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1.5kmも続く滑床を歩く大雪山・クワウンナイ川遡行。季節限定の癒しと奔流の沢と水を堪能する

今がいい山、棚からひとつかみ
ガイド・記録 2019年08月13日

沢登り経験者なら、短い北海道の夏を「クワウンナイ川遡行」で楽しんでみてはいかがだろうか? もちろん十分な経験と装備が必要な場所だが、ハーネスなしでもトライでき、約1.5kmも続く滑床を歩ける。「癒しと奔流の沢」として知られる、魅惑の沢登りが満喫できる。

舗装されたかのような滑床が1.5kmも続く「滝ノ瀬十三丁」(写真=谷水亨)


夏季は沢登りが快適な季節です。夏の短い北海道でも、沢登りを楽しめる場所はたくさんあります。その中でも「大雪山・クワウンナイ川遡行」は、沢登りをたしなむ人にはオススメしたいコースです。

大雪山の麓・天人峡から入渓する、クワウンナイ川の入渓期間は天候の比較的安定している7月1日~9月15日までと規制されていて、季節限定の沢登りコースといえます。

日本でも指折りの長さの滑床を持つクワウンナイ川は、高度な沢登り技術は必要なく、幾つもの滝を高巻きしながら進み、舗装されたかのような滑床(滝ノ瀬十三丁)を約1.5kmも歩きます。ハーネスなしでも沢登りを楽しめる沢登り初級~中級コースであり、その先は日本百名山・トムラウシがあるため、トムラウシ登山を目指す登山コースにもなっています。

滝ノ瀬十三丁の美しい渓谷の様子(写真=谷水亨)


天人峡から入渓すると大雪山縦走コース(天人峡~トムラウシ)の登山道にたどり着きますので、そのまま化雲岳を通って天人峡へと降りることができます。そのため、車をデポすることなく行動しやすいのも人気のポイントです。

天人峡コースの下山道も楽しい。第一公園ではワタスゲが揺れる(写真=谷水亨)


とは言っても、最低限の沢登りの経験や技術・装備が必要となります。また、上川中部森林管理署への登山届と入林届けを提出し、入渓に当たっての遵守事項を守る事が義務づけられています。加えて1泊~2泊のコースになるため、天候の悪化や出発前の雨量などを考慮した計画が求められます。

2015年には上記の一般的なコース(化雲岳経由で天人峡へ下山)を登りましたが、今回は下山にバリエーションルート(俵真布コース)を利用したコースを紹介したいと思います。

 

大雪山・クワウンナイ川遡行~トムラウシ山~俵真布コースへ

⇒地図を拡大して表示

⇒周辺を地図で確認する

工程

【1日目】
①6:00/出発・・・②6:25/ポンクワウンナイ川入渓・・・③7:10/618二俣・・・④7:28~55/高巻・・・⑤11:03~30/この淵の深さは160cm以上あり、1回目は泳いで渡り、2回目は高巻きをした・・・⑥13:08/876m二俣・・・⑦15:18/カウン沢出合到着、テント泊地決定
【2日目】
⑧6:42/魚止めの滝(右側を登る)・・・⑨7:07/2つ目の滝(左側を登る)・・・⑩7:14/3つ目の滝(左側を登る)・・・⑪7:36/2個の滝の左の滝を登る・・・⑫8:37/ハングの滝/左側中腹から高巻する。ロープが張られているが信用薄い・・・⑬10:00/二俣の滝(左側の滝の右側を登る)・・・⑭10:53/滝の裏側に入れる(左側から登りの滝の上部にトラバース)、エゾノリュウキンカの中をトラバース・・・/⑮渓流っぽい沢を沢を抜ける・・・⑯岩稜帯の終盤は右側に登山道あり・・・⑰13:24/縦走路コル到着・・・⑱16:01/南沼野営場到着
【3日目】
⑱南沼野営場出発・・・⑲​日の出前に登り山頂にて朝日を浴びる・・・⑳8:22/三川台・・・㉑9:17/沢源頭・・・㉒11:02/扇沼山

※縦走路から化雲岳を経て天人峡へ下山する(地図中の緑のコース)が一般的

「癒しと奔流の沢と水10選」にも選べれるクワウンナイ川へ

月刊『山と溪谷』2016年8月号の「見る・歩く 美しき日本の山岳風景・渓谷/癒しと奔流の沢と水10選」にも掲載された大雪山・クワウンナイ川遡行ルートを、山仲間と共に行ったのは2016年7月5~7日でした。

