道迷い遭難を防ぐためにできる3つのこと 島崎三歩の「山岳通信」 第155号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年7月22日に配信された第155号では、7月中旬に起きた6件の遭難事例に言及。遭難事例で最も多い、「道迷い遭難」が起きる理由や注意点について説明している。

 

7月22日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第155号では、7月8日~14日に起きた6件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月8日、中央アルプス中岳で、71歳の女性が駒ヶ岳に向けて登山中に転倒し、負傷する山岳遭難が発生。女性は翌7月9日に駒ヶ根警察署員、中央アルプス地区遭対協隊員により救助された。

  • 7月11日、北アルプス常念岳で、41歳の女性が滞在中の山小屋の階段から転落して負傷する山岳遭難が発生。女性は翌7月12日に、安曇野署山岳遭難救助隊、長野県山岳遭難防止対策協会夏山常駐パトロール隊などにより救助された。

  • 7月14日、八ヶ岳連峰赤岳で、60歳の女性および29歳の女性が、美濃戸口から赤岳へ向けて登山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。茅野署山岳遭難救助隊及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会により2人は救助された。

八ヶ岳での道迷い箇所の様子(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月17日付)

  • 7月14日、北アルプス栂池高原で、62歳の女性が白馬乗鞍岳から下山中に浮石に乗り、転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会により救助された。

  • 7月14日、下高井郡野沢温泉村毛無山で、62歳の男性がトレイルランニング大会に参加中に道に迷い、行方不明のままとなっている。

  • 7月14日、北アルプス前穂高岳で、50歳の男性が前穂高岳から奥穂高岳に向けて登山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。翌7月15日に、松本署員・北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会が男性を発見し救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月2週は、週末を中心に6件の遭難が発生しました。そのうち道迷い遭難が3件発生しています。14日に発生した赤岳と前穂高岳の道迷い遭難は一般登山道を登山中にルートを誤り、岩場迷い込み行動不能となったものです。
道迷い遭難を防ぐために、以下の点に注意してください。

  • 登山前に地図を読み込んで登山をする山域の地形概要や登山コース上の通過点となる分岐点などをあらかじめ把握する。 
  • 登山中は地図をこまめに開いて現在地を確認する。 
  • 「道を間違えた」「道に迷った」と気がついたら早めに元の道に引き返す。 

なお、近年は携帯電話のGPSアプリやGPS端末などが普及し、登山中も簡単に現在地を確認できるようになっていますが、電子機器のみに頼るのは故障やバッテリー切れなどのリスクがあります。必ず紙の地図も携帯してください。

 

令和元年夏山情報を発行

夏山シーズンを迎えて、長野県では今年も「夏山情報」の発行・発信を行っている(PDF、6837KB)。夏山情報では夏山遭難の発生状況と傾向、遭難しないための教訓ほか、各山域の危険区域や注意点はじめ、さまざまな山岳情報を掲載してる。

長野県内の山に、この夏、出かける予定のある人は一読することをお勧めする。以下に長野県警からのコメントも抜粋する。

⇒長野県警 山岳情報 「令和元年夏山情報」

毎年、夏山シーズン期間中は、県内外から多くの登山者が雄大な長野県の山々を求め登山に訪れます。一方で昨年の夏山期間中(7~8月)は、北アルプス等を中心に過去最多となる117件の山岳遭難が発生しており、121名の方が遭難しています。

転倒・滑落による負傷や、疲労・病気・道迷いによる行動不能などの遭難が多くを占め、遭難の背景として、計画段階での準備不足や、体力・技術の過信などが見受けられます。

登山は観光的な側面もありながら、非常に負荷の高いスポーツであり、様々な危険の潜む山岳地帯で行う冒険でもあるため、登山をする以上、山岳遭難は決して他人事ではなく、誰しもアクシデントに見舞われ遭難する可能性があります。

安易な気持ちで山に入ることのないよう、事前の情報収集と準備を入念に行ってから入山するようにしましょう。

皆さんが、長野県の山々を安全に楽しんでいただけることを願っています。

各山域の注意箇所情報も細かく掲載されている、「夏山情報」

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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