[総集編]独断と偏見で選ぶオススメ海外トレイルベスト3:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(20)
旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第20回目は、総集編。独断と偏見で選ぶオススメ海外トレイルベスト3をお伝えする。
結局どこが良かったか?
山歩き・トレッキングをテーマに世界一周旅行をした僕ら。必ずしもピークは目指さず、山を歩くこと自体を楽しむというスタイルで、本格的な訓練や装備が必要な難易度の高い登山ではなく、旅行と組み合わせて個人で気軽に楽しめる山、ルートを中心に歩いてきた。
北半球の夏、南半球の夏を意識し、西回りで、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、オセアニアを回り、訪れたトレイルは50を超える。
そんな僕らの旅に対して、「どこの国が一番良かった?」「どこの山が一番良かった?」は必ず聞かれる質問の一つだ。
正直なところ、どの国も、どの山も、行って良かった。
日本の山とは大きく異なる風景、雰囲気があり、生活する人や文化、そこに生きる動植物も含めて、新しい発見に満ちた世界が広がっている。そんな中を何日も自分の足で歩くので、どこのトレイルも強烈に脳裏に焼き付いている。
なかなか一番は決めきれないが、それでも僕らの独断で選ぶとすれば、次の3つのトレイルを挙げてみたい。どれも単にいい景色を見たというだけではない、トレッキングをするということの魅力を存分に味わえる場所だ。
アイスランド・ロイガヴェーグル
アイスランドの内陸部ハイランドエリアを歩く約55キロのトレッキングルート。通常三泊四日で歩く。
アイスランドといえば火山の国。火山地帯を楽しめるトレッキングルートは、実は世界各地にあり、日本にもたくさんあるが、アイスランド・ロイガヴェーグルは別格だ。
至る所から蒸気が吹き出る地熱エリア、黒いドロドロの溶岩が冷え固まったエリア、10センチほどの厚さがあるふかふかの苔が一面に広がるエリアなど、どこか別の惑星にいるような景観。なかなか晴れることはなく重たい雲が垂れ込める毎日で、氷河から流れ出た冷たい水が流れる川をザブザブと渡ったり、火山灰が混じった細かい砂が横殴りの風雨に乗って打ち付ける中を延々と歩いたりする厳しい環境。拠点となる首都レイキャビクのキャンプサイトの、ハイカーで賑わう雰囲気。アイスランドはどの場面も鮮烈な思い出だ。
★連載第13回:まるで太古の地球のような場所! アイスランド・ロイガヴェーグル
アメリカ合衆国・ジョンミューアトレイル
ロングトレイルの代表格として日本でも人気が高いジョンミューアトレイルは、シエラネバダ山脈にあり全行程は210.6マイル(337km)。全てを歩くと3週間程度必要となるが、僕らは7日間かけて行程の一部をセクションハイクした。
自由と自律の国、アメリカ。その思想・文化はトレッキングにもしっかり反映されている。自然保護の観点から、オーバーナイトトレッキングできる人数に制限があったり、キャンプやトイレにルールが定められていたりするが、それを理解して遵守すれば、あとは自由。一定のルールを守れば、日々歩きたいだけ歩いて、泊まりたい場所にキャンプができる。眺望の良い丘、静かな湖畔、松ヤニの香りがする森の中など、自分だけのお気に入りの場所を見つけて、自分だけのキャンプを張る贅沢さは、日本ではなかなか味わえない。ジョンミューアトレイルは、歩くということだけではないトレッキングの楽しさを僕らに教えてくれた。
★連載第14回:アメリカを代表するロングトレイル!ジョン・ミューア・トレイル
オーストラリア:オーバーランドトラック
タスマニア島にある全長65kmのトレッキングルート。独特の形をした岩峰、広大な温帯雨林、滝や氷河湖、ワラビーやウォンバット、ハリモグラといった野生動物等が楽しめる。僕らは五泊六日で歩いた。
オーバーランドトラックはタスマニア原生地の奥深くへ入っていくトレッキングコース。整備されたトレイルと、ハット(山小屋)以外はどこを見渡しても人工的なものは何もない世界が広がっている。歩くルートは一方通行のため、向こうから歩いてくる人もいない。日に日に奥地へ入り込んでいく感覚がとにかく気持ち良かった。
オーバーランドトラックを歩くことは“人生を変えるような経験”になるとタスマニア州の国立公園の公式HPでは表現されているが、確かに僕らにとってもここは思い出深いトレイルのひとつだ。
最後に
300日間で世界のトレイルを巡るこの旅は、毎日が新しい体験の連続で、これまでの人生の中で最も濃密な時間だった。想像をはるかに超えてくる自然の雄大さ、たくさんの人々との出会い、未知の場所を旅する緊張感、目指したルートを歩ききる達成感、体が痛くなるほど長く続いたテント生活、たわいない夫婦の会話など、今でもふとした瞬間に、この旅のいろんな場面や感情が浮かんでくる。
一言で言えば、「行って良かった」。
仕事はどうするのか? 住んでいる家はどうするのか? など、時間や費用以外にも解決しなければ行けない課題はたくさんあったが、このタイミングでしかできないことを、ずっとやりたいと思っていたことをやって良かった。失ったものはなく、大切な宝物を手に入れた気持ちだ。
もちろん、多くの人にとって300日というような長い時間を確保することは簡単なことではないと思う。僕らも今は子供が生まれ、長期の旅に出ること、ましてや長期の山歩きは難しいだろう。
だが、僕らが歩いた一つ一つのトレイルは日帰りから数日間のものがほとんどで、日本からの移動時間や観光する時間も含めて、それぞれ1週間程度あれば十分に楽しめるものだ。
「次の休みは何処へ行こう?」
僕らの歩いた世界のトレイルの情報が、山好きの皆さんにとって、役に立つ情報になれば嬉しい。
(参考)
僕らの旅のルート概要はトレイルトラベラーズのブログをご参照ください。
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プロフィール
Trail Travelers 山野尚大・優子
山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
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