1週間で24件の遭難事故、下山まで集中力を切らさないように! 島崎三歩の「山岳通信」 第158号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年8月8日に配信された第158号では、7月第5週からの1週間で24件もの遭難事故が発生していることに言及。夏山ならではの事案について改めて注意喚起している。

 

8月8日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第158号では、7月29日~8月4日に起きた24件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月29日、中央アルプス中岳で、73歳の男性が仲間と4人で木曽駒ヶ岳山頂から中岳に向けて下山中に、滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は駒ヶ根署及び中央アルプス地区遭対協隊員により救助された。

  • 7月29日、北アルプス槍穂高連峰で、7月24日に上高地から穂高岳方面に単独で入山したと思われる38歳の男性と連絡が取れなくなっており、現在も行方不明のままとなっている。夏山常駐パトロール隊などが捜索を行っている。

  • 7月29日、八ヶ岳連峰亀甲池で、73歳の女性が仲間と3人で北横岳から亀甲池に向け下山中に、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。女性は茅野署山岳遭難救助隊員、及び諏訪地区山岳遭対協隊員により救助された。

  • 7月30日、八ヶ岳連峰赤岳で、76歳の男性が仲間と4人で赤岳山頂から地蔵の頭に向けて下山中に、滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 7月30日、北アルプス六百山で、78歳の男性が仲間と8人で六百山山頂から上高地に向けて下山中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は松本署員により救助された。

  • 7月31日、八ヶ岳連峰天狗岳で、83歳の男性が仲間と3人で天狗岳から黒百合平に向けて下山中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 7月31日、北アルプス餓鬼岳で、65歳の男性が仲間と3人で餓鬼岳へ向けて登山中に、転倒して滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 7月31日、北アルプス唐松岳不帰撿で、単独で入山した68歳の男性が唐松岳方面へ縦走中に、転落して負傷する山岳遭難が発生。男性は長野県山岳遭対協夏山常駐パトロール隊員などにより救助された。

  • 7月31日、北アルプス前穂高岳で、単独で入山した59歳の男性が前穂高岳から下山中に、滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 7月31日、北アルプス涸沢で、70歳の女性が仲間と2人で奥穂高岳方面から涸沢に下山中に、疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。女性は県警山岳遭難救助隊により救助された。

  • 8月1日、北アルプス槍沢で、66歳の男性が仲間と3人で槍ヶ岳から下山中に、疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。男性は北アルプス南部地区遭対協隊員により救助された。

  • 8月1日、北アルプス蝶ヶ岳で、単独で入山した48歳の男性が、常念岳から蝶ヶ岳へ向けて縦走中に、滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

蝶ヶ岳での滑落現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月6日付

  • 8月1日、八ヶ岳連峰赤岳地蔵の頭で、71歳の男性が仲間と2人で赤岳方面へ登山中に、何らかの原因で倒れる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助されたものの死亡が確認された。

  • 8月2日、北アルプス涸沢岳で、単独で入山した46歳の男性が、北穂高岳から奥穂高岳方面へ縦走中に、滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

涸沢岳での滑落遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月6日付

  • 8月2日、北アルプス五竜岳で、72歳の男性が仲間と10人で五竜岳方面へ縦走中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月2日、北アルプス涸沢本谷で、単独で入山した67歳の男性が、涸沢から横尾に向けて下山中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月3日、北アルプス鹿島槍ヶ岳で、単独で入山した30歳の男性が、鹿島槍ヶ岳から下山中に、滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は長野県遭対協夏山常駐隊員、大町署山岳遭難救助隊員により救助された。

  • 8月3日、北アルプス燕岳で、51歳の女性が仲間と4人で燕岳から大天井岳に向けて縦走中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

  • 8月3日、北アルプス大天井岳で、単独で入山した46歳の男性が、燕岳から大天井岳に向け縦走中に、滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月3日、北アルプス燕岳で、50歳の女性が仲間と12人で燕岳へ向けて登山中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

  • 8月3日、北アルプス蝶ヶ岳で、単独で入山した80歳の男性が、蝶ヶ岳から横尾方面へ下山中に、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は長野県警山岳遭難救助隊員、北アルプス南部地区遭対協隊員により救助された。

  • 8月4日、北アルプス爺ヶ岳で、58歳の男性が仲間と2人で爺ヶ岳から下山中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月4日、北アルプス間ノ岳で、単独で入山した58歳の男性が西穂高岳方面へ縦走中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 7月31日以降の南アルプス小河内岳で、7月30日から南アルプス小河内岳に入山していた77歳の女性が、7月31日に付近の山小屋に宿泊したのちに行方不明となっている。女性は下山予定日を過ぎても下山しておらず、現在も捜索を行っている。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月5週は、梅雨明けとともに多くの登山者が長野県内に訪れ、それに比例して遭難も多発し、1週間で24件もの遭難が発生しています。特に、下山中の「転・滑落」「転倒」による遭難が多発しています。
普段なら難なく通過してしまう場所であっても、気温が高かったり、登山行程が長くなると、集中力が低下し、簡単に転んだり、滑ったりして怪我をしてしまうことがあります。あらかじめゆとりある計画を立てるとともに、こまめな水分補給や休憩をとりながら、下山するまでは集中力を切らさないようにしましょう。

また、2件の行方不明事案が発生しています。いずれも登山行程が長いため、数日経ってからの届出となっています。特に単独登山の場合は、自宅に帰ってこないことにより遭難が発覚し、捜索が遅れるケースが少なくありません。
登山行程が長くなる場合は、山小屋に到着したら連絡をする、携帯電話の電波の通じるところで無事を知らせるなど、家族等への連絡手段などを必ず決めておくとともに、連絡が取れなかった場合の通報先なども事前に決めておくようにしましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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