このエントリーをはてなブックマークに追加

ヤマビル対策、いろいろ試してみてわかったこと。休憩中のザックにも張り付いてくるので注意!

太田昭彦部長の「大人のワンゲル部」―リーダーとしての力を身につけよう―
基礎知識 2019年08月08日

一部の山域で、梅雨の季節頃から秋ごろ/雨上がりの山などの条件では、ヤマビルに襲われることがある。その姿、動き、性質はグロテスクで、実に気持ちが悪い。そんなヤマビルから身を守るために、登山ガイドたちは知恵を絞り、さまざまな方法を実践してみた。

 

前回の原稿で伝えたとおり、先日、ガイド仲間と共に「ヤマビル対策研究会」を立ち上げ、早速、群馬県・妙義山にてヤマビルの生態を観察してきました。その生態を知るために、敢えてヤマビルに貴重な血液を吸わせることも試みましたが、その後は対策法として「吸われたときに」「吸われないために」について、いろいろ試してみました。

★前回記事:血を吸うヤマビルの身体変化に驚愕! 吸血の一部始終

本格的な梅雨シーズンに入り、雨天の多い6月下旬に群馬県・裏妙義を歩くと、たくさんのヤマビルに遭遇します。あまりにたくさんヤマビルがいるので、どのような装備が有効なのか、試しやすい環境となりました。

まずはヒルが肌に付いているときに落とすための対策について検証しました。今回用意したのは、①市販されているヤマビル忌避剤、②塩(結晶/食塩水)、③ハッカ系防虫スプレー、④全身薬用ローション、⑤エアゾール式鎮痛消炎剤などです。

ガイド仲間が実践で使っている数々の対策グッズ


これらの利用で、ヤマビルが死亡したかどうかはともかくとして、どれもヤマビルを肌から落とすことに成功。何を使っても効果があることがわかりました。

これらの商品の中で、最も安上がりで効果抜群だったのは、②塩の結晶と飽和食塩水(もうこれ以上溶けない状態の塩水)でした。同じ食塩水でも濃度が薄いものは効果が小さく、結晶が残るかどうかというくらい濃いものは、絶命するまでの時間は早かったです。

全身薬用ローションも効果てきめん、ヤマビルは肌から離れていった
 

塩の結晶を直接、振りかければヒルは瞬殺! 安上がりで効果も高い


いずれにしても、肌に喰い付いたヤマビルを無理やり引っ張って千切ってしまうと、残った口の部分から化膿してしまう可能性があります。きれいに肌から落とすには、こうした何らかの商品を用意すべきでしょう。

 

ザックに飛びつくヤマビル、むやみに地面に置かないこと!

続いて、ヤマビルに吸われないように防御するための対策を確認してみましょう。前回にも説明したように、ヤマビルは通常、地面(落葉の下など)で生息していて、動物が呼吸する際に発する二酸化炭素に反応して寄ってきます。

そこで、どの程度の二酸化酸素に反応するのか調べてみるために、ヤマビルの巣窟で、息を吹き付けたロープを引きずりながら歩いてみました。すると、たまたまヒルの進行方向にロープがあって付いたケースはあったものの、ロープそのものには無関心でした。

一方、同じように無機質なはずのザックには飛びつくことがわかりました。人間に寄ってきたヤマビルは、地面に置いたザックにも張り付くのです。このまま気づかずザックを背負ってしまうと、気づかないうちに上半身に入られてしまうでしょう。

ザック経由でズボンに飛びついたヤマビル。休憩中や上半身も安心できない


このため、我々ガイド仲間では、ザックを地面に置かないように気を配っている人が多いです。ヤマビルシーズンにヤマビルエリアに入山する際には、休憩の際には細引きを木に巻き付け、ザックをカラビナに掛けて吊るしている人もいます。

地面に置かず、木に吊るしておけばザックには寄り付かない。ガイド仲間の長年の知恵だ


また、登山靴にヒルが寄ってこない方法にもいくつか実験を行いました。ガイド仲間が実践している「靴の足首部分に煮込んだ食塩水に浸した布を巻いておく」方法は、ヤマビルが布を突破して上がることはできませんでした。靴全体に食塩水を掛けておく方法もありますが、これは靴の傷みが早くなるのでオススメできません。「食塩水に浸した布」は有効な方法となることを改めて確認できました。

「靴の足首部分に煮込んだ食塩水に浸した布を巻いておく」方法でヒルを接近を食い止めている


今回の調査では、ヤマビルを意識しながら歩いていたため、靴の中に侵入されることは少なかったですが、実際の登山ではいつの間にかヤマビルにやられてしまうことが普通です。

以前、私が実践している方法として紹介した「厚手のパンテイ・ストッキングを着用する」方法は、侵入されても喰われにくいのでオススメです。

★ストッキングで撃退! 知っておこう、山でのヒル対策、撃退法

私が調査などでヤマビルが生息する山へ入山するときは、パンストをはき、足首に飽和食塩水に浸したバンドを巻く。それでも吸われたときは飽和食塩水やボデイローションを掛け、ハサミでちょん切るというスタイルで行っています。

もっとも、いちばん効果的なのは、身も蓋もない話ですが「ヤマビルの季節はヤマビルの出る山域へ行かない」ことなのかもしれません・・・。

 

危機管理 調査 自然観察 スキンケア
教えてくれた人

上村博道

気象予報士の資格をもつ登山ガイド。安全登山の指導を行っている。 国内では北海道・積雪期日高山脈全山縦走、積雪期知床半島縦走など積雪期の長期山行を行う。海外では、エベレスト8848m、デナリ 6194m、アコンカグア6960mに登頂。
⇒BLOG:ヒロい自然の中で・・・

