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高山病を防ぐ20の心得――。重症化を防ぐことが一番の高山病対策です!

理論がわかれば山の歩き方が変わる!
基礎知識 2019年07月26日

本格的な夏山シーズンを迎え、富士山をはじめ3000mを超える山も活況を見せている。標高の高い山に行くと「高山病」というリスクが出てくる。どうすればこのリスクを減らせるのか、対策方法を考えると共に、経験的な見地からもアプローチする。

富士山の山頂では、疲れか、高山病か・・・。ぐったりと座り込んでいる人は多い


こんにちは、登山ガイドの野中です。突然ですが、高山病になったことがありますか? 3000m級の登山経験がある人なら、軽い頭痛や頭が重くなる程度の経験はあるのではないかと思います。

また、眠れない・熟睡できないといった睡眠障害や、倦怠感を感じる、食欲が落ちる、などの不調も高山病の影響と考えられます。さらに症状が悪くなると、強い頭痛や吐き気、嘔吐で水分補給もままならなくなる場合もあります。

夏山シーズンは3000mを超える山々に登る人が増え、高山病になる人が増える季節です。今回は「歩行技術」の話題から少し離れて、私のガイド経験を踏まえた「高山病対策術」を紹介します。

 

酸素の薄さだけが高山病の原因?

高山病は一般的に3000m級の山で症状が現れますが、ごく稀に標高1500mから発症する人もいます。この標高では本来、「酸素が薄い」ことを実感しにくいことを考えると、高山病の症状の原因は必ずしも運動で体が「酸欠」になることだけではないようです。

中でも脱水は高山病に大きな影響を与えるようです。標高の低い場所では体に影響が起こらないレベルの脱水状態でも、標高が高い場所では体に大きな負担がかかります。私がガイド中に見てきた中では、高山病になった人は、「脱水」が原因の人と、登山前に服薬したことで「症状を後回し」にしていた人が、特に悪化させる傾向にありました。

このように、悪化すると怖い高山病を防ぎ、快適に登山を楽しむポイントを20項目にまとめました。

 

気圧の低い環境に慣れよう

急激に高度を上げると身体に負担が大きくなるため、登山口へ車で移動する場合は途中で休憩を取りながら、ゆっくり移動しましょう。

2000mを超えるような登山口では、行動前に1時間程度滞在して、標高に慣れてから歩き始めましょう。

ハイペースで一気に標高を上げると高山病になりやすいため、3000m級登山の経験が浅い人は体力に自信があってもゆっくり登ることを心がけましょう。

山小屋に到着した後は、すぐに休んだり、寝たりすると高山病になりやすくなります。到着後は整理体操をしたり、山小屋の周囲を散策したりして、30分から1時間程度体を動かして気圧に体を慣らしましょう。

 

「酸欠」を防ごう

気圧が低い場所では、鼻から吸って口をすぼめて強く吐く「口すぼめ呼吸」が有効です。歩行中に呼吸が乱れて「ハァハァ」と吐くのは効率の悪い呼吸になっているサインです。「フーフー」と息を吐いて歩きましょう。

岩場や階段、急登などキツイ登りになると、「数分歩いては立ち止まる」という歩き方になりがちですが、これは歩行ペースに呼吸が追いつかず酸欠状態になっている証拠です。歩行ペースを落とすか、呼吸を深く・早くして、30分以上休まずに歩けるように心がけましょう。

就寝時は自然に呼吸が浅くなるため、酸欠になりやすくなります。そのため人間は防御本能として、高所では熟睡できず、眠りが浅くなるものです。眠れないことにも意味があるので、睡眠薬・睡眠導入剤の服用は避けましょう。

眠ると息苦しくなる原因の1つは“肺が広がり難くなる”ことです。仰向けが最も肺が広がりやすい姿勢となります。仰向けでも息苦しさを感じる場合は、上体を起こして背中を壁にもたれると呼吸が楽になります。

眠ると息苦しくなるもう1つの原因は、熟睡すると舌根(舌の付け根の部分)が落ちて気道が狭くなることです。枕を首の下におき、顎を上げた姿勢で寝ましょう。人口呼吸時の気道確保法「下顎挙上(かがくきょじょう)」と同じ仕組みです。

