湯の丸高原から湯ノ丸山・烏帽子岳へ――、花と蝶の舞う高原で清涼な初秋の山を味わう

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9月初旬――、夏山にはもう遅く、秋の紅葉にはまだ早い。そんな端境期は、少しゆったりした山旅はいかがだろうか? 長野と群馬の県境に広がる湯の丸高原周辺は秋の花に彩られ、また高山蝶が花を求めて舞う。花と蝶と爽やかな風に身もこころも癒やされてみよう。

マツムシソウ、オヤマリンドウの花が咲く高原を進む登山道(写真=奥谷晶)


初夏の頃の100万本といわれるレンゲツツジの大群落で名高い、長野県と群馬県の県境に広がる湯ノ丸高原ですが、秋のリンドウやマツムシソウが咲き乱れる時期も、初夏に負けず劣らず素晴らしく、見逃せない時期です。レンゲツツジの季節は多くのハイカーで賑わいますが、秋の時期は訪れる人は比較的少なく、静かな散策を楽しめます。

盛夏の時期にアルプスの縦走を楽しんだ方は、酷使した心身の疲れを癒やす、ちょっと息抜きのようなすがすがしい高原歩きはいかがでしょうか。

烏帽子岳稜線から烏帽子岳を望む。三角錐の美し山容の先には北アルプスの山々が見える(写真=奥谷晶)


地蔵峠からスキー場のゲレンデの斜面をゆったり登って、ツツジ平から始まる登山道を約1時間40分。さらに鞍部を経て烏帽子岳への稜線あるきは、気持ちのいい展望を楽しめます。帰路は湯ノ丸山の山腹をまくように水平道を行き、キャンプ場を経て地蔵峠へと周回する4~5時間程度のコースとなります。

モデルコース:地蔵峠から湯の丸山・烏帽子岳を周回

コース工程:
地蔵峠・・・ツツジ平・・・湯ノ丸山南峰・・・湯ノ丸山北峰往復・・・鞍部・・・烏帽子岳・・・鞍部・・・地蔵峠(約4~5時間)

⇒コースタイム付き登山地図で確認

 

花と蝶と爽やかな秋風に癒やされる山と高原の旅

台風が去った後のつかの間の晴れの日、初秋の花たちが咲きそろう湯の丸高原を歩いてきました。2018年9月6日、朝方はまだ台風からの吹き返しの風が強く、気温も低かったのですが、猛暑の7~8月の縦走でほてった体にはとても爽やかに感じられました。

初夏にはレンゲツツジの群落でオレンジ色に染まる湯ノ丸山ですが、秋は様子が変わって、マツムシソウ、オヤマリンドウ、エゾリンドウ、ツリガネニンジンなど、青紫系の花々が鮮やかです。ほかにも、イワインチン、ウメバチソウ、ヤマハハコなどが彩りを添えます。

9月初旬の湯の丸高原はマツムシソウが最盛期を迎えている(写真=奥谷晶)

鮮やかな黄色の花を咲かせるイワインチンの姿も目立つ(写真=奥谷晶)


湯の丸高原スキー場のゲレンデから整備された登山道に入るあたりから花々のお出迎えとなり、ガレ場の急登を登り切ると程なく標高2101mの湯ノ丸山の山頂で、北アルプス、八ヶ岳など360度の大展望が迎えてくれます。

ここから先は、湯ノ丸山北峰まで足を伸ばすのも良いでしょう。また、その後は西側へと進んで烏帽子岳を登ることをオススメします。鞍部を経て急登を進むと、烏帽子岳へ至る稜線が広がります。稜線からの展望は素晴らしく、浅間山の山体がとくに大きく見えます。

烏帽子岳から望む湯ノ丸山。写真にはないが、その後方には浅間山の姿が大きく見える(写真=奥谷晶)


湯ノ丸山は花を目当てにやってくる高山蝶が多く、蝶好きにも見逃せない場所です。7月には日本の代表的な高山蝶のミヤマシロチョウ、ミヤマモンキチョウなどをみかけることでも貴重な山域ですが、9月も様々な蝶が飛び交っています。

オヤマリンドウにとまり、吸蜜しようとしている、ヒョウモンチョウの仲間(写真=奥谷晶)

台風の風で傷つき、疲れた翅を休めるクジャクチョウ(写真=奥谷晶)


この日は台風が去った翌日でしたが、台風をやり過ごしてボロボロになった羽を休め、蜜を吸うヒョウモンチョウやクジャクチョウの姿も見かけることができました。

夏から秋への季節の移ろいを感じながら、花と蝶と爽やかな風に身もこころも癒やされる山行となるでしょう。

 

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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