同じテーマの記事
【閲覧注意!?】血を吸うヤマビルの身体変化に驚愕! ヤマビル対策研究で見た吸血の一部始終
近年、登山者を悩ませるのが「ヤマビル」だ。登山ガイドの上村博道氏は、このヤマビル対策のために身体を犠牲にしてその生態を追った。なかなか見られない光景となったのだった・・・。
降水確率0%でも雨に降られ、100%でも雨が降らない。知っておきたい降水確率の話
登山の予定が決まったら必ずチェックする天気予報。なかでも降水確率は、当日の持ち物を決めるだけではなく、山に行けるか、また、コースや時間の調整が必要かどうか、山行計画を大きく左右する要素となる。今回は、意外と知られていない“降水確率”の定義について話を伺った。
美しい紅葉に出会うために―。“紅葉の見ごろ”を9月の気温から予測してみよう!
登山愛好者として身につけておきたい知識、技術を教えてもらう「大人のワンゲル部」。今回は、気象予報士の資格をもつ登山ガイドの上村博道さんに“紅葉の見ごろ”を簡単な計算式で予想していた(!)話を伺った。ぜひ参考にして、美しい紅葉に出会う登山をしてほしい。
実はよくある登山靴のトラブル。登山ガイドに教わる、靴底剥がれの対処法&役立つグッズ
山の中で登山靴のソールが剥がれてしまった時の対処法は? 上村ガイドの実体験から学んだ知恵は「テーピングによる補修」だった。その経験談と巻き方を伝授する。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

明後日

曇一時雨
(日本気象協会提供:2019年8月25日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW モンベル「ストームクルーザー」の秘密に迫る
モンベル「ストームクルーザー」の秘密に迫る 定番レインウェア「ストームクルーザー」。日本の登山者に向けた雨具はどのように生まれ、どう進化したのか? その秘密に迫る
NEW プレゼント盛りだくさんの大アンケート!
プレゼント盛りだくさんの大アンケート! みなさんはどんな山道具を使ってますか? 情報源は? 購入方法は? プレゼントも当たる大アンケートにご協力お願いします
NEW ホーボージュンさんが語るグレゴリー「バルトロ」
ホーボージュンさんが語るグレゴリー「バルトロ」 『山と溪谷』の連載「GTR」を担当するホーボージュンさんが、その裏話と、グレゴリーの大型バックパックについて語る!
NEW 移住説明会も開催! 大町市に移住した家族の物語
移住説明会も開催! 大町市に移住した家族の物語 子育ての環境を優先して長野県大町市に移住したという屋田さんご家族。自然が近く、生活も便利という大町暮らしを聞いた。
NEW 760g! 最新ソロテントをテスト/山MONO語り
760g! 最新ソロテントをテスト/山MONO語り 山岳ライター高橋庄太郎さんの連載では、ダブルウォール自立式のニーモ「ホーネットストーム1P」をテスト! その実力は?
レベル別! 飛騨から登る北アルプス登山ガイド
レベル別! 飛騨から登る北アルプス登山ガイド 小林千穂さんを案内役に、乗鞍、槍、双六、笠など6つの山を紹介! タイトルフォトは写真コンテストの作品から順番に!
カリマー「クーガー」がアップデート!
カリマー「クーガー」がアップデート! 中・大型バックパック「クーガー」は、パッド類を刷新しフィッティングや快適性が向上。
NEW 毎日が絶景! 小岩井大輔の富士山頂日記
毎日が絶景! 小岩井大輔の富士山頂日記 富士山頂でしか見られない絶景が、ほぼ毎日! 写真家・小岩井大輔の富士山頂日記は今年もCool!
NEW ロープウェイで登れる百名山
ロープウェイで登れる百名山 ロープウェイやリフトなどを使って、一気に標高を稼げる百名山はいくつあるかご存知?
王道の北アルプス縦走コースを歩こう
王道の北アルプス縦走コースを歩こう 森林限界を越えた稜線に、果てしなく続く縦走路。稜線歩きの醍醐味を思う存分楽しめる、北アルプスの縦走コースを紹介。
憧れの3000m峰に惜しい山に注目
憧れの3000m峰に惜しい山に注目 夏はやっぱり3000m峰に挑戦! と言いたいところだが、惜しい山にも3000m以上の魅力がたっぷりです。
名峰・那須岳登山へ! 個性豊かでダイナミック
名峰・那須岳登山へ! 個性豊かでダイナミック 活火山の茶臼岳、峻険な朝日岳、最高峰の三本槍岳ほか、花畑の稜線や温泉など魅力満載の那須連峰。ほかにも湿原・お花畑・温泉と...
ツラく、キツく、長い急登の登山道を制す
ツラく、キツく、長い急登の登山道を制す 長い急登を汗水流し、気合と根性を振り絞って、延々と登った先にある素晴らしい景色と充実感を味わいたいなら、ココに決まり!
南・中央アルプスの王道の縦走コースを歩こう!
南・中央アルプスの王道の縦走コースを歩こう! 北アルプスに比べると、登山者を受け入れる体制は整っていないのが南・中央アルプス。だからこそ魅力がタップリなのです!
夏山に向けて登山ボディになろう!
夏山に向けて登山ボディになろう! 夏山シーズン目前、今からでも間に合います。身体のリセット・メンテナンスの面から登山のトレーニングを指南。登山のための身体...
山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS
山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS スマートフォンの普及で高価で手の届かなかったGPS機器が誰でも使える! 初心者向けのノウハウから裏技まで、登山アプリとス...