鼻が詰まりやすい人、鼻呼吸が苦手な人は、鼻腔拡張テープを使うと鼻呼吸がしやすくなり、睡眠時の酸欠を予防できます。

夕方以降は気温が落ち、寒さを感じて毛細血管が収縮すると血流が悪くなり、全身に酸素が行き渡り難くなります。体を冷やさないように濡れた衣服を着替えたり、防寒着を羽織ったりしましょう。

 

「脱水」を防止しよう

登山中は 【必要水分量(ml)=体重+荷重(kg)×行動時間(H)×5(ml)】で計算して、必要量以上の水分を飲むようにしましょう。

夏山は急激な発汗が起こります。重ね着を避けて暑さによる発汗を防ぎ、気温に合わせた衣服調整をしましょう。長袖・長ズボンよりも、半袖Tシャツとアームカバー、ジッパー分離式のズボンを着用していると、レインウェアを着ることになっても暑過ぎず快適です。

急激に発汗する状況下では飲み物が素早く体に吸収される必要があります。市販されているスポーツドリンク(アイソトニック飲料)は糖分濃度が5~6%で体が吸収しにくいと言われているため、水で半分に薄めて飲みましょう。糖分濃度が2~3%のハイポトニック飲料は、そのまま飲んでも吸収しやすいそうです。

行動中に補給が足りなかった分は、行動終了後に素早く補うようにしましょう。最初は水・ジュース・スポーツドリンク・炭酸飲料など好きなものを、その後はお茶やコーヒーなどカフェインを含んだ飲み物が疲労物質を排泄しやすい利尿効果があります。就寝前に飲むと眠りにくくなるので、夕食前に飲んでおきましょう。

日常生活と同じ回数・同じ量の尿が出ない場合や、体に「むくみ」が出るのは脱水のサインです。トイレが気になって水分を控えがちになる女性は特に注意が必要です。 また子どもや高齢者も脱水状態になりやすいので注意が必要です。

普段から水分補給量が少ない人は、登山中に頑張って飲もうと思っても水分補給ができません。日常生活から少しずつ水分補給量を増やしていきましょう。

食欲が落ちている時は夕食を控えてください。食欲減退は脱水が原因であることが考えられます。胃腸にダメージがある時は無理して食べずに、たっぷり水分補給をすることが優先です。

 

体調管理の徹底

風邪や睡眠不足の場合、高山病になりやすいとされています。直前の体調管理に注意し、前日にしっかり眠ってから登山に挑みましょう。風邪気味なのはもちろん、慢性鼻炎の人など鼻の粘膜が腫れている場合は「耳抜き(鼓膜内の気圧調整)」ができず、耳の痛みの原因になります。

頭痛薬・酔い止め薬は頭痛や吐き気を抑えてくれますが、高山病を治すものではありません。症状が出る前に予防的に飲んで標高を上げることは危険です。薬を飲んだあとであれば、停滞して様子を見るか、下山することを推奨します。

 

重症化を防ぐことが一番の高山病対策

高山では頭痛と吐き気が出ることが多いため、薬でそれを防ぎたい気持ちはわかります。しかし、頭痛と吐き気を感じずに登ってしまうと、後になって急激に症状が現れ、行動不能になるほど酷い症状になることがあります。

薬を飲んでいなければ、もっと早く頭痛や吐き気を感じて、注意してゆっくりとしたペースで登ったり、途中で登山を断念していたりしたかもしれません。

高山病対策では、症状を抑えることよりも重症化しないことの方が重要です。意識を失ったり、最悪の場合は死亡するリスクもあります。日本国内の標高であれば、無理せずに適切に対応していれば、ほとんどのケースは重症化を防ぐことが可能です。

適切な高山病対策をとって、夏山登山を楽しんでください!

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教えてくれた人

野中径隆(のなか みちたか)

Nature Guide LIS代表。大学3年の夏に「登山の授業」で山の魅力に取りつかれ、以来、登山ガイドの道へ進む。「初心者の方が安心して登山できる」環境づくりを目標に積極的にWeb上で情報を発信するほか、テレビ出演、雑誌、ラジオなど各種メディアでも活躍中。
日本山岳ガイド協会・認定登山ガイド、かながわ山岳ガイド協会所属。
⇒ Nature Guide LISホームページ

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