【閲覧注意!?】血を吸うヤマビルの身体変化に驚愕! ヤマビル対策研究で見た吸血の一部始終

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山には数々の危険が潜んでいる。その危険は、道迷いや滑落、低体温症などの登山者に起因によるものばかりではない。クマやスズメバチなど、危険な生物もある。近年、登山者を悩ませるのが「ヤマビル」だ。登山ガイドの上村博道氏は、このヤマビル対策のために身体を犠牲にしてその生態を追った。

 

近郊の山歩きをしていて、ヤマビルに出くわしたことはないでしょうか? グロテスクで奇妙な形はもちろん、吸血するというその生態から、気味が悪くなって退散してしまった経験を持っている人もいるのではないでしょうか? 関東では丹沢や妙義山などの山域ではヤマビルが多く生息していて、訪れる登山者たちを悩ませ続けています。

その生態を調べると――、ヤマビルは動物が呼吸する際に発する炭酸ガスに反応して寄ってきて、地面から這い上がってくるそうです。気が付かれないように肌に喰いついて、血を吸う。吸った後は傷口の血が止まらず、ズボンや下着が血まみれになってしまう――。

登山者にとっては天敵でもあるヤマビルをもっと深く知るために、先日、ガイド仲間と共に「ヤマビル対策研究会」を立ち上げ、早速妙義山において、ヤマビルの生態を観察してきました。ヤマビルがどのようにして這い上がってきて血を吸い、身体が変化するのか、以下にレポートします。

 

恐るべき吸血能力! その一部始終を観察

人間の身体へ這い上がる前は、ようじのようにヤマビルは細いのが印象的です。皮膚を這い上がり始めて肌に到達しても、すぐに肌が露出したところで血を吸おうとせず、細くて柔軟な身体を駆使して陰や隙間へと移動し、傷などがある肌の弱い所を見つけると、喰い付きやすいのだろうか、動きを止めて喰い付きはじめたのでした。

最初は針金のように細く、意外と俊敏な動きをするヤマビル


落ち着いた場所で血を吸い始めましたが、これがいつ噛まれたのかわからないほど痛みを感じないのです。

科学的にはヒルの唾液腺から分泌される「ヒルジン」という麻酔効果があって血液が固まりにくくする分泌液を使って、血を吸うことに都合がいい条件を、静かに整えてしまうそうです。

傷口など、肌の弱い部分を見つけると喰い付いて吸血をはじめた!


血を吸い出すと徐々に身体が膨れ出して、縞模様が鮮やかになっていきます。この時は、大きなヤマビルの影にさらに小さなヤマビルが付いて、折り重なるようにして血を吸っていました。

よく見ると小さなヤマビルが折り重なるように吸い付いていた!


血を吸い始めてから約1時間後、血を目一杯吸ったのか、肌から離れていきました。その身体は丸々として、肌に這い上がった時の素早さはなくなり、満足気にあまり動きません。ヤマビルが離れた肌からは、ヒルジンの影響で血が止まらなくなっていました。

吸血後は、血が止まらず、流れ続ける・・・


一度血を吸うと、成虫のヤマビルは一年ぐらい寝て暮らせるそうです。なんとも羨ましい生活・・・。満腹になったヤマビルを突っついてみましたが、危機を感じて、吸った血を吐きながら逃げ始めました。

突っつくと、血を吐き出しながら必死になって逃げようとするヤマビル


登山中にヤマビルに喰い付かれた際は、大概は血まみれになってから初めて「やられた!」と気が付くことが多いです。こうして、一部始終を観察できたことは貴重で、対策方法のヒントもいろいろ浮かんで来る実験でした。

さて次回は、対策研究会で試された、各対策方法についてレポートしたいと思います。

 

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プロフィール

上村博道

気象予報士の資格をもつ登山ガイド。安全登山の指導を行っている。 国内では北海道・積雪期日高山脈全山縦走、積雪期知床半島縦走など積雪期の長期山行を行う。海外では、エベレスト8848m、デナリ 6194m、アコンカグア6960mに登頂。
⇒BLOG:ヒロい自然の中で・・・

太田昭彦部長の「大人のワンゲル部」―リーダーとしての力を身につけよう―

登山初心者や、すでに山登りをしているが登山についての基本的な知識を学ぶ機会のない方を対象に、自分の力で安心して山登りが出来るようになって欲しいとの願いを込めて、登山の知識や技術を学ぶ“大人のワンゲル部”を創部しました。メンバーは部長に太田昭彦。コーチに上村博道&絵美という経験豊富な登山ガイドです。この機会にあなたも知識を身に付け、ぜひ自立した登山者の仲間入りをして頂ければ幸いです。(部長・太田昭彦)

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