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北海道の原風景が広がる十勝連峰・原始ヶ原へ――、花の百名山・富良野岳から縦走

今がいい山、棚からひとつかみ
ガイド・記録 2019年07月12日

「原始ヶ原」、そんな魅力的な名前の場所が、十勝連峰・富良野岳の南麓に広がる。北海道の雄大な山々に抱かれた標高1000m付近に広がる高層湿原は、まさに「手付かずの自然」という場所で、その名の通り原始的な風景が広がっていて木道さえ整備されていない。そんな魅力的な場所を、富良野岳から縦走して楽しむことができる。

エゾツツジの向こう、眼下に広がるのが原始ヶ原(写真=谷水亨)


花の百名山である富良野岳周辺は、夏は花の種類も数も多い時期です。その富良野岳を楽しむルートは十勝岳温泉から入山するのが一般的ですが、今回はさらに先へと足を進めて、富良野岳山頂から原始ヶ原へと下るコースを紹介したいと思います。

本ルートは草木帯・砂礫帯・高山帯・高層湿原帯の高山植物が一同に見られるコースですが、富良野岳山頂から原始ヶ原に下る登山者は少なく、静かで落ち着いた登山が楽しめます。

エゾツツジと富良野岳(写真=谷水亨)


原始ヶ原は、「北海道」と命名したことで知られる探検家・松浦武四郎が、幕末・1853年の第6回目の北海道内陸探検(最後の探検)の際に、和人(アイヌ以外の日本人)として初めて訪れたと記録されている場所です。松浦は美瑛川沿いの前富良野岳付近から原始ヶ原を通って十勝へと足を踏み入れたとされ、「十勝日誌」に書き綴った内容によると、その先で野宿をして熊を捕獲して食べたと記録されています。それを記念する標柱がひっそりと立っている歴史上の場所でもあるのが原始ヶ原です。

原始ヶ原から振り返り、富良野岳を眺める(写真=谷水亨)


今回のコースは縦走となるので、下山後の交通機関を用意する必要があります。また長丁場となりますが、1日でさまざまな楽しみが待っているオススメのコースです。

モデルコース:十勝岳温泉登山口~上富良野岳~富良野岳~原始ヶ原

行程:
十勝岳温泉・・・上ホロ分岐・・・上富良野岳・・・三峰山・・・縦走路分岐・・・富良野岳・・・原始ヶ原・・・原始ヶ原登山口(約9時間30分)

⇒コースタイム付きの地図で確認

 

壮観な富良野岳稜線から手付かずの自然が残る原始ヶ原へ

花の百名山である富良野岳に花を求めて、友人と本コースに入ったのは2015年6月22日でした。縦走登山ということで、まずは市道布礼別ー上富良野線から林道に分け入り十勝連峰最南端の登山口となる原始ヶ原登山口に、車を1台デポします。その後、上富良野町から十勝岳温泉に車を走らせ、登山口よりいよいよ出発です。

今回の十勝岳温泉登山口~上富良野岳~三峰山~富良野岳~原始ヶ原登山口とめぐるコースの所要時間は一般的には9時間50分のコースと長丁場です。

エゾツツジの群生の先に十勝連峰が広がる壮観な風景(写真=谷水亨)


登山口から安政火口までは、ウコンウツギやウラシマツツジなどの低木の花、その下にひっそりと咲くエゾイチゲやミツバオウレンなどが我々を楽しませてくれます。

富良野岳方面からの登山道と合流する上ホロ分岐は、まだ残雪の中。雪上の足跡は富良野岳方面に強く残っているので、上ホロ方面へ向かう登山者は間違えないようルート確認が必要です。一方、上富良野岳から富良野岳までの稜線上は残雪もなく軽快で、多数の高山植物を楽しめました。

三峰山から富良野岳までの縦走路には多種多様な花が咲いている(写真=谷水亨)


しかし富良野岳から原始ヶ原までの砂礫地は、残雪、湿地帯が現れ、登山道は不明瞭な箇所も出てきます。そのため赤布を見逃さないように気をつける必要があるでしょう。原始ヶ原を過ぎて樹林帯に入ると布部川沿いへと下りますが、途中に幾つもの滝を巡るコースもあります(2019年7月現在は通行止め)。

手付かずの自然がそのまま残る、原始ヶ原を歩く(写真=谷水亨)


気になる花の情報ですが、このときは上富良野~富良野岳分岐まではキバナシャクナゲとイワウメ、ジムカデが頑張って群生をなしていました。1~2週間もすれば、エゾノツガザクラ、コメバツガザクラ、アオノツガザクラ、アカモノ、ハクサンチドリ、ウスラバハクサンチドリ、チングルマ、エゾツツジ、キバナノコマノツメ、エゾヒメクワガタ、コケモモなども見られることでしょう。

ハイオトギリの群生が斜面を彩る。その先に広がっているのが原始ヶ原だ(写真=谷水亨)


富良野岳周辺はエゾノハクサンイチゲ、エゾツツジ、亜高山型ショウジョウバカマなどが群生をなしていました。この後も1~2週間ほど咲き乱れ、加えてコマクサ、アズマギク様々な花が咲き誇るでしょう。頂上より原始が原下山コースは砂礫地にミヤマキンバイやイワブクロが群生をなして蕾を持っていました。

原始ヶ原に咲いていた、さまざまな色のショウジョウバカマ(写真=谷水亨)


高層湿原地帯はチングルマ、水芭蕉、ワタスゲ、ヒメシャクナゲ、湿地型ショウジョウバカマが咲き始めていました。同じ山域で紫色の亜高山型とピンク色の湿原型のショウジョウバカマが見られるのは珍しい場所です。

花の見頃は7月初旬~下旬となるので、今回訪れた時期より後でも、さまざまな高山植物を楽しめるでしょう。

日本の山 記録・ルポ ガイド
教えてくれた人

谷水 亨

北海道富良野市生まれの富良野育ち。サラリーマン生活の傍ら、登山ガイド・海外添乗員・列車運転士等の資格を持つ異色の登山家。

子育てが終わった頃から休暇の大半を利用して春夏秋冬を問わず北海道の山々を年間50座ほど登って楽しんでいる。

最近は、近場の日高山脈を楽しむ他、大雪山国立公園パークボランティアに所属し公園内の自然保護活動にも活動の範囲を広げている。

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