5日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第153号では、6月25日~6月30日に起きた8件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 6月25日、北アルプス前穂高岳で、34歳の男性が仲間と2人で前穂高岳に向けて登山中、残雪上でスリップし滑落、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

北アルプス前穂高岳の遭難現場の状況(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月2日付)
 
  • 6月25日、北アルプス白馬鑓ヶ岳で、単独で入山した30歳の男性が白馬鑓ヶ岳から白馬鑓温泉に向けて下山中、技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 6月26日、上高井郡高山村牧地籍の山林内で、63歳の女性が家族で山菜採りのため入山後、別々に行動中に道に迷い行動不能となる遭難が発生。女性は警察官により救助された。

  • 6月26日、八ヶ岳連峰赤岳で、単独で入山した35歳の男性が赤岳から権現岳方面に向けて縦走中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 6月26日、八ヶ岳連峰赤岳で、仲間と4人で入山した79歳の男性が、赤岳から文三郎尾根を下山中に浮石を踏み、転倒して負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 6月26日、下高井郡木島平村の山林内で、山菜採りのため仲間と2人で入山した67歳の女性が、別々に行動中に道に迷い行方不明・行動不能となる遭難が発生。女性は警察などにより発見・救助された。

  • 6月29日、御嶽山で、単独で入山した64歳の男性が黒沢登山口に向けて下山中、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。男性は木曽警察署員、木曽消防署員によって救助された。

  • 6月30日、御嶽山で、67歳の男性が登山中に発病して体調不良となり、行動不能となる山岳遭難が発生。男性は木曽消防署員により救助された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

6月5週は、8件の遭難が発生しました。6月25日に発生した白馬鑓ヶ岳における遭難は、軽アイゼンしか所持していなかったため、急な雪渓の下降ができずに救助要請をしたものです。
白馬岳・白馬鑓ヶ岳周辺では、このような残雪に対する認識不足、装備・技量不足が原因と見られる遭難が散見されます。7月になりましたが、後立山の山域では夏でも登山道に雪渓が残るコースがあるので、事前に付近の山小屋等に確認をして、必要な装備品を携行するようにしてください。

また北信地域では山菜(ネマガリダケ)採り中の遭難が2件発生しました。いずれも友人や家族と入山したものの、山中で別々に分かれて山菜採りに向かった結果、片方が道に迷ってしまい行動不能となったケースです。複数で入山した場合は、単独行動は避け、相互に声の届く範囲で行動するようにして下さい。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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