7月5日の早朝、清流橋から荒廃した林道を歩いてポンクワウンナイ沢から入渓。コース序盤では股下程度の深さの渡渉を数回しましたが、気温が上がるにつれ水量が異常に増えてきたため、行動は慎重になってきます。

川をヘツリながら遡行する。この日は雪解け水で水量が多く予想以上に時間がかかる(写真=谷水亨)


この日は女性が相方ということもあり、予定外の高巻きを2回もしたため、カウン沢出合指定野営地に到着したのは約10時間後と、長い行動時間となりました。

2日目の7月6日は、夜中のうちに雪解け水が減って朝方には落ち着いてきたので、水量が増えないように早めに出発しました。出発してすぐに現れる「魚止めの滝」を左岸を巻くと、日本有数の長さ――、1.5kmもある、通称「滝ノ瀬十三丁」の始まりです。

2日目、魚止めの滝から行動開始。この滝を越えると滝ノ瀬十三丁が始まる(写真=谷水亨)

いよいよ1.5kmの滑床、「滝ノ瀬十三丁」が始まる(写真=谷水亨)

「ハングの滝」の裏側から。滝の裏側に入り、さらに高度を上げていく(写真=谷水亨)

本コースの最後の滝を遡行していく(写真=谷水亨)


足首までの水量の中を楽しみながら歩き、幾つかの滑滝のサイドを登りながら楽しんだ後、残雪や涸れ沢、岩場を登り、イワウメや、エゾノツガザクラなどの花が咲く踏み跡を辿りました。

源頭は天沼南方400mのコルで、ここから縦走路を歩いて多くの高山植物を撮影。ロックガーデンや北沼を経て、トムラウシ南沼野営地に到着しました。

クワウンナイ川の源頭部へ。遅くまで残雪が残っている(写真=谷水亨)

 

トムラウシ山で日の出を楽しみ、バリエーションルートで下山

3日目の朝は、トムラウシ山頂の日の出から始まりました。山頂からキャンプ地に戻り、朝食をすませて出発。ここからはルートを西側、三川台方面へと進みます。

遠方に十勝連峰東面を眺めながらユウトムラウシ川源頭のカールを左手に、お花ロードを歩きます。イワウメ、チングルマ、エゾハクサンイチゲ、ハクサンチドリ、ジンヨウキスミレ、エゾイチゲ、ミヤマキンバイ、メアカンキンバイなど、数えきれない高山植物たちが登山道脇に咲きみだれています。

三川台分岐から俵真布方面に進み、美しい鋭峰兜岩をトラバースすると十勝連峰西面が綺麗に見えます。高山植物もエゾノツガザクラ、アオノツガザクラ、イワカガミ、エゾコザクラなども加わり足が進みません。

トムラウシ山からは俵真布コースへ。チングルマの群生の中を三川台に向かう(写真=谷水亨)


美瑛川源頭のカールの稜線に出ると硫黄沼や芦別岳などが姿を現わします。また、扇沼山山頂から見る十勝連峰・硫黄沼・高山植物のコラボレーションは格別でした。

ひとときの休憩を挟み、いよいよ下山です。右前方に旭岳を眺めながらハイマツ帯、笹藪、岩場を下っていくと絶景は終了。あとは樹林帯、台地林道を歩きます。出発時に上俵真布林道ゲートの鍵を森林管理署から借りて車を台地林道ゲートにデポしておいたので、その車をピックアップして無事に下山しました。

本コースもいよいよ終盤。扇沼山山頂からみた硫黄沼と十勝連峰(写真=谷水亨)


短い北海道の夏を、日本有数の滑床を持つクワウンナイ川での沢登で楽しんでみませんか? もちろん十分な経験と装備は必要ですが、きっと本土にはないスケールの自然を楽しめることでしょう。

 

ガイド 日本の山
教えてくれた人

谷水 亨

北海道富良野市生まれの富良野育ち。サラリーマン生活の傍ら、登山ガイド・海外添乗員・列車運転士等の資格を持つ異色の登山家。

子育てが終わった頃から休暇の大半を利用して春夏秋冬を問わず北海道の山々を年間50座ほど登って楽しんでいる。

最近は、近場の日高山脈を楽しむ他、大雪山国立公園パークボランティアに所属し公園内の自然保護活動にも活動の範囲を広げている。

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